ドラマで勉強(屍を超えていく)
「虎に翼」第6週が終わりました。
寅子達の試験の結果も出揃いました。
見ている人全員が死屍累々という熟語を浮かべたのではないだろうか。
女子部第1期は80人からスタート。
2年生になり、新入生である寅子たちを迎えたのは久保田先輩、中山先輩を含めて7人。
寅子の期も60人スタートで卒業したのは5人。
既にこの時点で死屍累々でした。
朝ドラは久しぶりですが、第1話から毎回「地獄」を連発しているドラマも珍しいのでは?
朝っぱらからですよ。
最終的に試験に合格したのは寅子、久保田先輩、中山先輩。
同時に日本初の女性弁護士が3人誕生しました。
でも、寅子の顔は浮かない。
直前になってテンポよく、バタバタと倒れていった。
国際情勢が不安になり、やむなく帰国したヒャンちゃん。
家の事情で結婚することになった涼子様。
試験前日に離婚届を叩きつけられた梅子さん。
この10年後、華族制度が廃止される。
いわゆる「没落」となる訳ですが、お母様は壊れてしまうだろう。
涼子様は階級にはさほど執着はないと思われる。
学生時代によき仲間と出会えたから。
しかしマスコミ、世間は手のひらを返しますから心配です。
最後の海で「お聞きそびれていたことがあるの」とヒャンちゃんにお国での名前を尋ねるところ。
涼子様しか思いつかなかったはず。
これまでも端々にみえた「これが上流階級の目線」と思える素晴らしい心配りだった。
優三さんは寅子のお陰でお腹の調子も良く、筆記試験は初合格。
そして口述試験で落ちてしまいました。
優三さんは弁護士になることを諦めました。
寅子のお父さんは「もう少しなのに、勿体ない」と何度も引き留めたけど、優三さんは「潮時です」と決意は堅かった。
今までお腹のせいで不合格だった。
でも、お腹のせいではなかった。
何も言い訳が出来ない状態で臨んでも結果が出せなかった。
初めての口述試験でオドオドしている優三さんが浮かぶ。
口述試験はアドリブだから「これは無理だ」と感じたのではないかな。
検察が来た時の「靴は脱いで頂きたい」「悔しがるのは後」と冷静に仕切っていて頼もしかった。
優三さんは大切な人を守る勇気のある人だ。
弁護士として戦う人ではなかっただけ。
新聞で自分だけが落ちたことを知った時の顔、目。
今まで遠くの人が受かっていると思っていた。
けど、こんなに近くの人たちが受かっている。
「やっぱり」俺はあちら側の人間ではなかったんだな、と受け入れた顔。
仲野太賀さん素晴らしい。
寅子のお母さんが「よく頑張りましたね」と声をかけたのが泣けました。
家族のいない優三さんに労いの言葉をかけ、一緒に泣いてくれる人たちがいた。
本当に良かった。
寅子は「努力は人を裏切る」ということを知っただろう。
そう、努力は人をアッサリと裏切る。
志だってそうだ。
確固たる志をを持っていても裏切るのだ。
「皆んな一緒に」というロマンティックな夢も裏切る。
ヒャンちゃん、涼子様、梅子さん。
全員が「ごめんなさい」と言って倒れていった。
本意ではないが「受験しない選択をした」無念の意思表示だ。
助けを求めず自らの力で戦った勇敢な戦士だった。
しかし優三さんだけは「ありがとう」と言って倒れていった。
力を出し切って戦い抜けたことは、敗者であっても報われた人なのかもしれない。
寅子にバトンをしっかり渡せたので悔しいが満足もしたのではないだろうか。
「俺の屍を超えていけ」という男組(漫画)みたいな状況。
彼らの骨を拾いながら進むのか。
あるいはカチャリカチャリと踏みながら進むのか。
タロットには「地獄」を描いたカードはありません。
意外かもしれないけど。
「悪魔」のカードはあるけど悪魔=地獄ではない。
人間の心の中に住む誘惑の甘い蜜が悪魔。
地獄ってこの世にあって、地獄は人の心の中にあり、人がこの世の地獄を生み出すのだ。
今の寅子をタロットで表すと何だろう?と考えて出てきたのがこちら。
7番・戦車。
元々は凱旋パレードの様子を描いたもの。
戦いに勝ち、勝利を手にして人々から祝福の声を貰いながら華々しく通る道。
戦車に乗った騎士は「人生の目標」を手に持っている。
「これから戦場に行く」感じです。
生命の木では「母なるビナー」と「戦いのゲブラ」を繋げるパスにある。
ビナーは土星、ゲブラは火星。
土星も木星も「法律」の意味があり、土星は「守るべき厳しいルール」、木星は「皆んな幸せになる法則」みたいな感じですかね。
火星は戦いの星。
法律を手に戦場に向かう。
ビナーは「大いなる母」と呼ばれているので親離れして「一人前として生きる」ことが始まった。
騎士は頭から足先まで鎧で固めています。
鎧の中はビナーから流れてくるフォース。
「天命」みたいなもの。
このフォースはあまりに神々しく、見たら目が潰れるので鎧で隠しているそうです。
騎士は自らの体を使ってフォースを運ぶことが使命。
「生い立ちや信念や格好で切り捨てられたりしない。男か女かでふるいにかけられない社会にすること」
寅子個人の小さな欲ではなく、全国民の為の偉大なる使命です。
一番になることは寅子の個人的な欲ですね。
尊い使命を持つ人は荒涼とした景色を眺め怒りに燃える。
よねさんも怒りに燃えていた人だから、きっと立ち上がると信じたい。
私の好きなブランド・コムデギャルソンの社長の原動力は「怒り」
ネガティブに捉えがちだけど「怒り」という火を持たないと戦っていけない。
そうして戦ってきた人の屍の上に私たちは生きている。
入社試験の時に「結婚の予定は」と聞かれたけど、今もある質問らしい。
問い合わせの電話を取り「私が担当です」と言うと「男に変われ」と言われたものです。
女子医大の件が頭に浮かびますが、性差で入り口を調整してはいけない。
しかし、女性は妊娠・出産がある。
女性に与えられた能力の一つで、それを停止や後退のように捉えたくない。
しかし一定期間、仕事から離れなければならない。
性差別は残っていても、仕事をする女性は増えた。
留学に行ったり、趣味を存分に楽しむことも出来るようになった。
沢山のやりたいことをパズルのように自分で組み合わせていかなければならない。
きっと寅子も同じ問題にぶつかっていくだろう。
選択肢が増えたら考えなければならない。
ボンヤリとしていたらパズルはずっとバラバラのままだから。
しかし「思ったのと違う」のが人生。
ある程度の目標を付けたら、流されるしかないのかもしれない。
「運命」とは運んでくれるものだから(占い師っぽく)
月経が取り上げられたが、自分ではコントロール出来ない体。
優三さんの胃腸と同じで、体の壁に性差はない。
この先も自分の意思では如何ともし難いことで悔しい思いもすることだろう。
第6週は「思ったのと違う」が2回出てきた。
思った通りに行かないのが人生。
「きっとどれも最後は良い方に流れる」とヒャンちゃんは言っていた。
「最後」っていつのことだろう。
過去を振り返った「今」がいつでも最後で、「今」が良いと思えれば良い方に流れてきたことになる。
7番の次の8番は裁判官を描いている調整というカードです。
青春時代が終わり、来週は戦争の匂いが一層増すと思うので、どうか皆さんご無事で。
そして一度は離れたヒャンちゃん、涼子様、梅子さんと再会出来ますように。
今回、その身なりと「女を辞めた」せいで落ちてしまったよねさん。
来週の予告に登場していたので安心しました。
ただ、愛嬌のある人のほうが得ではある。
よねさんの「女を辞めた」経緯も気持ちもよく分かる。
でも女であることは辞められず、よねさん自身が「女」に縛られて弁護士への道が閉ざされるのも悔しい。
よねさんは誰をも凌駕する完璧な回答で突破して欲しい。
この先、一人ではなく二人の幸せが見つかったのなら、ぜひ掴んで欲しい。
ただ、この時代は男性は男性で「長男か、それ以外か」で全く扱いが違ったはず。楢山節考を見ても長男は再婚もさせるが、次男には嫁も取らせない。
梅子さんが三男を連れ出せたのも、大庭家は「長男及びバックアップの次男をキープ」したから、と勘繰ってしまった。
男女の差別も、それぞれの性の中にも。
ふるいにかけられることばかりだ。
それが戦争で変わっていく。
もう二度とあってはならないことだけど、それほど変化というのは大変なことなのだ。
穂高先生の言っていた「長年に渡って染み付いていたものを変えていくのは容易ではない。間違っていると分かっていても、受け入れられない、変えられないのが人間だ。それを引き剥がし、溶かし少しずつでも上塗りするしかない」のである。
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