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5年間の暮らしの変遷を辿る。私の選択した道で、暮らしを続けていくこと。
いまの部屋に引っ越してきてあっという間に半年が経った。あれやこれやで気づけばいまの部屋がたいそう気に入っているし、この部屋に住む前の自分の暮らしがおぼろげにしか思い出せなくなっているほどに、いまの部屋で暮らす自分が馴染んでいることが分かる。
あれ、私はこれまでどんな暮らしをしていたのだっけ。と急に振り返りたくなったので、暮らしの変遷を写真とともに紐解いていきたいと思います。
2019年~2021年:名古屋でのひとり暮らし
遡ること5年前。私は2年弱の間、名古屋でひとり暮らしをしていた。実家のある岐阜から名古屋は通えないこともない中途半端な近さだったので、1年半くらいは実家暮らしだった。けれど、片道1時間半をかけて通勤していたなかで「時間の価値はお金のそれよりも大切だ」とやっぱりしみじみと感じて、思い切って暮らしを変えた。
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当時の部屋の写真はほとんど残っていないけれど、とにかくシンプルでミニマムな部屋だったことを覚えている。1Rの部屋で、テレビもベッドもなく(布団を敷いて寝ていた)、初期には小さな机と本棚がひとつずつで、本当に何もなかった。
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途中でいまも使っているワークデスクが届いて一気に部屋らしさが増した。コロナ禍ということもあって、部屋での心地よさが日々の豊かさにつながると思い、どんどん改造していくのが楽しかったなぁ。
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名古屋の端っこの方で、いい意味で都会感がなく、家の近くには大きな川が流れていて。そこから見える夕日がきれいで、何度歩いたことだろうか。いまの無類の散歩好きも、このときの景色が大好きだったことがきっかけかもしれない。
コロナ禍で旅行会社の仕事もなくなり、収入が減り、フリーランスになって、という世の中や私自身の環境が大きく変わるなかで暮らしていた名古屋の部屋。結局は「名古屋に住んでいる理由がない」ということに気づいて、「暮らしの舞台を変えるならいまが最後のチャンスかもしれない」と2年も経たないうちに部屋を解約するのだけど。
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あの、小さな部屋で私は思考し、自分を変えようとし、環境を変えようと奮い立っていた。悩むことも多かったけれど、あのときの私が大いに悩み勇気を出してくれたおかげで、いま私はここにいるのだ、と強く思わせてくれる暮らしだったな。
2021年~2022年:家を持たない多拠点生活
名古屋の家を解約して、そこから1年程は家を持たずに日本全国を旅するように暮らしていた。1週間程ずつの間隔で日本全国で暮らし歩いていた。
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こうやって写真で振り返ってみると、私は実に多くの「暮らし」を体験していたんだなあとつくづく感じる。どこの街にいたとしても、「食べる」「仕事する」「散歩する」「ひとと話す」、そういった基本的なことは淡々と続けることを意識していた。淡々と続く日々にプラスして、新しい景色や体験が混ざり合っていく感覚。
旅先を舞台として、ただ日々の暮らしを続けていた。いろんな場所で暮らしを営む経験ができたからこそ、私は日々の暮らしに愛おしさを感じることができるようになったのかもしれない。私なりの理想の暮らしを考え続けていた1年間だった。
2022年~2023年:京都でのひとり暮らし
ある意味での移住先探しとして多拠点生活を楽しんでいたのだけど、結局高校生の頃から憧れていた京都に住まいを移した。そこで出会った部屋は、昭和のアパートをリノベーションした、たった5帖の1R。部屋のナチュラルテイストと扉の水色がかわいらしくて、ここで小さな暮らしがしたいと直感で決めた部屋。
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この部屋の居心地のよさはともかく、京都が好きで暮らし始めた私にとって、最強の立地だった。東に行けば「出町柳」「鴨川」「下鴨神社」、西に行けば「西陣」「船岡山」「北野天満宮」、北に行けば「上賀茂神社」、南に行けば「京都御所」と、京都らしいしっとりとした雰囲気の街や神社に散歩しながら訪れることができた。
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なんていい場所を選んだのだろう、私はこの暮らしがしたくて今まで彷徨い続けていたんだ、と本気で思えるほどに満ち足りた暮らしを営んでいたように思う。
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部屋には棚が備え付けられていたので、自分好みに空間を彩るのが楽しかった。小さな部屋で、好きなものに囲まれて、好きな場所に囲まれて。多拠点生活で広い世界を巡った末に出会った、小さくて居心地のいい暮らし。そんな感覚だった。
2023年~:京都でのふたり暮らし
立地も部屋も大いに気に入っていた暮らしを手放したのは、パートナーと結婚することが決まったからだ。1Rから2LDKの部屋に大きく変わって、パートナーがもともと飼っていたハリネズミとともにふたり+1匹暮らしが始まった。
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これまでの部屋を定点観測していた。がらんどうだった部屋に、少しずつものが増えて、暮らしの気配を感じるようになっている。こうやって暮らしの変遷を辿っていくと、なんだか不思議な気持ちになる。その時その時は「暮らしを形作っていくぞ」なんて意気込んでいなくて、ただ、その時に欲しいもの、したい部屋作りをしていただけである。けれど、こうやって辿っていくと、ちゃんと形作られているんだ、ということを実感する。
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いまの暮らしの好きなところは、部屋から京都タワーが見えることと、近くに大きな公園があること。何か嫌なことがあったとしても、大らかに包んでくれる場所があるというのは、なんとも穏やかな気持ちになる、ということに気づかせてくれた。まだまだこの暮らしは続いていく、続かせていく。
暮らしの変遷を辿ると見えてくること
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暮らしの変遷を辿るのは、楽しい。あの時の私はこんな風なことを考えていて、こんな暮らしをしていて、こんな景色を見ていたのだな、ということを改めて認識できる。
それと同時に、いまの私が在るのは、間違いなくこれまでの暮らしがあったからだ、ということに気づかされる。どれかひとつでも違う暮らしを選択していたら、いまここに私はいないだろう。
例えば、私がいま暮らしているパートナーとは、私が多拠点生活の末に京都に移住をしなければ決して出会うことのなかった人だ。コロナ禍で仕事がなくならなければ、ずっと名古屋に住んでいて多拠点生活をしたいという発想すらなかっただろう。
そうやって、これまでの暮らしのどれかひとつでさえ掛け違っていたら出会うことはなかった暮らし、と考えると、自分のささいな選択や意思決定、世の中の環境などのひとつずつが、大きな未来の方向性を決めていることの不思議を思う。暮らしを遡っていくと、私自身のこれまでの暮らしの愛おしさを再確認することができた。
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そして、これはずっと続いていく。選択したりしなかったり、いろんな道がある中で、たったひとつを選びながら進んでいく。選択しなかった未来も見てみたい気がするけれど、ひとつひとつ「この道を選んでよかった」と納得をしながら、進んでいける幸福に感謝しよう。その感謝を感じながら、ひとつずつ選択をしていくんだ、と改めて噛みしめてみた暮らしの変遷だった。
これからも、自分の意志で、暮らしを続けていけますように。
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