【父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。】 -ほぼ1,000字感想文
○タイトル:父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。
○著者 :ヤニス・バルファキス (著),、関 美和 (翻訳)
○発行 :ダイヤモンド社 (2019/3/7)
■ざっくり要約
ギリシャの財務大臣を務めた経験のある著者が、「経済とは?」という大きなテーマを娘に向けて語りかける構成。
専門用語はほとんど使われず、市場の形成から成熟を歴史から読み解いたり、これからの未来を、SF映画の考察から紐解くなど、斬新な切り口で経済を表現しているのが特徴的。特に世界史専攻だった自分は、記憶の片隅にあるキーワードが線でつながっていく感覚を持ち、学びが多かった。
また、根底にある「人としてどう生きていきたいのか?」という父から娘への問いかけが、ぐっと経済を自分ゴト化するためのアクセントになっている点が面白い。
■学びポイント
○交換価値を自在に操る"銀行"
本書では起業家を"タイムトラベラー"、銀行を"ツアーガイド"に例えて、借金による交換価値について説明をしている。起業家は借金というカタチで、未来から無限の交換価値を掴み取る。
それを実現させる力を持っているのが銀行。銀行は「どこからともなく。魔法のようにパッとお金を出す。」そして、"時空を歪めない程度に"起業家にこの力を与えていた。返済してもらえないと銀行が損をするので、これは二者間の相互信用のうえ成り立つ仕組みであった。
しかしさらに銀行はこの力を拡張させる。この借金分を債権というカタチで、投資家にばら撒いた。よって、銀行は借金返済が滞っても損をしないようになった。
この行き着いた先が金融危機。銀行が中心となって、借金を負う人とその債権を買う人を大量に生み出したがために、経済不安が生まれた瞬間に歯車が狂い、多くの人を巻き添えにしてしまう社会が生まれてしまった。
○先読みが市場を混乱させる
人は誰しも、ベターな選択を選びたいはず。一方でそれが協力によって生まれるものであると複雑になる。誰かが全体益にコミットしていないのでは?という疑念が生まれた瞬間に、信頼が崩壊し、協力体制が崩れるためである。
市場では同じことが起きている。不景気の最中に経済を安定させるために中央銀行が一律に金利を下げたとしても、逆効果になることがある。
「中央銀行が動く必要があるほど、市況が悪いのか」という不安が立ち込めてしまうためである。市場では、悪い自己予言が生まれてしまうと、誰しもがそこから逃げようとし、より予言の自己成就を引き出してしまう。
↓出典元
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