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【涙の小人】ぽよんぽよん跳ねて部屋を横断する涙【湿気だらけ】

※主人公は男性の設定の創作記事です

薄暗い部屋で。
閉めきった分厚いカーテンの端から、外の太陽の光が漏れて射し込んでいる。
窓は鍵を閉じ開けなくなってから何日が経っただろうか。
床の冷たさが裸足の足の裏に直にきて、寒さを感じる。
カーテンから漏れる太陽の光が足先にかかり、構うことなく伸びた足の爪を照らした。

「そろそろ外出しないとまずいな。」

太陽の光に誘われて、
自然と湧き上がった外の世界への焦り。

出不精な性格で、毎シーズン大学の長期休みがあると引きこもりがちになってしまう。
今回も大学の期末試験が終わり、休みに入ったのをいいことに、引きこもりになった。

引きこもり生活を脱却して
外出をするには、
まず。身なりを整えなければならない。
ボサボサの髪を整えて、
爪を切り、髭を剃り顔を洗い、
清潔な服を着る。

外の世界へ飛び出すには、準備が必要で、けっこう面倒くさい。
「靴下はどこに置いてたっけ?」
洗濯物の置き場所すら曖昧だ。

積み上げられたたくさんの本の隙間から、
靴下を見つけるも、片方しかない。
もう片方の靴下はどこにいったのか探すだけで1日が終わりそうで、途方に暮れ外出するのを諦めそうになる。
やっと外出をする気になったのに、靴下が原因で身動きがとれなくなるなんて。

そんな自分が情けなくて涙が出た。
ろくな食事も摂らずに引きこもり、自律神経が弱っているのか、些細なことで涙が出やすくなっている。大学の知り合いには絶対に知られたくない女々しい姿だ。

10分くらい泣いただろうか。
鼻水も垂れて、床に涙の水たまりができていた。

「外出はもう明日にしよう。」

涙の水たまりに反射して映る自分の顔に向かって呟いた。

すると、不思議な現象が起きた。
自分の涙の水たまりが動き始めたのだ。

むにゅむにゅむにゅう!

床から水たまりが立体的になって、宙にぽよーんっと丸い球体が飛び出した。
それからその球体から小さな手のような、つぎは小さな足のような、最終的には顔のようなものが生えて、目の前で『涙の小人』が登場した。

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