ミナリ 種まくところに喜びあり
種は撒かないと、芽吹かない。夢の種だって、植えないと芽吹く可能性さえない。成果が得られるまで、いろんな困難が襲ってくる。何度もあきらめたくなるけれど、諦めずに信じて頑張り続けた者にだけ、きっと素敵なご褒美が与えられるに違いない。
そんな気持ちになった映画をご紹介。
『ミナリ』2020年製作アメリカ映画。リー アイザック チャン監督、脚本。スティーヴン ユアン主演。ユン ヨジャン共演。A24制作、配給。アメリカンドリームを実現しようと農園作りに挑む、韓国からの移民の家族のお話。監督の幼少期の実話に基づいていると言われている。
『ミナリ』とは、韓国語で香味野菜の”セリ”のことを指している。”セリ”は水辺に根を張り、良く増え、2度目の旬が最も美味しいとされている。そこから、子供世代の幸せのために、親の世代が一生懸命に生きると言う意味があると、広告されていた。
映画では、主役となる夫婦が子供のために豊かな生活を求め働くが、考え方の違いのためすれ違い、口論し合う。そこに韓国から呼び寄せた妻の母親が、家族のために世話を焼く。荒れ果てた農地、水問題、販売ルートの確保、子供の病気、祖母の病気と、山積みの問題を抱えながら、農場経営を成功させると言うアメリカンドリームに挑む夫。韓国の伝統的な母親像を見せる祖母に馴染めないアメリカナイズされた孫たち。協力的だが、怪しい呪術を使う友人…
母は子供の為を思い、また子供は次の世代の子供のために、努力を厭わない姿が切実に描かれている。
私がこの映画に興味を持ったのは、主演がスティーブン ユアンだったからだ。彼はアメリカのドラマ『ウォーキングデッド』に出演していた。ゾンビが異常発生する世界で仲間と共にあらゆる困難を潜り抜け、生き残るサバイバルアクションドラマ。彼の役所は仲間に誠実でガッツがあり、どんな時も最善を尽くして生き残る根性をみせるアジアン青年。第1シリーズから登場し、第7シリーズで遂に亡くなってしまい、嘘でしょ⁉️と言う驚きともっと見たかったと言う落胆で、ドラマを見るのを諦めてしまった過去があった。
彼ならどんな困難も果敢に乗り越えていくだろうと言う信頼感が既にあるので、作品を鑑賞する前から結果を想像してしまっていた。
鑑賞者に期待を持たせる配役としては、秀逸だと思った。そして祖母役のユン ヨジャン。韓国ドラマでよく拝見したことがある女優さん。韓国の伝統的なおおらかで愛情深い母役を外すことなく演じられていた。
次の世代のために種を蒔く。未来の結果のために種を蒔く。何かしらの種をたくさん蒔いてみる。ダメになるものも、期待はずれのものもあるかもしれないけれど、どこかに素晴らしい結果が残るかもしれない。諦めずに色々な種を蒔こうと思う。