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【めっちゃ分かりやすい!?解説】中東情勢と原油価格

中東情勢と原油価格:原油価格変動の背景とその影響を丁寧に解説

 読者の皆さん、こんにちは!今回は、原油価格の変動の背景、中東情勢との関係、そして私たちの日常生活にどのような影響を与えるかを深く掘り下げて解説します。

 ニュースでは、「戦争で原油価格が上昇する」「ホルムズ海峡封鎖が世界経済を揺るがす」といった内容がよく語られますが、それらの事実や誤解を丁寧に整理します。

「中東で何が起きていて、日本がどういった対応を取らなければいけないのか」背景を知っておくことはビジネスマンにとっては重要なポイントなので、長い記事ではありますが、是非最後まで読んでくださいね。

※最後に関連記事の紹介をしています!



1. 原油価格の推移について

原油価格とは何か?

 まず原油価格とは、原油1バレル(約159リットル)の価格を指します。WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)やブレント原油が代表的な指標で、これらの価格が市場での取引価格を大きく左右します。

➡原油価格は体温計のようなもの
 原油価格は、世界経済の「体温計」のようなもの
です。 価格が上がると「経済活動が慎重でエネルギー需要が増えている」という状態を示し、価格が下がると「経済活動が滞り、エネルギー「必要が落ちている」という意味です。

近年の原油価格の動き

ここ数年の原油価格の大きな変動を以下に整理します:

①コロナショック(2020年)
 世界中で新型コロナウイルスの流行が拡大し、多くの国で経済活動が停止しました。その結果、原油の需要が激減し、価格は歴史的な暴落を経験。一時期、WTI原油価格がマイナスになるという前代未聞の事態も起きました(※買い手がいないため、売り手が保管費用を支払って引き取ってもらう必要があったため)。

➡経済活動が中断したコロナ禍では、原油需要が激減し、価格が歴史的に注目されました。これは「冷蔵庫に食材が過剰すぎて、新しい買い物ができない」ような状態です。貯蔵施設が足りないず、原油価格がマイナスになるという異常事態が発生しました。

②回復と需要増加(2021年〜)
各国が経済封鎖を解除し、経済活動が再開されると原油需要が回復。価格も安定的に上昇しました。

➡経済が再開されると原油の需要が急増。価格は大幅上昇しました。これは「冷蔵庫の食材を使い切り、再び買い物を始めた」ような回復の動きです。

③ロシアのウクライナ侵攻(2022年)
2022年2月にロシアがウクライナに侵攻した際、原油価格は一時的に急騰しました。これは、ロシアが世界有数の石油・天然ガス輸出国であり、その供給が減少することへの懸念が高まったためです。ただし、価格の上昇は短期間にとどまり、その後は価格が落ち着きを取り戻しました。

➡ロシアが主要な石油輸出国であるため、攻撃時に原油価格が急騰しました。 「上がるが、他の供給ルートが落ち着いてた」状態に似ています。

④OPECプラスの減産(2022年以降)
OPEC(石油輸出国機構)とロシアなど非加盟産油国の協力体制であるOPECプラスは、価格の下落を防ぐため、2022年後半から大規模な減産を実施しました。サウジアラビアは2023年7月、さらに追加減産を行いましたが、価格への影響は一時的なものでした。



2. 戦争で原油価格はあがるのか?

 ニュースなどで「戦争が起きると原油価格が上がる」という話を耳にすることがあります。これは部分的には正しいですが、必ずしもすべての戦争で長期的な価格上昇が起きるわけではありません。

戦争の影響は嵐のようなもの
戦争の影響は「嵐が吹き荒れて木の枝が揺れる」のようなものです。短期的には大きな影響を与えますが、嵐が過ぎれば元の状態に戻ることが多いです。

過去の例:戦争と原油価格

①第1次石油危機(1973年)
第4次中東戦争(エジプトとシリアがイスラエルを攻撃)を契機に、アラブ諸国がイスラエル支持国への石油輸出を停止しました。この結果、原油価格は約10倍に跳ね上がり、世界中で経済混乱が生じました。

➡アラブ諸国が石油供給を止めたことで、原油価格は10倍に上昇しました。これは「ダムが突然止められ、水が全く流れなくなった」ような状況でした。

②イラン革命(1979年)
イランで王政が倒され、現在のイスラム共和制が成立した際、原油価格は約2倍になりました。この混乱は、世界中で石油供給の不安定化を引き起こしました。


最近の例:戦争と価格の短期的影響

一方、近年の戦争では、原油価格の影響は短期的にとどまることが多いです。

  • ロシアのウクライナ侵攻
    価格は瞬間的に上昇しましたが、その後は下落傾向が続きました。これは、アメリカのシェールオイル生産が供給不足を補ったためです。


戦争が価格に及ぼす影響の変化

最近では、原油価格の上昇が長期化しない理由として、以下の点が挙げられます

  • 世界の生産能力の増強
    特にアメリカのシェールオイルが供給量を支えています。

  • 備蓄体制の整備
    国際エネルギー機関(IEA)が加盟国に備蓄を義務付けているため、供給不足への対応力が向上しています。



3. ホルムズ海峡封鎖の可能性はどれだけあるのか?

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾から原油を輸出する際に通過する重要な航路で、世界の石油供給の約20%がここを通過します。この海峡が封鎖された場合、世界中に大きな影響を与えると言われています。

➡ホルムズ海峡は蛇口のようなもの
ホルムズ海峡は、世界の原油供給を調整する「蛇口」のような役割を果たしています。この蛇口が閉じられると、大量の水(石油)が供給されなくなり、世界に影響を与えます。


封鎖の現実的な可能性

現時点でイランがホルムズ海峡を封鎖する可能性は低いと考えられています。その理由は以下の通りです:

➡急いでイランがこの「蛇口」を閉じる可能性は低いです。 なぜなら、イラン自身がその水(石油)を売ることで生計を立てているからです。 蛇口を閉じるのは、自分の生活水を止めるのと同じ行為になります。

  1. 外交的背景
    昨年、中国の仲介でイランとサウジアラビアが国交を正常化しました。この新たな関係を壊すような行動は、イランにとって不利益が大きいです。

  2. 経済的要因
    イランの石油輸出は国家収入の柱です。海峡を封鎖することは、自らの収入を断つことになり、経済的合理性する可能性があるとすれば、以下のような極限状況が挙げられます:

    • 外交的孤立
      イランが国際社会で孤立し、石油輸出が全面的に停止される状況に追い込まれた場合、海峡封鎖を脅しのカードとして使う可能性があります。

    • 軍事的緊張の激化
      イランとイスラエルの間で全面戦争に発展し、他国を巻き込むような大規模な紛争が発生した場合。

ただし、現状ではこれらのシナリオが現実化する可能性は低いとされています。



4. ホルムズ海峡が封鎖されたら世界の石油供給はどうなるか?

仮にホルムズ海峡が封鎖された場合、世界の石油供給はどのように影響を受けるのでしょうか?

影響を受ける原油の量

ホルムズ海峡を通過する石油は、日量約2,100万バレル。これは世界全体の石油消費量(日量約9,400万バレル)の約22%に相当します。ただし、そのすべてが影響を受けるわけではありません。

  • 迂回ルートの利用
    サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)は、ホルムズ海峡を経由しない輸送ルートを確保しており、一部の原油輸出は維持されます。これにより、影響を受ける原油量は1,300万バレル程度と推定されています。

緊急時の備蓄対応

IEA(国際エネルギー機関)の加盟国は、輸入量の90日分以上の備蓄を保持する義務があります。これにより、一時的な供給不足には対応可能です。また、世界全体の備蓄を考慮すると、9カ月以上は供給を維持できるとされています。

➡緊急時の対応
世界の石油消費量の約22%がホルムズ海峡を通りますが、800万バレル分は別ルートで輸送可能です。また、各国が持っている「非常用水タンク(石油備蓄)」により、約9カ月間は対応可能とされています。



5. 世界銀行の原油価格高騰シナリオ

ホルムズ海峡封鎖などの極端な事態を想定した場合、世界銀行は以下のような価格上昇シナリオを提示しています:

➡価格の影響は風船のようなもの
原油価格は「風船」のように、外部からの圧力で膨張することもありますが、一定以上の圧力がかかって破裂することもあります。


途絶量ごとの価格影響

  • 途絶量300~500万バレル
    原油価格は150ドル/バレル程度に上昇する可能性。

  • 途絶量800万バレル
    原油価格は200ドルを超える可能性。

これらのシナリオは過去の価格動向を基にした推計ですが、実際の価格影響は市場の反応や供給途絶期間によって大きく変動します。



6. 日本のガソリン価格への影響と補助政策

原油価格の上昇が日本に与える影響を具体的に考えてみましょう。

価格試算

現在のガソリン価格は平均約157円/Lですが、原油価格が2倍(約180ドル/バレル)になると以下のような試算がされます:

  • 実勢価格:約330円/Lに達する可能性。

補助政策の役割

現在、日本政府は補助金を通じてガソリン価格の急激な上昇を抑えています。これにより、消費者が価格変動の影響を直接受けることを防いでいます。

補助政策の問題点

  • 価格変動の実感が薄れる
    消費者が世界の原油価格の変動を実感しづらくなり、エネルギー問題への関心が薄れる恐れがあります。

  • 財政負担の増大
    補助金により、国の財政負担が急増します。例えば、原油価格が倍増した場合、補助金額が5倍以上になる可能性もあります。

補助政策は温度計のカバーのようなもの
日本の補助政策は「温度計にカバーをつけて温度を感じにくい」ようなものです。価格が急上昇しても消費者が認識しないようにしています。
問題点
このカバーがあると、世界で起きているのかを消費者がわかりにくいなり、エネルギー問題への関心が薄れてしまいます。また、補助政策が続くほど、政府の暫定負担は増大しますします。



7. 中東勢力図の解説

中東地域の勢力図は非常に複雑で、歴史的な宗教対立や各国の利害関係が絡み合っています。以下に主要なポイントを挙げます。

➡中東は複雑なパズルのようなもの
中東地域は「多くのピースが絡み合うパズル」のようなものです。1つのピースを動かすと全体に影響が及ぶため、慎重な対応が求められます。

イランとアラブ諸国の関係

近年、中国の仲介により、イランとサウジアラビアが国交正常化を果たしました。この動きは、地域全体の安定化に寄与する可能性があります。

イスラエルとアラブ諸国

トランプ政権時代の「アブラハム合意」により、イスラエルとUAEなどのアラブ諸国の関係が改善。これにより、石油供給の安定にも期待が高まっています。

イランとテロ組織

イランはハマスやヒズボラといった武装勢力に支援を行っており、これが地域の緊張を高める要因となっています。



8. 2つの石油危機の教訓とこれから

教訓は地図のようなもの

日本は第一次・第二次石油危機から得た教訓を「地図」のように活用し、今後のエネルギー政策に活かすべきです。

第1次石油危機(1973年)

アラブ諸国がイスラエル支持国への石油輸出を停止した結果、日本は「新アラブ」の姿勢を示し、供給確保に成功しました。
➡中東諸国との関係を維持し、「新たな」姿勢を示した。

第2次石油危機(1979年)

イラン革命が発生した際、日本はアメリカとイランの対立軸から一定の距離を保ち、柔軟な対応を取りました。

教訓
 
日本は中東諸国との関係をエネルギー供給のみに限定せず、多角的な外交を展開することが重要です。これにより、エネルギー供給の安定性と国際的な信頼を両立させることができます。


まとめ

 原油価格の動きと中東情勢の関係を理解することは、エネルギー問題や私たちの日常生活への影響を見通す上で非常に重要です。複雑かつ現代社会においても難しく問題の一つではありますが、少しでも分かりやすくお伝えできていれば幸いです。これを機に、エネルギーや中東情勢に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです!

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