ドラマで勉強(虎に翼・第12週)
「虎に翼」
相変わらずテンポよく進んでいるので、あっという間にはるさんが・・・
第12週は戦争孤児についてのお話でした。
ちょび髭・多岐川が家庭裁判所の5つの理念を掲げます。
・独立的性格
・民主的性格
・科学的性格
・教育的性格
・社会的性格
会社でもプロジェクトでも「理念」あってこそ、設計図が描かれ、行動が出来る。
とはいえ、理念と現実との間には大きな壁があるのは常。
各地の裁判所はもちろん、多岐川の下で働いているメンバーも同じ。
この時、対応急務だったのが戦争孤児問題でした。
庶民からすれば国が勝手に戦争を始め、勝手に父や兄を兵隊に出され、挙句失い。
さらに空襲で残った家族が奪われる。
出兵が決まった人には「おめでとうございます」と言いながら見送り。
ドラマでも描写がありましたが「産めよ増やせよ国の為」で子供が増えることは「善行」とされていた。
しかし、終戦と共に国は配給食では生きていけない政策を取り。
復員兵には何の手当も与えず、当然孤児に対しても同じ。
溢れかえる孤児を「浄化」と称してトラックに放り込み、山に置き去りにした。
あの戦争に生きてきた人の、国の為と思ってきた人を。
手のひらを返すように見捨てた。
戦争は終われば終わり、ではなく、終わってからも人を苦しめるのだ。
絶対に戦争はダメだ。
第12週は戦争孤児・道男と猪爪家との関わりを描いていた。
相変わらず、その場の思いつきで行動している寅子。
寅子には桂場や多岐川、ライアンのような法や法を扱うことに対する志が見えない。
念願の判事にはなったけれど「どういう判事を目指すのか」が全く見えない。
欲しいものGETゲームにように、目の前の「理不尽!」に怒り、それを取り払うべく行動をし、欲しいものを手に入れてきた。
ただ、それだけに見える。
子供と家庭の愛の裁判所についても理解しているのかな?という顔だった。
最近思ってきたこと。
寅子は主役ではあるけどトリックスター的な役回りではないだろうか。
とにかく寅子には情を感じさせるシーン、トラブルによる学びのシーンが少ない。
家庭裁判所が登場したからには、寅子が娘・優未を省みる場面があっても良さそうだが、それも無し。
ただ、寅子がメチャクチャに引っ掻き回すお陰で家族や友人、常ならばモブとなる人たちの人生にスポットが当たる仕組みになっている気がする。
主役=感情の機微を知りたい、成長を知りたいと思いすぎていたので、イマイチ寅子にだけは気持ちが入り難かった。
が、狂言周し役だと思えば「また問題を作ったな!」と次の展開が楽しみになる。
ギリシャ神話で言えばヘルメス、西遊記で言えば孫悟空。
シェイクスピアの「夏の夜の夢」でいえばパック。
戦争孤児のリーダー格の道男。
売り言葉に買い言葉で猪爪家で預かることになった。
これも家族にとっては傍迷惑は話である。
寅子が道男に正論をぶちかましていたら「お前の話は生ぬるい」と言われ、カッとなった寅子は「あんた、意外に私に心を開いているのね」と家に連れていくことになった。
「生ぬるい」はよねさんの口癖。
「アホか!生ぬるい!」は友達だからこそ言える悪態。
だから寅子は道男に対して「心を開いているんだね」と解釈したのだろう。
案の定、猪爪家は困惑するし、特に花江ちゃんの2人の息子(直人と直治)は母に危害を加える悪い男として警戒をする。
父の言葉を守り、子供ながら全力で母を守ろうとする息子たち。
これはこれで偉いぞ!誇らしいぞ!
道男ははるさんを「ばあちゃん」と呼び、懐いていたように見える。
勝手に自宅に保護したことを壇野さんと浦さん(壇ノ浦コンビ)に叱られる。
多岐川さんにも「軽率だった」と言われても尚、「預け先を探すので、暫く早めに仕事を切り上げたい」と勝手に時短申請する寅子の図々しさ。
事件が発生し、結局家を飛び出した道男。
その後、はるさんが心臓発作で倒れてしまう。
はるさんの最後の願い・心残りは道男。
その願いを叶えるべく、寅子はカフェー燈台へ。
相変わらずよねさんは冷たい・・・
部屋に閉じこもった道男にドアの向こうから渾身の説得をする寅子。
一生懸命さ、本気さが伝わってきた。
寅子の場合は「自分の都合100%」の純度だが、これはこれで100%なので純度は高いし、嘘偽りない気持ちであることが分かる。
純度の高さは純粋さ・我欲がないものほど高いし威力がある。
真逆の我欲まみれ=本音である場合も同様の威力がありそうだ。
今までもすぐ謝る寅子だが、初めて心の底から人に頭を下げたのではないだろうか。
戻ってきた道男の頬を撫で、ハグして3回背中を叩く。
そして「これでいい」とはるさんは満足そうに微笑んだ。
最後に多岐川さんが「愛が理想を超えて奇跡を生む」と自画自賛的に言っていた。
今週のテーマは「戦争孤児」であり裏テーマは「愛」だろう。
「愛」は寅子ではなく、はるさんによるものだった。
はるさんを見ながら「こんな存在になれたらいいな」と思った。
今で言えば専業主婦。
お金を稼ぐ存在ではないが、猪爪家の面々が安心して自分のやるべきことに専念出来たのは紛れもなくはるさんのお陰。
お金には換算出来ない支柱であった。
その役割を全うし「悔いはない」と静かに逝ったはるさん。
昔は「ばあちゃん」「じいちゃん」はどの家にもいた。
「ばあちゃん」「じいちゃん」は基本的に激甘で、注意ではなく優しく教えてくれた。
そうした役割分担をしながら家族が成り立っていたのだが、今は核家族になってしまった。
子供にとって「ばあちゃん」「じいちゃん」はシェルター・逃げ場だった。
ここ暫く私のテーマでもある「愛」
「愛」を語ると小っ恥ずかしいし、下手をしたら宗教やスピと間違われるし。
なかなか壮大で考えるのも難しい。
やっかいな「愛」
でも、はるさんが道男にしたことは普通のことでした。
必要なだけ居なさい、と居場所を与え。
薪運びなど積極的に役割を与え、関わりを持つ。
独りで生きてきたことを労う。
そして自ら手を差し伸べ、身体に触れ、抱きしめる。
花江ちゃんが言った「助かっている」も道男に響いたと思う。
「愛」を文字化するのは難しいけど、日常の生活の中に愛は沢山ある。
猪爪家には当たり前にあるもの。
道男とよねさんは少し似ている。
よねさんの住処はずっと地下で陽が当たらない場所。
よねさんが今でも寅子に冷たいのは、個人的には惚れているからだと思う。
よねさんが徹底的に陰であるなら寅子は圧倒的に陽なのだ。
「惚れている」の定義などどうでも良いこと。
太陽は眩しく輝き、太陽があってこそ生きられるものがある。
太陽に憧れ、太陽になれない自分を知り、せめて太陽を大切に自分が出来るものを与えたいと思う。
その太陽が勝手に居なくなってしまったのだから、それは恐怖としか言えないし、轟が指摘した通り、また居なくなってしまうのは怖いのだ。
道男だけでなく「必要をされる」「役に立っている」実感があると自分の存在価値を見出せる人が一定の割合でいる。
そんな人のほうが多いかもしれない。
子供の成長には「母性」→「父性」の順番が必須らしい。
母性も父性も性別は関係がない。
受け入れ、居場所を与え、手を差し伸べ、抱きしめ、人への信頼を教えるのが母性。
時に厳しく指導し、子を信頼して任せ、責任の取り方伝え、社会性を教えるのが父性。
笹寿司のおいちゃんの「来てくれるにかい、嬉しいねぇ」は道男にとって「生きていいんだ」と同意語だ。
おいちゃんが道男の師匠になり、お父ちゃん的な存在になっていくのかな。
昔の師弟関係は一緒に住み、師匠は一生をかけて弟子の面倒を見て、弟子は師匠の世話をしながら技術を身につける。
はるさんは母性を与え、おいちゃんが父性を与えていくのだろう。
血の繋がりなど関係はない。
この1件があっても尚、寅子は道男を理解出来ないだろうし、多分、戦争孤児について我が身のように考えることはないだろう。
寅子はそういう役回りなのだ。
ちなみに今日6月21日は夏至。
占星術では蟹座のスタートの日です。
タロットでは「#Ⅶ・The Chariot(戦車)」
戦車は勝利の凱旋の図でもありますが、母から離れる。
旅立ちと自立のスタートの意味もあります。
銀河鉄道999みたいな。
蟹座のキーワードは愛、母性、家庭・家族。
まさにこの1週間の「虎に翼」のテーマです。
結局、寅子と花江ちゃん。
血がつながらない二人が猪爪家を支えていくことになる。
「家族」に血の繋がりは必須ではない。
関わり続けていった先に家族という単位に辿り着くのだろう。
優三さんも「猪爪家と家族になれるのが旨み」と言っていた。
本音は大好きな寅ちゃんと家族になることが目的だっただろうが。
天涯孤独の優三さんが大家族に見送られることが出来て良かった(よくないけど)