ドラマで勉強「虎に翼」(贅沢)
「虎に翼」第9週が終わりました。
描きたいことは山ほどあるけど、見事な第45話でした。
第1話に出てきた映像が多数使用されていました。
違うのは人々の声も入っていたことかな。
寅子が日本国憲法第14条を読みながら涙するシーン。
ほぼ全視聴者が「これで平等の世界を勝ち取った」的に捉えていたと思います。
私もそうでした。
寅子が本当に羽ばたいていくのは第10週から。
今日までのお話は「エピソード0」。
いかに寅子が翼を得るに至ったかを描いていたんだ。
今日はOPが12分50秒から入りました。
大河ドラマでにある手法です(例:真田丸)。
「このドラマはここから始まるのだ!」ですよね。
いや、胸熱でした。
日本国憲法第14条は第1話の冒頭に出てきます。
第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
実はこれはミスリードされたかな、と思ったりしています。
その前の第13条に
第13条すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
があります。
まず「個の自由と幸福の追求の権利」があり。
その上で性別その他の理由で差別されない。
第45話でも寅子は第13条と第14条を家族の前で読み上げました。
優三さんが寅子に願ったのは第13条。
寅子が立ち向かっていたのは第14条。
優三さんが第14条説もありますが、個人的には第13条の人かな。
「自分らしく、自分の幸せを求めて生きてくれれば嬉しい」ってことですよね。
憲法を勉強している人にとっては第13条と第14条はセットで最重要項目らしいです。
二人合わせて大切な人の尊厳を守っていくのだろう。
第44話で優三さんの死亡は確定しています。
裁縫が苦手な寅子が渾身の力を込めて作ったお守りだけが戻ってきました。
弁護士を辞めてから「はて?」と疑問を持つことがなくなった寅子。
顔から喜怒哀楽が無くなり、心が萎んでいるのが分かる。
猛獣だったはずの寅子が生きる気力を失って、ただ生きているだけが痛々しい。
「はて?」と思えるのは常に自分で考えている、意思を持っているから。
「はて?」に続くのは「おかしいじゃないですか!」という怒り。
考えることを辞めてしまった寅子は新聞を読む習慣も捨てていました。
母のはるさんが「自分の為だけにお使いなさい」とお金を渡します。
寅子は「そんな贅沢な・・・」と戸惑いますが、「贅沢ではありません。必要なことです」と返します。
はるさんも、花江ちゃんも。
心が壊れそうになった時、贅沢をして何とか乗り越えてきた。
花江ちゃんはお酒、はるさんは甘いモノ。
今風に言えば「ストレス喰い」「ストレス買い」をしてこい、ってことですよね。
質素を強いられているのですから、裕福だった寅子家族は殊更キツかったと思う。
はるさんは可愛い息子と愛すべき旦那を亡くしました。
花江ちゃんは大切な両親、愛する旦那を亡くしました。
「贅沢」は心に空いた穴をいっとき埋めるには効果的です。
持続力はないけど、贅沢をしている間は癒される。
応急処置ですね。
何事も応急処置をしないで放っておくと大変なことになる。
花江ちゃんもメチャクチャお酒が飲みたい訳でもなかっただろうし。
はるさんも甘いモノが本当に欲しかったか?と言われたら違ったでしょう。
それでも心の埋め立て作業は必要。
時代に関わらず「贅沢は敵」「遊びは無駄」みたいな考え方があります。
特に今はコスパの時代だし。
主語は「贅沢」でなくても「○○をしなければならな」「○○をしてはいけない」みたいなマイルール・社会ルールに縛られて生きている。
自分に贅沢をさせることは、自分を赦すことではないでしょうか。
タロットにも「贅沢」というカードがあります。
「4 of Cups」Luxury。
叶姉妹カードと呼ぶこともある。
タロットのCupsは感情を表します。
盃(器)と水の組み合わせで描かれていて、盃の形や大きさ。
水の流れ具合などで解釈をしていきます。
金色の盃はゴージャス過ぎて、秀吉の金茶室のようにギラギラし過ぎて悪趣味にもなる。
そもそも一般人には持てない盃。
持っていても「お祝いの時」ように仕舞われているような特別なもの。
水は盃に並々と注がれていますが、溢れてはいません。
大きくてゴージャスで特別な盃に見合うお酒が注がれている。
でも、水は流れているからこそ新鮮で、止めてしまうと腐るだけ。
このカードは「豪華で贅沢で優雅で。全く不足もなく不満もない」
一方「満ち足り過ぎて退屈」という意味にも繋がっています。
このカードは「4」なので盃は4つ描かれています。
ぱっと見は「2つの流れ」に見えませんか?
だから「2人」という読み方をすることが多いです。
寅子はお酒が強い大虎だったはず。
一升瓶を買ってがぶ飲みしても良かったのに。
寅子が買ったのは焼き鳥2本。
「美味しいものは一緒に」。
焼き鳥は思い出の味です。
「贅沢」は「誰かとの思い出の時間を楽しむもの」かも。
リアルには一人だけど心の中には誰かと一緒。
慌ただしい日常の中で、妄想に耽る時間は取れない。
人に邪魔されない時間を意識して作る必要がある。
それこそが本当の「贅沢」の使い方なのかも。
食べられずにお金だけ置いて立ち去ろうとした寅子に、お店のおばちゃんが「勿体ないから」を新聞紙に包んで渡してくれました。
そして優三さんとの思い出の河原へ。
ここで第1話と繋がっていきます。
「分けあってって言ったじゃない。帰ってくると言ったじゃない」と泣きながら焼き鳥を食べる寅子。
開いた新聞紙には「日本国憲法」が掲載され、あの第14条がありました。
熱望していた平等が手の中にある喜び。
大切な人が亡くなった悲しみ。
思えば優三さんが雄弁で勇敢なのは寅子と二人きりの時。
書生部屋と階段でのやり取りだったり、寅子を守る為に引っ掛れたり、検察から猪爪家を守ったり。
「頼もしい」優三さんは寅子だけが知っている。
亡くなったはずの優三さんが、寅子の横で語りかけます。
寅ちゃんが出来るのは、寅ちゃんの好きに生きることです。
また弁護士をしてもいい、違う仕事を始めてもいい。
優未の良いお母さんでいてもいい。
僕の大好きな、あの何かに無我夢中になっている寅ちゃんの顔をして、何かを頑張ってくれること。
いや、やっぱり頑張らなくてもいい。寅ちゃんが後悔せず心から人生をやりきってくれること。
それが僕の望みです。
出征前に言ったことを寸分違わず伝えにきてくれた。
今回はしゃがんで寅ちゃん目線で話しかけている。
さすが寄り添う人、優三さん
OPクレジットの仲野太賀さんには(回想)は付いていませんでした。
優三さんは妖精認定ですね。
寅子だけに見える、幸せを運んでくれる妖精(小さいおじさんとも呼ばれることもある)。
もはや「優三さん」は最初から居なくて、ずっとずっと妖精だったのでは?と思えてきます。
妖精・優三さんが舞い降りてきたのかもしれない。
寅子の幻影かもしれない。
でも、優三さんの表情も言葉もリアルに再現出来た。
これからも、何度でも寅子の心のメモリで再生出来るでしょう。
そしてスクッと立ち上がり「人生をやりきる」ことにした寅子。
やっぱり優三さんは憲法になって帰ってきたのかもね。
圧巻のエピソード0の完結でした。