見出し画像

面白い本・好きな本|ラグジュアリーと日本の文化[ローカル、ミニマル、クラフトマン]篇

ラグジュアリーは人文系が主導する

ラグジュアリーブランド、ラグジュアリーホテル、ラグジュアリーなファッションなどなど...贅沢なさま、豪華なさま、という意味で使われる「ラグジュアリー」という魅惑の言葉。

プレミアムは相対的価値
ラグジュアリーは絶対的価値

ゴージャスは見た目の素晴らしさ
ラグジュアリーは金銭的価値もある素晴らしさ

そんな「ラグジュアリー」は、人文系の素養が大きくものをいう。“本当にほしいモノ”は「テクノロジー」ではなく、歴史や文学、地理、哲学、倫理、そして美術など「人文学」の知見が必須となる、と安西氏は言う。

ビジネスでは役に立たない」と言われた人文系。でも、ラグジュアリーの世界では主役だよね?という話。


新しい「ラグジュアリーの時代」へ

ラグジュアリー分野の主な対象は、アパレル、アクセサリー、自動車、ホスピタリティ、グルメ、アート。世界の市場規模は140兆円で、年間平均成長率は6%

世界のラグジュアリー市場の分野別規模
[出典:新ラグジュアリー]
世界の嗜好品市場の成長率推移
[出典:新ラグジュアリー]

ラグジュアリー分野はヨーロッパ発が70%と大半を占める分野でもある。欧州GDPの4%、輸出額の10%を占め、主な国はフランス、イタリア、英国、スペイン、スイス。しかし、ラグジュアリーという名の多量生産品が市場に出回るトレンドに対して、今大きな変化が起きている...

アーツ・アンド・クラフツの再来

職人の手仕事、技術に基づくデザインの大切さ、生産の地域性。物理的なモノの価値だけでなく、背後にあるストーリーや文化にもラグジュアリーの領域が拡大してきている。「本物」の美しさの時代へ。

と、いうことで、これからの「ラグジュアリーと日本の文化」を考えるのにちょうどいい3つの本。

よりローカルへ、よりミニマルへ、より手仕事へ。


新・ラグジュアリー|安西洋之・中野香織

ラグジュアリーは、グローバルからローカルへ

古代から時代とともにラグジュアリーの意味は変わってきている。王権や宗教的権力を示すもの、新興ブルジョワジーの権威づけ、欧州文化への憧れ。

そして21世紀。
そこそこ良いものは出揃い、はっきりとした不満はない。表面的な無難さでは満足できず、“深い意味”をもつものが求められるようになってきている。

サステナビリティや社会的責任、移民・難民、BLM、新興国や旧共産圏の民主化、などなど。西洋白人中心の文化観は、いよいよ限界を迎えている。

カトリックから、プロテスタントへ

従来のラグジュアリーをカトリックとすると、新しいラグジュアリーはプロテスタントと著者は例える。権威、階級、豪華、秘匿性をもつカトリックではなく、平等、シンプル、偶像崇拝しないプロテスタントへ。

どの国にも、その地特有の歴史と文化は必ずある

西洋白人文化を世界に拡散する、ヒエラルキーをもったグローバルではない。あくまでもローカル文化を起点とした、フラットなつながりのラグジュアリー。

エリート的な排他から、民主的な包括へ
グローバルから、ローカルへ


低空飛行|原研哉

日本のラグジュアリーは、自然を尊重する姿勢

独創的な自然と、それを畏怖する感受性、そして数千年ひとつの国であり続けた圧倒的な文化の蓄積。生花、盆栽、枯山水。日本建築を通して、自然の神秘を尊重する姿勢を感じることができる。

自然を尊重する姿勢に、過剰な贅沢は必要ない

ミニマリズムエンプティネスこそが、日本のラグジュアリーの根源となる。ともすると退屈で貧しいだけに見えてしまう。そこで重要なのが「」となる。

畳縁、襖の縁、障子の桟、床柱が織りなす独特の線のリズムと肌理。そして、縁側、簾、庇によってトリミングされた風景が、自然と空間に連続した奥行きを与える。

簡素なのに複雑な味わい。

アール・ヌーボーやガウディのような三次曲面ではなく、「」の複雑な重なりとリズムが日本のラグジュアリーを体現する。


日本の美意識で世界初に挑む|細尾真孝

著者は、創業333年の「西陣織」の12代目

そのテキスタイルはディオール、シャネル、エルメス、カルティエなどラグジュアリーブランドの店舗で使われている。 

ニーズは「和柄」ではなく「技術」と「素材」

西陣織に求められるものは「日本的な和柄」という思い込みがある中で、ディオールとのコラボが転機となる。西陣織といえば、当然「和柄」の織物が必要とされると思っているなか、最終的に決まった柄は「抽象柄」。抽象的なパターンを西陣織の「技術」と「素材」で表現することに価値がある、という気づき。

武器は「製品」ではなく「テキスタイル

もう一つの気づきは、「製品」である必要がないこと。ソファーやクッションなどの製品化にとらわれて、インテリアショップという限られた市場にこだわっていた、と。「テキスタイル」であれば、建築家、プロダクトデザイナー、ファッションデザイナーやアーティストなどなど、世界中のラグジュアリー市場がターゲットとなる。

手でモノをつくる」ことが創造性の原点

機械やコンピューターの力が大きくなった現在の社会にあってこそ、工藝へと立ち返り、「技術」と「素材」を活かした創造性を再認識することが重要だと。

職人=クリエイターの時代へ
新しいルネッサンス


関連記事

本|旅・観光・ホテル

旅|テキスタイル

映画|ファッション


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?