LSD《リリーサイド・ディメンション》第71話「創造神なる新人類――スカイ・コスモス・ワールドエンド(世終空《ヨツイ・ソラ》)」
*
――クライマックスは、これからだ。
「リーダン、転移を頼む。新人類のもとへ行く空想の箱は存在するんだろ? その空想の箱で転移してくれ。そうしなければ、おまえたちに命はない。無限の攻撃が、おまえたちを襲うだろうな」
「俺が、それに従うと?」
「だったら無理やり、その空想の箱を奪うだけだ。そして、オレたちは新人類のもとへ行き、新たな世界を創造する」
「俺が……俺たち薔薇世界の人間が生き残るためには、その方法しか存在しないんだな?」
「そうだ。無駄口を叩いている暇があったら、とっとと転移しろ」
「この世界は、もう分割されないな……わかったよ。この世界はニセモノの世界で、ホンモノの世界は存在している。その事実を新人類に突きつけるんだよな?」
「ああ」
「わかった。従おう」
「リーダン!?」
ブルーノが戸惑いの表情を見せる。
「そんな……今まで、なんのために、この戦いに挑もうとしていたか忘れたわけではないでしょう!? それに奴らが嘘を言っている可能性だってあるのですよ!!」
「ブルーノ……彼らに従うしかないんだ。どっちみち、この戦いは俺たちの負け。従わなければ、俺たちに命はない」
「でも、でもっ!!」
「くどいぞ。もう決まったことだ。おまえたちもわかっているだろ?」
「ああ、これは従うしかない。万里奈と仲良くなるためには、そのニセモノの勇者に従ったほうが一番いい。おれたちは従うべきなんだ。そう思うだろ、ほかの神託者たちよ」
『はい』
「ということだ。あきらめろ、ブルーノ」
「ルイまで……」
「ブルーノ、おまえだって、まだ生きていたいだろ……そうしなければ、夢を見ることなんてできないぞ」
「夢、ですか?」
「ああ、おまえがリーダンと――」
「――ちょっと、待って、これ以上、言わないでっ! ルイっ!!」
「ははははは」
薔薇世界の神託者たちの意見が一致しはじめたとき、ユリハが様子を見て……。
「……決まりましたかね?」
「うん、どうやら、これで、お互いの平行線が、やっと一致しはじめたというところだろうな」
「ワタシは、チハヤの中で生まれた架空の存在でしかないです。が、ワタシもまたチハヤたちと夢を見ていたいのです」
「オレも同じだ。オレたちは運命共同体で、同じ方向へ向かって生きている。だから、もう迷わない」
「ええっ、わたくしたちは、どこまでもチハヤのそばにいますわっ!!」
「マリアン……」
「ずっと一緒、ですよ?」
「メロディ」
「です、です」
「ユーカリ」
「いろいろあったけど、結局は後宮王について行ったほうが楽しそうだな」
「アスター」
「チハヤさまのもとに、みんなで生きます」
「チルダ」
「ワタシにだって、ちゃんと生まれた理由があります。それをつくってくれたのはチハヤです。そう、ワタシは、あなたがいなければ生まれてなかったんですから」
「アリーシャ」
「結局のところ、そういう運命だったんだろ、私たちは? 今まで、ごめんな。おまえの存在を受け入れなくてさ。でも、もう大丈夫。最期まで付き合うよ」
「フィリス」
『わたし(あたし)たちは、やっぱりチハヤがいないとダメだよね~!』
「ミチルド、ケイ」
「まだ未熟なあたしを認めてくれたのはチハヤだよ」
「ランディア」
「わたくしたちはチハヤから生まれた存在。だけど、唯一の存在でもある」
「ミスティ」
「火のユリミチ・チハヤって言ったって、あたしは、あたしだもんな」
「フラミア」
「最後までヒロインにしてくれたチハヤお姉さまにわたしは、どんなことがあっても離れたくありません。だから、もう逃げたくないのです」
「アリエル……みんな、ありがとう」
でも、本当に最後の戦いは、キミたちを巻き込むつもりはない。
「これは、オレが逃げ出したから、できてしまった戦いなんだ。だから、オレの中で見守ってほしい。オレたちの戦いじゃない。オレの戦いなんだ」
許してくれ――。
「――空想の箱、開錠……混合の世界」
混合の世界という世界統合心器を開錠《かいじょう》した。
男も女も関係ない。いろんなものが生きている世界。
その世界で待っていてくれ。
「そんな……チハヤお姉さまあああああっっっっっ!!」
ごめんな、アリエル……もうキミを巻き込めない。
「あとは、おまえたちだけだな」
「結局、おまえは……ひとりで戦うんだな」
「ああ、おまえたち……いや、リーダン、ブルーノ、ルイは、本来ならオレと一緒に新世界をつくる存在だった。だから、おまえたちには残ってもらった。けど、新人類のもとへの案内が終わったら、おまえたちもオレの中へと行ってもらう」
「そうか……だったら、俺たちも戦うよ。俺は、おまえの中にいる存在である遊里道千早が好きなんだ。最期まで騎士でいさせてくれ」
「その必要はない。なぜなら、オレは、おまえのことが大嫌いだからだ。処女奪われる悪夢を見るくらいにな」
「どっちにしろ、振られる運命なんだな、おまえに……」
「ああ、オレの意志は変わらねえよ」
「ついてこい。ご明察通り、俺たち三人がいれば新人類のもとへ行くことができる。ブルーノっ! ルイっ! 念じろっ!!」
『了解』
赤、青、緑の三原色の彼らが念じると門は開かれる――。
「――できたな。じゃあ、行くぞっ! おまえたち三人は混合の世界に吸収する。意識の共有だけはしておく。またなっ!!」
「ああ、行ってこいっ! おまえの戦いを終わらせになっ!!」
オレは門に吸い込まれていく。
新人類のもとへ……行ってやる。
そして、決着を付けてやる――。
*
――ここは……?
まるで宇宙のような空間にいる。
天も地もない。
宇宙の中で浮いている感覚がある。
地球らしき惑星は近くにはなかった。
けど、不思議と、なんらかの意思が芽生える。
宇宙は、こんなにも美しいってことに気づいたんだ。
今までいた場所は閉鎖された空間だった。
風の涼しさも感じない無風の空間だった。
そこでボクは生まれたんだ。
もしかしたら、それがアリエルを好きになった理由なのかもしれない。
風を感じていたかったんだ。
けど、そんなことより、どうしてオレは、この空間にいるんだ。
新人類は、どこにいるんだ……なんて冗談は置いておく。
オレは気づいている。
無限のレベルアップによって、無限の経験値を獲得したことにより、宇宙のすべてを理解している。
真なる新人類の存在は、ひとりしか存在しないのだ。
その名は――。
「――出てこい、葉渡刃弥……いや、それは一部分にしか過ぎないってことはわかっている。葉渡刃弥は存在しているようでしていないんだ。つまり――」
今、オレが言う真の名は――。
「――世終空……だけど、その名は前世の名だ」
本当の意味での真の名は――。
「――スカイ・コスモス・ワールドエンド。オレは、すべてを知っている。とっとと出てこい」
『…………』
「出てこないなら、オレは、この宇宙を消滅させる……いいんだな?」
『ダメだ』
水色の髪、水色の眼、純白の皮膚を持つ人間のような姿をした人物が現れる。
『宇宙の運命は、我とともにあり』
「いや、その運命はオレたちが決める。おまえの好きなようにはさせないっ!!」
真のラスボス――スカイ・コスモス・ワールドエンドが顕現する。
これで、本当の終わりへ……終焉へと向かっていく――。