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ある別れ
『シミルボン』という読書感想文サイトがある。
完全に「読書感想文」に特化したサイトだ。ブックリスタという電子書籍の会社が運営していて、「本も読書人も、オモシロイ」をキャッチコピーに、たくさんの人が読書感想文や考察を寄せた。
2017年頃からやっていたのだろうか。私がこのサイトを知ったのは、2020年末、「読書猿」さんがきっかけだった。『独学大全』の著者である読書猿さんについてもう少し知りたいな、と思って検索したら、シミルボンが出てきた。
残念ながらその時点で、読書猿さんはほとんど感想文を書かれていなかった。あんな大作を書いてらっしゃるんだから、感想文を書く時間はないだろうなあ、と思いつつ、覗いてみた「シミルボン」にハマった。
ベータ版、というのがちょっとだけ気になったが、まあそのうち本サイトができるのだろうと思い、半年ほど書いた。しかしそのうちnoteがメインになってきて、WEBに創作にとどんどん違う方向へと舵を切ってしまったので、次第にシミルボンには投稿しなくなっていった。
先日ついに「シミルボン サービス終了のお知らせ」というメールが届いた。この日が来てしまったか、と思ったが、ベータ版から変化がなかっただけではなく、積極的にサイトを盛り上げていた「中の人」がほとんど登場しなくなり、サイトの画面全体に活気がなくなっていたのには気づいていた。
私の耳目には届かなかったが、閉鎖の噂はずっと前からあったのだろう、それまで書いていた人たちの名前が、検索しても出てこなくなったりした。いわゆる「過疎る」という状態になっていたかもしれない。
これまで書いた記事は、バックアップを取ってくださるという。
どのような形で来るのかわからないが、バックアップをくださるだけ、良心的だといえる。
シミルボンの良いところは、登録が無料で、サブスクや有料記事が無く、いわゆる「釣り」のような記事や、2、3行他人の名言を引用して終わるような「収益目的」の記事がないところだった。お金目的ではなく、みんな「ガチ」だった。
また、「読書」に特化しているため、本を引用するのに検索欄に書名を入れるだけで引用できるのが良かった。Amazonやその他のサイトを開いてURLをコピペする、といった手間が省けて、画期的な機能だったと思う。
noteと同じように「いいね」をつけたり「ファン」というフォロー・フォロワーの仕組みがあったが、それ以外にも「こっそりファン」といって相手に知られないようにフォローするやり方があったり、「通りすがりいいね」といってシミルボンの登録者でなくても「いいね」ができるシステムがあったりもした。
noteにも「非ユーザーからのスキ」という欄があるが、非常に小さく目立たない。みている人はほとんどいないのでは?という小ささだ。登録者が好まなくても、通りすがりの人が気に入ってくれる記事もたまにあるので、シミルボンのあの方式もちょっと良かったなと思う。
たくさん記事を投稿したり、条件をクリアすると、「称号」と呼ばれるレベルが上がっていく。
最初はレベル1の小さなマッチのようなともしびのアイコンが、次第にろうそくになり、レベル10になればたいまつになった。
自分のマイベスト3や、そこに7冊加えてベスト10をプロフィールにすることができた。投稿ジャンルなどもひとめでわかる工夫がされていた。
残念ながらコメントはそれほど活発ではなく、noteのようにコメント欄が活気づくようなことはあまりなかったように思う。そのためか、登録者同士のつながりは薄かった。少なくとも私の場合は。なんというか、孤高の書評家が多かった印象だ。
難点は、シミルボンに書いた記事をよそのサイトで引用すると、サムネイルなどが出てこないのでそっけなく、味気なかったことだ。さらに当該記事は引用不可でホームページしか引用できないため、そこから改めて目当ての記事を探し出さなければならない手間もあった。ベータ版のゆえん、だっただろう。
ともかく、こうなってみると「やっぱり読書感想文や素人の書評には需要がないんだな」と思わざるをえない。そして、純粋で誠実なものほど、お金が儲からないということなのかもしれない、と思う。
書く人はたくさんいても、読む人がいない。発信だけが溜まっていく――そしてそこから火がついて爆発的に本が売れるわけではない。
私は、このサイトでたくさんの本に出合ったし、素晴らしい記事にも出会った。しかし、やはり私も、読むより書くほうに傾いていたと思う。
「読書メーター」のように、自分の読書の記録として足跡を残していくというデータ一覧機能がなく、文章要素が強かったのがよくなかったのか・・・諸般の事情、ということなので、なにが、という単純な話ではないのだろう。まさに大人の事情、というものだ。
私が書いていたのはまさにコロナ禍真っ只中の2021年の半年ほどだったが、こんなサイトがあるのかとワクワクしたあの感じを今でも覚えている。
残念だけれど、今は、バックアップの到着を待っている。
こうして終わる日が、いつかは来るのだな――どんなことであれ。
さようなら。
そして、ありがとう、シミルボン。