傷つけてしまったわが子に逆ギレする親に見つけてほしいもの
過去に子供を傷つけてしまった親が、大人になったわが子から責められた時、それに対して逆ギレすることがある。例えば、
『私は子供の頃、お母さんにあんな扱いされて、本当に辛かった!』
こう告げられた母親が
『私だって、あの時は色々あってアンタを育てるのに大変だったのよ!
今更そんな風に責めるなんて、アンタは本当に酷い子だね!』
という状況。
本来、こんな風にわが子に追い打ちかけて責めることを望んでいる親はいないだろう。それでもそうなるのは、親がその当時の自分と向き合えずにいるからだ。
そのために、当然ながら、ずっと自分のしたことを許せずにいる。
人は自分自身が許せない自分の事を、他の誰も許してはくれないと思うものだ。だから誰も許さないであろう自分の、親の面子だけでも守らなければならなくなる。その防御が逆ギレとして現れる。
こんな逆ギレをする親は、子供を愛するのが理想であったとわかっている。
それができなかった自分をわが子の前で認めてしまうと、自分の親としての価値が崩壊していくように感じ、怖くて目を背けてしまうのだ。
まるで、認めたその後の人生を、自分は酷い親だという認定証を掲げて生きていかなければならないように感じているのかもしれない。
そんな怖れから自分の過ちと向き合えず、受け入れることを拒んだ親に対して、私が伝えたいのは、あなたが酷い親だったと感じる自分を受け入れた時点で認定証など発生しなくなる、ということ。
なぜなら、現時点でのあなたが、既に、あなた自身で自分の背中に『酷い親認定の烙印』を押している状態なのだから。
あなたは自分のしたことが、許されないと怖れるほどに『悪かった』と感じ、自ら烙印を押している。そしてそれを誰にもバレないように隠しながら生きている。
そんな自分を客観してみて欲しい。
『本当はちゃんと愛したかった』
『でもできなかったから苦しかった』
『許されないことをした自分はもうダメなんじゃないかと怖かった』
こんな想いを見つけられないだろうか。
自分がもっと愛したかったのに、そうできなかったことを悔やみ、そんな自分を認められず苦しんでいるのであれば、その心根をもっている自分自身をそろそろ受け入れ、許し始めてもいいのではないだろうか。
過去の自分を受け入れ、傷つけてしまった行為を認め、その心でわが子に謝れたなら、その後のあなたは自分の価値が崩壊などしていないことに、きっと気付くはずだ。
例えにしたような母親の場合、自分を許していれば、こんな風に言えただろう。
『本当にそうだったね。わたしはあの時色々あって、余裕がなくてあなたの事を沢山傷つけてしまったね。そのことを今では本当に悪かったと思ってる。あなたが怒るのも当然だよ。ずっと辛い想いさせてごめんね。』
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短い文章で書き記してみたものの、実際に自分を許すことはかなり難しく、苦しみを伴う。
特に親子関係のような、『愛すべき』と思う存在を傷つけた自分を許すことは、とても難しい。
その上、親は子を養育する側であり、子よりも優れているべきだ、とか、親の方が権威を持っているという考え方をしている人も多い。
そういう人にとって、『子供に謝る』という行為は、自分が権威を失い、子供に馬鹿にされるという意識になってしまう。
そもそも愛情関係に勝ち負けも権威もない。だからあなたが我が子を愛したいのであれば、権威を失う心配など必要のないことだ。
それよりも、大切なのは、傷つけてしまった相手の心に誠実に向き合える自分が、心の奥底に隠れているのを、見つけることではないだろうか。