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さくらん 陰鬱と爽快

素晴らしい葉の広がりを見せる松を見かけた。墨で描いてみたら、なんだか金魚藻みたいに見えてきたので金魚を描いたら映画『さくらん』を思い出した。

カラフルでどキツイほど鮮やかな映像美。金魚がきんきらと腹と朱のひれを振り、水槽の中を優雅に泳ぐのが印象的な映画。

『さくらん』2007年公開日本映画。蜷川実花監督。漫画家安野モヨコ原作。椎名林檎音楽。土屋アンナ主演。売られてきた貧しい女の子が花魁まで成長する話。鼻っ柱が強い主人公が引き起こす、さまざまな事件、成長が描かれている。

監督、原作、主演のラインナップをみるだけでも、ドキドキした。どんな化学反応が生まれるのやらと思ったものだ。

とくに主人公の失恋話に泣けてくる。主人公は本気で恋した男に逢いに、折檻覚悟で遊郭を抜け出して行くのだが…男はそんな相手のことを察せずニコリと笑う…相手も本気なら相手の必死を笑ったりしない…そこで、遊郭だけの戯れだとやっと気付く。…と言うシーン。

映画を観た時は主人公の気持ちになって涙したが、数年経って自分が恋をしていて、マサにおんなじ男の笑いを観た時に、映画の主人公が言ったセリフを私も呟いた。「鬼を見た。」と…

最近ではそんな酸い甘い恋愛モードは微塵もなくなり、ちと寂しいが…懐かしいな…イヤイヤ、それは置いておいて…

ここ数日はちょっと沈みがちだった。自分が何をしたいのか?描きたいものがあるのに絵が追いつかない…思うように手が動かない…描いたものがイメージと違う…取り敢えず、何でもいいので描こう!描いて描いて描きまくったら、もう少し、腕が上がるのかも…という、単純な振り出しに戻って帰ってきた。


そして松は金魚藻になったことで、ため息が出た。


昨日は気分転換のために、一日中家中の掃除をした。風呂トイレキッチン、リビングに子供部屋。アトリエ部の整頓に布団や敷物類を洗濯した。

ほこりはケガレ、不運の粉。掃除して綺麗になった清潔感が漂う空気。おんなじ魔法の粉ならば、幸せの粉を自分に掛けたいな…

今朝はチョッピリ爽快な気分で、また机に向かう。雲が晴れて、日差しが差した様な明るい気持ちで。


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みと吉 禮子 (みとよし れいこ) 絵本作家
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