見出し画像

【短編小説】噂のAI搭載無人型宇宙パトロール機の救護用カプセルに乗って地球に帰還した話【創作ショートショート】

※主人公は男性の設定で書いています。

目が覚めたら、
自分は宇宙にいた。
静寂な音がない世界。

自分の視界に広がるのは、
星々の轟轟たるぶつかり合い。
音には聞こえないが、
目の前で激しく火花を散らし、
光を発している。
凄まじい速さで星の破片が、
自分の方に飛んできた。

「熱い!巻き込まれてしまう!」
宇宙の神秘に触れた代償だろう。
死を覚悟し目を閉じ、
高鳴る鼓動にだけ耳を澄ました。

…ドクンッ!

ドォーーーーーン!!!

目を閉じてすぐ、
身体に衝動が走った。
頭がグラグラする。

…ドクンドクンドクンッ

鼓動は続いていた。
「自分はまだ生きている。何故?」
頭がグラグラするが、身体は熱くない。
手足を動かすこともできる。

閉じていた目を、
目眩を我慢しながら開けると、
火花を散らした星の破片がカプセルのようなものに弾かれぶつかり冷却される光景が拡がっていた。

自分は宇宙で噂のAI搭載無人型宇宙パトロール機の救護用カプセルに収容されたのだ。
「よかった…。助かった。」
宇宙空間では聞こえないはずの自分の声がカプセル内では聞こえる。この空間は真空ではないようだ。

床は真っ白。
カプセルは透明で外の様子が観えるようになっている。床の中央には封筒が置かれていた。自分はその封筒を取りに行き中身を開けた。
中には一枚の紙とペンが入っていた。

一一一

地球人民安全管理部隊からのお知らせ

地球へ還るのを本人の同意の上で助けます。
署名欄にサインをしてください。

署名:

一一一

これは署名しなかったら宇宙空間にそのまま放り出されるのか?この状況で自分は無力。署名するしか地球に還る手段がないではないか。
噂のAI搭載無人型宇宙パトロール機が「地球人民安全管理部隊」という名前だったことにも驚きながら、ペンで署名欄にサインをした。

すると、無人のカプセルの床の中央から格納されていたであろう、アニメや映画で観るような宇宙戦艦ものの艦長がいかにも座っていそうなかっこいいデザインの上等な座椅子がウイーンっと機械音とともに現れた。そして背部のクッション上部に搭載されているスピーカーらしきものからアナウンスが入った。

「地球に向かって機体を発射させます。座椅子に座り安全ベルトを装着してください。」

自分はドキドキしながら腰をかけ、安全ベルトを指示通りに装着すると、アナウンスが再びスピーカーから流れてきた。

「安全ベルトの装着を確認しました。今から地球へ向かってエンジンを稼働させます。大気圏突入時に体に大きな負荷がかかります。人によっては気分が悪くなるなどの体調不良を訴えられる方がいますが地球に帰還後に医療班が対応するので耐えてください。それでは発射のカウントダウンを始めます。10…9…8…」

ヴヴヴヴヴゥゥゥゥゥゥゥン。

重たそうな機械音がカプセル内に響き出した。
緊張して唾をゴクリと飲み込む。
「7…6…5…4…」
カウントダウンが進むにつれ、徐々にカプセル内にエンジンの振動が伝わり座椅子が揺れ出した。

ゴゴゴゴゴゴッガガガガガガガガガガガっ!!!

「3…2…1…。発射!」
ドゴゴゴゴゴゴッー!!!
意識を失うほどの重力加速度Gの負荷が自分にかかり、自分は実際に意識を失ったのか大気圏突入の瞬間も何もこの目で観察することはできなかった。

***

「起きてください。起きてください。」
肩を揺すられ、目にライトを当てられまぶしい光。自分は目を覚ました。


「やっと目が覚めましたか!こんにちは。私は地球人民安全管理部隊医療班のニャンニャンと言います。」
ここは病室だろうか?迷彩柄の軍服をきたニャンニャンと言う名前の可愛らしい顔をした女性が自分の様子を診てくれていたようだ。

ニャンニャンは爽やかな笑顔で
「応答はできますか?できたら応答をお願いします。」と、ライトの光を消してクリップボードに何かメモをしながら話しかけてくる。
「はい…応答できます。」
自分はしどろもどろになりながら返事をした。

「意識が戻って良かったです。聴覚も異常ないようですね。発語も問題ない。では視覚の検査をします。こちらの紙は見えますか!?」
ニャンニャンは書いていたクリップボードから紙を一枚とり自分に渡してきた。

一一一一一一一一一
地球人民安全管理部隊
健康チェック表

健康状態:良好

特記事項:なし

地球帰還代はこのたび60億円とする。
こちらの紙を持って支払い窓口①番までお越しください。
なお分割払いを希望する場合は地球人民安全管理部隊の経理窓口⑦番までお越しください。

地球人民安全管理部隊
医療班担当責任者:ニャンニャン

一一一一一一一一一

「ニャンニャンさん!60億円も僕は持っていません!」書類に目を通して思わず自分は叫んだ。
「視力も問題なしですね!」ニャンニャンはポケットから印鑑を取り出してポンっと押印してからさらに続けて自分に言った。
「宇宙から地球までの帰還代は60億円くらいかかるんです…確かに高いと思いますが、仕方ありません。こちらもボランティアでは成り立ちませんから。」

自分はニャンニャンに励まされながら、ニャンニャンの付き添いで地球帰還代の分割払いをする地球人民安全管理部隊の経理窓口⑦番までとぼとぼ歩いて支払い手続きをしにいった。

毎月3000円の20万回払い。利息なし。での支払いとなった。完済までそんなに長生きできないし、スマホ代くらいで月の支払いはいいのか…。
自分はホッとした安堵感に包まれた。
なんだよ。地球人民安全管理部隊って…。

「命が助かって良かったですね!たまに宇宙空間にテレポートしてしまう方がいらっしゃって、地球人民安全管理部隊はそういった方たちの救護をしています。宇宙空間ってどうでした?私も一度実際に宇宙に行ってみたいから羨ましいです。」
ニャンニャンにそう言われて自分は少し得をした気分になったのだった。

それから自分は宇宙SF小説が好きになり、夜の空の流れ星を見るたびに、あれは地球人民安全管理部隊のAI搭載無人型宇宙パトロール機のカプセルなんじゃないか?とドキドキするようになった。

地球人民安全管理部隊の基地の場所はわからない。自分が宇宙空間から助けてもらい60億円の支払い手続きを終えた後は目隠しをするように指示され家まで送迎してもらったから…。それにしてもニャンニャンは可愛かったな。迷彩柄の軍服も良く似合ってた。

一完一

見出し画像は稲垣純也様にお借りしています。宇宙の星の破片と飛ぶ火花のようで幻想的な美しいお写真。宇宙空間の旅にぴったりのイメージです。

そして唐突に!現在の私のnoteの総閲覧者が5万5千人いらっしゃいます。たくさんの方が閲覧してくださっているみたいで、とてもありがたいです。記事を読んだらスキを押してくださって問題ありません!むしろ押してください!♡をポチッとしてくだモチベーションに繋がります!良記事を書くための原動力にも繋がりますのでよろしくお願いします!♡(スキ)はnote非会員の方でも押せます!!! 
__________________________________

最後まで読んでくださってありがとうございました。noteに書く記事は自分の自由だと言い聞かせて書いた作品です。創作は楽しいですね♪

他にもこんな記事を書いています💁‍♀️

短編小説は他にも書きました。ぜひこちらもご覧になってください。

こちらもオススメです♪

※スキ♡を押してください!フォローもしてね!

ここから先は

0字

noteのアクティブなクリエイターが集まるクラブ。メンバーになるとオーナーの前川咲紀がめっちゃ応援し…

♡ライトプラン♡

¥280 / 月
初月無料

♡スタンダードプラン♡

¥3,000 / 月

この記事が参加している募集

サポートをいただくととっても嬉しいです!Amazonアソシエイトの収益は本などの勉強に必要な教材の購入費にします。