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【第8話】私と猛犬ケルベロスの冒険の記録【創作長編小説】

第1話はこちらのマガジンから読めます。

「ケルベロス。いい?あの砂漠に集まるミキラ帝国とゲイン帝国の飛空艇は時空の歪みの偵察用。私達を攻撃することはないはずよ。だから身を潜める必要はない。このまま一気に時空の歪みに一気に行ってしまおう。」

目標まではあと20km。冥界の遣いの援軍はもう目標まで到着して私達を待っているとハーデスは言っていた。死神からお父さんとお母さん、そして親友のアリサが亡くなったことを告げられたばかりだけど、私は哀しむ猶予もなかった。この3人以外にも疫病と町の火事で亡くなっても尚、眠りを望まず人間界で蘇り闘おうとしている人達の想いを無駄にはできない。

「怖がらなくていいよ。私がついているから大丈夫。」
ケルベロスが不安そうだったのは事実だけど、本当は私も不安で怖くて震えが止まらなかった。ハーデスに背負わされた弓が重たい。これが死から蘇りの対価なのだろう。私は彼らの頭を3つ撫でて、「この世界に救いがありますように。」と願いを込めて再び砂漠の嵐に突入を試みた。

巨大な人型の黒い影

ヒューーーーーッッッ!!!
ゴォォォォォォォォォォ!!!

大きな砂嵐ができていてその嵐の渦中に黒い巨大なぼんやりした影が見える。あの黒い巨大な影がハーデスの話す時空の歪みなのか。まだ距離が20km離れているのではっきりとは確認できない。ここからさらに先に進みたいが、砂嵐が激しく突入するのを躊躇してしまう。ミキラ帝国軍とゲイン帝国軍の飛空艇も前に進めなくなったのか、進路を変えて、目標の時空の歪みの周りの砂嵐に巻き込まれない安全な半径を保ちながらグルグルと旋回しながら様子を見ている。

「無理しない範囲で。もう少し近づいてみるよ。」

私とケルベロスはミキラ帝国とゲイン帝国の飛空艇より前に出て、黒い巨大な影まであと15kmの場所まではいけた。砂嵐に巻き込まれて、砂が目に入って視界が悪いし、口の中にまで砂が入ってきて不快だ。そんな嵐の中で私の目に映ったのは巨大な人の形をした大きな黒い影。砂漠の上を、ドスーンッ…ドスーンッ…と大きな音を立てながら歩いている。10kmくらい離れているこの距離であんなに大きく見えるのだから、あの黒い影は山1つ分くらいの相当な大きさをもった物体だ。巨大すぎて近寄りすぎると危険なのでこれ以上至近距離にはいけない。砂漠の砂嵐の中、ケルベロスに乗り空中を飛行していると、私とケルベロスの毛という毛が全て逆立ち、体全体が、引力が働いているかのように黒い影に引っ張られいることに気が付いた。黒い影に全てを呑み込まれ吸収されてしまいそうだ。冥界のハーデスは援軍は時空の歪みに先回りして私の到着を待っていると言っていたけれど、黒い影の周りには誰もいない。まさかみんなあの黒い影に吸収されてしまったのか。

ケルベロスは、引力に逆らおうとしたが気を緩めるとすぐに体を黒い影に引っ張られてしまう。まだ距離は9kmある。

一一少女よ。人間界の疫病をなくすべく冥界の遣いとして我に従事して闘ってみないか?ケルベロスを突破し冥府の扉を開けた其方なら達成できると見込んで、我から直々の頼みだ。

以前に冥界のハーデスが私に言ったこの言葉が何度も何度も頭の中で繰り返した。私の想像していた時空の歪みは空に亀裂が入ってしまっているとか、そんなイメージだったけれど。実態は、砂嵐を発生させなざら巨大な引力を発揮して近づき、近くのものを全て吸収してしまう人型の物体だったなんて。恐怖に心を支配され怯みそうになるが、今諦めたら私とケルベロスは黒い影に呑み込まれて終わってしまう。そんなのは絶対に嫌だ。私は恐怖に負けないように呼吸を整えて黒い影との闘い方を考えた。一度距離をとって闘い方を練ったほうが良さそうだ。でもいまの状況でどうやって距離を取ればいい?ケルベロスは抵抗はしているが引力にひっぱられてどんどん対象と距離が近くなっている。一か八かで氷の魔法で凍らせてみようか。私は賭けに出た。

ケルベロスは私たちの身体が黒い影の引力に引っ張られないように飛行の角度を斜め5°に上向きにして抵抗してくれている。そして激しく咆哮をして周りの空気を押し出し、引力の力を弱くするよう闘ってくれた。黒い影までの距離あと3km。

私は引力と闘うケルベロスの背中の上で矢を構え意識を集中させて、一本の矢をつがえ力一杯に弓をギギギギギギとひき、黒い影を凍らせるイメージを強く念じた。矢の先で青白い光がボォォォっと力強く宿りバチバチバチッと赤い電気が放電を始めの2色の弓に力が宿った!!!

「行けー!!!」

黒い影まであと1kmのギリギリのところで弓を放った。放たれた一本の矢から赤い大蛇が召還されギュンギュンギュンギュんと対象に巻きつき締め上げ巨大な黒い影の動きを止めた。そして大蛇の叫びがギャーーーっと砂漠に響き、凍てつく冷気を吐いた。黒い影は大蛇の締め付けに抵抗して首をぶんぶん振っている。大蛇の吐いた冷気により空中に飛んでいた砂嵐が砂漠にパラパラパラッと氷になり落ち、勢いが弱くなった。
ヒューンヒューンヒューン!!!!
その隙をついて帝国軍の飛空艇から空対空ミサイルが何弾も撃ち込まれ飛んでいき黒い影にあたり激しい爆発を引き起こした。黒い影は爆発によりひきさかれ砂漠の砂の上にバラバラになったが、まだもぞもぞ動いてあつまろうとして巨大な黒い影を再び形成するための強い意志を感じる。

巨大な黒い影が爆発によりバラバラになり飛び散ったおかげで、私とケルベロスは引力に引っ張られていた体が軽くなった。ケルベロスはそのタイミングで、高速旋回をし、上空に高く飛び上がり黒い影から一気に距離をとった。冥界のハーデスには時空の歪みに弓を放てば疫病を制圧できると聞いていたけれど、どうやら相手は一筋縄では行きそうにない。目標の巨大な人型の黒い影は自己再生能力が強く、物理的にバラバラになっても集まりまた先ほどと同じように引力を発揮し始めている。砂嵐も一旦は止んだが再び黒い影を中心に発生している。

黒い影を再生させてたまるものかと、ミキラ帝国軍とゲイン帝国軍の飛空艇が勢いを増して躊躇なく追撃を始めた。
ヒューンヒューンヒューン!!!
ドカーン!!!ドカーン!!!ドカーン!!!
何度も黒い影にミサイルが当たり砂漠を巻きこんで激しい爆発が起こっている。砂とミサイルの煙幕が上がり黒い影の様子を確認するのが難しくなっている。

標高4000mの雲の上にまで私とケルベロスは一時避難した。地上ではミキラ帝国軍とゲイン帝国軍の飛空艇から空対空ミサイルが人の形をした巨大な黒い影に撃ち込まれ激しい爆発音が砂漠に響き煙幕が上がっている。

アリサ現れる

ゲイン帝国軍のトゥルク艦長は飛空艇内の望遠鏡でミサイルに追撃される黒い影を観察しながら、なにやらブツブツ言っている。
「犬に乗った少女が弓を持って飛んでいたが、雲の上に上昇していった。あれはなんだ。」

トゥルク艦長はミキラ帝国に仕えて7年、その後に亡命をゲイン帝国にしてから30年。今年で還暦を迎える男性だ。若い時からミキラ帝国の兵士として遣えてミキラ帝国軍のために働いてきたが、なぜゲイン帝国に亡命したのか。それには深いわけがあり、それがこうだ。

 トゥルクが帝国の兵士として遣えて7年目の時、トゥルクは王妃の護衛の任務を受けていた。そして、ミキラ帝国領土内の花が咲き誇る庭園で19歳のまだ若く美しいミキラ帝国の王妃が花を摘んで楽しむのを見守っていた。そこでミキラ帝国に悲劇が起きた。王妃が何者かに一瞬のうちに拐われたのだ。トゥルクは拐われる王妃を助けるために剣をとり闘ったが空から飛んできた弓に剣を持っている利き手を撃たれ、王妃の誘拐を防ぐことができなかった。王妃は嫌がったが天空の空高くに連れて行かれその日以来還ってこなくなった。その日からミキラ帝国軍の花は枯れ、豊かだった作物は取れなくなり、国土が荒れた。ミキラ王は愛する王妃が拐われたことに哀しみ泣き狂って、王妃の護衛をしていたトゥルクを責めた。トゥルクは何度も「王妃は天空に連れて行かれた」と、ミキラ王に証言したが、「王はそんなはずはない」と聞く耳を持たず、「王妃を拐ったのはゲイン帝国の仕向けた罠」だと言い、トゥルクはミキラ帝国の王妃の誘拐を幇助した者としてして処刑されることになった。そんな中、トゥルクはゲイン帝国の兵士として今後遣えることを条件に、ゲイン帝国の助けを借りて泣く泣くミキラ帝国を抜け出し隣国のゲイン帝国に亡命することに成功したのだった。ゲイン帝国は作物に恵まれ豊かな国だったが、後にすぐ謎の疫病が流行り国全体に病人が増え死者が増え困るようになった。ミキラ帝国も疫病で同じように困り現状に至る。

「トゥクラ艦長。目標が空対空ミサイルの爆発の煙幕によって見えなくなっています。現在、嵐は止んでいる模様。このまま飛空艇を目標まで近付けますか?」
ナタリスはトゥルク艦長に聞いた。ナタリスはトゥルクが率いるゲイン帝国軍の飛空艇の副艦長である。まだ20代前半で若い女性だが、ゲイン帝国軍の軍隊ではトップの成績で気が強い。トゥルク艦長の後任として軍では期待されている。
「今回、ゲイン国王から任されているのは謎の物体の偵察のみ。迂闊にこれ以上あの目標に近づくのは得策だとは思えん。」
トゥルクは答えた。ナタリスもトゥルク艦長の回答に納得して、
「了解。飛空艇の旋回モード継続。対象からの距離に注意して引き続き観察を続ける。」
と、指揮をとった。

そんな中で、突然、飛空艇の中に見知らぬ訪問者が現れた。アリサという若いゲイン帝国の一般民が「艦長と副艦長に会いたい」と飛空艇のクルーを尋ねてきたらしい。

「私の名前はアリサと申します。突然で驚きましたよね。実はこちらの飛空艇にお願いしたいことがあって、私は冥界の臍の緒を使ってこの船の中までテレポーテーションして参りました。」

アリサは礼儀正しくトゥルク艦長とナタリス副艦長の前で深くお辞儀をした。トゥルクもナタリスも驚いて言葉を失って、その他のクルー達も何が起きているのかわからず皆が黙り、一斉にアリサに注目した。

一続く一【不定期配信予定】

続きの第9話はこちらから

見出し画像は稲垣純也様にお借りしています。主人公のエリーに宿る魔法の放電イメージはお写真のような感じです!

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最後まで読んでくださってありがとうございました。またまたベタに人型の巨大な黒い影を時空の歪みにしてしまいました。アリサも登場したり、登場人物が増えてきました。さてこれから物語はどう展開していくのか。乞うご期待!

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エッセイも書いています!

冬は鼻水が増えやすいので気をつけてくださいね!

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