お弁当を隠して食べる男子に心がモゾモゾしていたのは…
中学生の時、お弁当を隠して食べる男子を見ると、たちまち心がモゾモゾしていた。
そんな私は、毎日自分で作ったお弁当を食べていた。周りの女子の可愛らしいお弁当とは違い、私のは可愛らしさのない、白いご飯多め。いつも時間に追われて作っている上に、レパートリーも少ない地味なお弁当だ。
そんなお弁当を私も隠したかった。でも、女子でお弁当を隠しながら食べている子はいない。少なくとも、私の周りでは。
『きょうこのお弁当って卵焼きが多いね~。』
『おかずよりご飯が好きなんだね!』
友達のこんな言葉は、見たままの感想を言っているだけで、意地悪でもなんでもない。でも当時の私の心はチクっと痛かった。
だから男子が隠しているのを見ると、
『もしかしたら自分で作っているのかな…』
『見られたら恥ずかしいのかな…』
と、一方的なシンパシーを感じて、ぎゅーっとハグしたくなるような、何とも言えないモゾモゾを感じていたのだ。
お弁当を隠していた男子に対して、普段は全く特別な感情を持っていない。
それなのに隠して食べる姿を見たとたん、たまらなく心がモゾモゾしていたのは、
『恥ずかしいな』
『お母さんの手作りのお弁当が羨ましいな』
という想いを密かに抱えていた私の心を、その男子の姿に映して見ていたから。
だからその時のモゾモゾは、自分自身のそんな心をハグしたい気持ちだったってこと。
子供たちのお弁当は、美味しそうなのを作ってあげたいとな、と思っていた。でも、息子は茶色いお弁当が好きだし、娘もキャラ弁よりも、2日目の煮物やオクラの肉巻きなんかが好きで、二人とも見た目よりも好きな味重視。
結局、凝った可愛らしいお弁当とはほぼ無縁で、ある意味助かった。(笑)
娘の高校のクラスメイトに、いつも自分で握った真っ白いおにぎりだけを昼食に持ってくる子がいて、娘のおかずをつまみ食いしては『美味しい!』と言ってくれていると聞いていた。
朝の身支度をする娘は、お弁当を作る私に、時々こんなことを言うようになった。
『その唐揚げ、多めに入れて~!友達にあげるから。』
そのたびに私は、またモゾモゾしながら、娘のお弁当のおかずを多めに詰めていた。
この春娘が卒業したことで、私の長いお弁当作りも一区切り。
そろそろこのモゾモゾともお別れなのかもしれない。