明日のコーヒータイムもお楽しみあれ。
ある日の昼下がりの自宅での出来事。
揺蕩うコーヒーの湯気を鼻にあてて香りを楽しむ。そして次にコーヒーの味わいを確かめるために口もとにカップを持っていった。
すると、コーヒーの水面に私の瞳が映った。
その目はとても不安そうで直視できずに堪らずすぐに目を逸らしコーヒーを飲んだ。
苦かった。だけれど今の私にはちょうどいい。
ここでは書けない深い悲しみや、胸が張り裂けそうなこころの痛み、全てを失うのではないかという不安。全部コーヒーの中に、これらの負の感情がごちゃ混ぜになっているかのように錯覚した。
苦いコーヒーに今の想いを重ねて全部飲み干すことでなかったことにしたい。私の願望が一杯のコーヒーに注がれている。
もちろんコーヒーを飲んだくらいじゃ、現実の問題が解決するはずないってことは理解している。だけれど私に安らぎをもたらしてくれるのは、コーヒーくらいなのだ。何も言わずに寄り添って
くれる私の唯一の嗜好品。
お酒はとうの昔にやめた。
過去の荒れていた頃、酔いどれて床に這いつくばって寝る日々が続き急性アルコール中毒になった時に「もうやめよう」と決めて、それ以来、祝いの席以外では口につけなくなった。
一一不安ごとの全くない生活を送ってみたい。
不安さえなければ私は幸せなのに。一一
何度も何度も、何十年も前から同じことを考えている。そしてもう気づいている。不安は一生なくならない。
コーヒーを飲み干すあたりで、
一一不安がなくなるのは私が魂のない遺体になった時だろう。一一
と、毎度同じ答えが出てバカバカしくなるまでが私のコーヒータイムである。
今日のコーヒータイムもいつもと同じだった。
明日も同じ時間を過ごせたら世間一般でいう、「幸せ」なんだろう。
とても小さいようで大きな「幸せ」。
とんと堪能して生きていきたい。
人生は一度きり。
明日が来ない可能性だってあるんだ。
だから、酸いも甘いも噛み分け、生きて。
明日のコーヒータイムもお楽しみあれ。
それが私の「幸せ」。
普通の「幸せ」。
今日の記事はここまでです。
見出し画像は稲垣純也様にお借りしました。お洒落なティーカップのお写真です。美しいです。そっと丁寧に扱わないと割れてしまいそうな儚さがあって素敵です。
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最後まで読んでくださってありがとうございました。お酒をやめて以来、コーヒーは私にとって「ちょっと一杯!」のビールみたいな感覚の嗜好品になりました。コーヒーを飲んだら気分が酔います(大袈裟)
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