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巨悪は眠らせない 検事総長の回想 伊藤栄樹 朝日文庫
今年の春から初夏にかけて、新型コロナウィルスの感染拡大以外で一番世間を騒がせたのが、「黒川問題」だろう。
日本という国は三権分立のはずなのに、政治家が検察人事に、あからさまに首を突っ込み、自分たちの都合のいい人物をそのトップに据えようとする? そんなのアリなの? しかも、国家公務員法、さらに検察庁法を改正して? と、びっくりした。
「黒川問題」は、当の黒川拡氏が、緊急事態宣言下であるにも関
古都再見 葉室麟 新潮文庫
葉室麟という作家の名前は折に触れて目にしていた。
直木賞を『蜩ノ記』で受賞した頃、あまり時代小説、というよりエンタテインメントを読まなくなっていたので、書店で見かけても手に取ることはなかった。
小説には手が伸びなかったけれど、「幕が降りるその前に見るべきものは、やはりみておきたい」と京都に居を移した歴史作家が、古都を歩き綴った随筆という『古都再見』の紹介を目にして、読んでみたくなった。
京都
文房具を買いに 片岡義男 角川文庫
若い頃、書店の角川文庫の棚には、ズラッと片岡義男が並んでいた。壮観だった。ただし、その棚のから本を抜き出して手にとってみたことはなかった、と思う。
アメリカのポップな音楽、映画、小説、そういうものに興味が向いていなかったから、それと同じような匂いがする片岡義男の作品にも興味を惹かれなかったのだろう。読みたい本はたくさんあって、でも、限られたお小遣いの中からそれらを手に入れるためには、寄り道をし
夏彦の影法師 手帳50冊の置土産 山本伊吾 新潮文庫
新刊文庫ではない、というか新刊書店では入手できないであろう一冊なのだけれど、最近読んだ文庫から、ジャンルや版元が被らない文庫本と考えていたら、この一冊が残ったので、今週はこちらを。
活字化された誰かの日記を読むのは、昔から、好きな方だったと思う。坪内さんと出会ってから、さらに日記読みの面白さを教えてもらった。そこから派生して、手帳本やWebで公開されている他人様の手帳をみるのも好きになった。
あのころ、早稲田で 中野翠 文春文庫
仕事の師匠から、昭和史をテーマにした仕事をすることになって、打ち合わせをしていると、学生運動や安保闘争について、よく「そんなことも知らないのか?」と言われた。
私はちょっと特殊な単科大学で学生時代を送った。だからか、大学の教職員も含めた周囲に、学生運動や安保闘争に携わったことのある人(少なくとも、そう公言する人)はいなかった。
あさま山荘事件は、テレビ中継の映像を覚えている。叔父が警察官で