遠い誰か(エッセイ)

駅で見かけた、うつむいた誰かの背中。

名前も声も知らないのに、その影が心に刺さった。

疲れた顔、こぼれ落ちそうな思い。

それでも足を動かして、今日を終わらせに行く。

きっと何かを抱えているのだろう。

僕だって、同じだ。

交わることのない人生。

それでも一瞬だけ、視線が重なった。

あの瞬間だけは、たしかに同じ場所にいた。

忘れられないのは、その確かさだと思う。

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