ドラマで勉強「虎に翼(第22週・第109話まで)」
小橋!発芽ハーシー!良いこと言うじゃん。
「透明化された人」の最たるものは小橋のように「物語にならない人」ですね。
いわゆる普通の人です。
これを取り上げたのは凄いなぁ。
勿論、どの人にもその人の物語があります。でも、ドラマでも映画でも主役を立てる脇役、なんならエキストラ。殆どの人がこのゾーン。
とは言っても、小橋は大学も出て、裁判官になっているのでエリートです。
それでも劣等感がずっとあったのだね。
大学生時代からのトレードマークの発芽。彼なりの「尖り」だったのだな。「俺もはみ出しているぜ」という小さな主張。
小橋よりも引っ込んでいるけど、同期の稲垣は花岡と共に一発合格をしている。
そもそも小橋は最初の試験は成績が悪くて受けることも出来なかった。
今は稲垣は東京家庭裁判所少年部部長、小橋は平社員(と言っても裁判官だが)
同級生が隣で順調に出世している。
そして寅子。
女性の地位向上という時代の流れと寅子の性格。
両面から穂高先生、桂場、ライアン、多岐川から可愛がられ、有名人になっていった。
寅子は気がついているのだろうか?
実は「女性というだけで」結果的に贔屓されていることを。
男性の中でさえ目立てずにいたのに「女性というだけで」自分のポジションが奪われていくような気持ち。
分かるな。
良いこと言ったので書いておく。
寅子の弟で学校の先生をしている直明が、裁判官に興味のある子を連れてきた。
大勢のはずがたったの3人。
利発そうな女子、どうやら不良の男子、そして真面目そうな男子。
寅子達が説明している間、真面目そうな男子は欠伸をして興味が無さそう。
寅子はある事件を例にして女性が社会に出ると、女性であることから事件に巻き込まれたり、男性と比較されることがあることを伝える。
それを聞いていた真面目欠伸君が
「でも、好きで働いているんでしょ、女は。男は絶対働いて家族を養わなきゃいけないけど、女は違う。自分で働くことを選んだのになんで文句を言うの。」
「どうして働きたいの?自分から辛い思いをしにいっているってこと。女は働かなくていいんだ。そっちのほうがお得だろう」
と言う。
「男は絶対働いて家族を養わなきゃいけない」は古い価値観ではあるけれど、それ以外は完璧に同意は出来なくても、良いところを突っ込んできたと思った。
仕事も趣味も、あらゆることの動機が「損得」になると歪になるけどね。
それを聞いていた小橋が
分かる。
別に勉強しなくていいなら、働かなくていいなら、頑張りたくないよな。
そっち選びたいよな。
今日も来たくてきたんじゃないんだよな。
親に無理やり行けって言われたか?
先生や周りが構ったり優しくするのは優等生かこいつみたいな不良で、中途半端な俺たちはいないも同然。
出来る男と比べられるのも嫌なのに、さらに出来る女とも比べらられる。
頑張らなくてもいいのに頑張る女たちに無性に腹がたつ。
そう、分かる、いや分かるよ〜
そんでお前が想像している通り、その苦しさはずっと続くし、お前はこの先の人生ずっと出来るやつらと比べられ続ける。
平等ってのはさ、俺たちみたいなやつにとって確かに損なところもたくさんある。でも、その苛立ちを向ける時、お前、弱そうな相手を選んでないか。
この先、どんな仕事をして、どんな人生を送ろうと、弱そうな相手に怒りを向けるのはなんにも得がない。お前自身が平等な社会を拒む邪魔者になる。いやだろ?
ま、一番になれなくてもさ、お前のことをキチンと見てくれる人間は絶対いるからさ。
小橋の言葉は昔の自分への言葉ですよね。
大学時代、子供っぽい意地悪をしたことも。何かにつけて嫌味ったらしいところも。
弱い犬ほど吠えるものだ。だからと言ってもっと弱い犬に吠えたら嫌われるし、自分が惨めになるぞ。
小橋をキチンと見てくれる人間は多岐川だったのでしょうか。小橋のちょび髭は多岐川の真似かな。でも、薄い・・・タッキーのような厚みも濃さはなく、どこまでも、あくまで薄い。これが小橋。可愛い。
そして直明先生についてちょっと不安が。
寅子・直明兄弟はスクスク素直に育ちすぎて、「やればできるよ、やれば楽しくなるよ、一緒に行ってみようよ」と。
本当に平等に生徒に接しているのかも。
良い先生なんだけど、一部生徒にとってはウザいかもしれない。
不良くんには道男、真面目欠伸くんには小橋。
明るく平等な先生も必要だけど、時に個性に合わせた指導の仕方、指導に合う人がいるってことを知りました。
さて寅子の後輩の秋山さんが妊娠しました。
「平等なわけないです。男と女の辛さを一括りにされたくない。どうしましょう、私、子供を授かってしまいました・・・母になるのは嬉しいんです。でも、まさか今なんて。」
当然、寅子は自身の妊娠からの弁護士を辞めたことを思い出します。
「秋山さんは、今、あの地獄にいるんだ」とナレーション。
む〜。
寅子の時も思ったけど、妊娠は地獄なんですかね?
「とはいえ、ちょっと嬉しかったです」という描写がないので、本当は嬉しくないんでしょ?妊娠して迷惑被ったし、女は損なんですよね?
と、ついつい噛みついてしまいそう。
女性しか妊娠出来ないので女性の悩みではある。そこは「女ってだけで括らないでほしい」と思う。
今まで寅子は開拓してきた。
今度は秋山さん含む後輩の為に、女性の働く環境を舗装することにした寅子。
昔、寅子に憧れて竹もとで話を聞いていた女子学生も集まっていました。
その中で、かなり上昇志向・出世志向の強い子がいましたが、その子は家庭に入ったようです。この子の話も聞いてみたいな。
何故、噛みついてしまいたくなるのか。考えてみました。
きっと順番のせい。
元々秋山さんは上昇志向が強い。お姑さんにも「早く孫を」と言われていて辟易していた。
だから、まずは「いつかは子供は欲しいんです。でも、両立が出来るか不安です。寅子先輩はどうやって両立させたんですか?」みたいな質問があり。
寅子も「いや、私も一度挫けたのよ。でも、やっぱり仕事がしたくて桂場さんに直談判して復帰したの。そしたら娘と溝が出来ちゃってね。4年かけて修復した所。娘より仕事のことを考えてしまうのよね。楽しいから。それは今でも。そもそも両立って出来るのかしらね。両立しようと思わなくて良いんじゃないの」みたいな問答があり。
「秋山さんは私と一緒ね。きっと仕事が大切な人。とりあえず、復帰しやすい道筋を考えてみましょうよ」なんて話が先にあれば、また違う印象が持てたかもしれない。
そして、せっかく轟ペアを登場させたのなら、轟ペアに「俺たちは子供は持てないんだ。俺にもパートナーがいて、仕事は生き甲斐で楽しいけれど、ちょっとだけ羨ましいぞ」というセリフを言わせても良かったかもしれない。
男女問わず子供を欲しいと思うこと。育てるということ。親になるということ。
その辺を男女関係ない問題として考えてみたかった。
損得以外のものがあるのでは?
そして小橋からも秋山さんからも「平等」というワードが。
日本国憲法第14条
すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
そうそう。確かに「平等」はうたっているけど、それは「性別で差別されない」ということ。性差(身体の仕組み)まで入れたら絶対に平等などはあり得ない。仕組みが違うんだから。
第13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
寅子の結婚を祝う時によねさんが言った自由と幸福を追求する「権利」は誰にでもある。何を幸福を思うか、何を信条とするかは自由。
過去映像で寅子が倒れた時の穂高先生と桂場さんのやり取りが出ましたね。
私の思考回路が違うのか、何故、穂高先生が責められるのか。今だに分からない。
もし寅子が学生時代に「女性であるだけで」トラブルに遭い、身体を壊したのなら穂高先生が謝ったり、最後まで責任を取るべき、と言ってもいいかもしれない。
が、寅子が倒れたのは既に社会人となり、結婚をした後ですよ。
法曹界に引っ張り込んだのは穂高先生だけど、弁護士事務所に入ったのも、そこで働き続けたのも、誰でもない、寅子の意思だったと思うのだけど・・・
あの当時の避妊方法・確率はどうだったのだろうか?
結婚しても「産まない」を選択した人はどの程度いたのだろうか。
時代的に「結婚したら子供は産むべし」だったと思うので「あえて産まない選択」を周囲、特に身内は受け入れなかったかもしれない。「子供が産めないから離縁」的な話もあったと思います。
でも、優三さんだったら「寅ちゃんが好きなようにしたらいいよ」と言ってくれたかも。
そして、優未が星家を立て直すべく麻雀を武器に戦っています。
寅子と一緒に出て行ったはずが、一人だけ戻ってきて、のどかに挑戦をした。
「何故、一人で戻した?」と「はて?」と思ったけど、とりあえずスルーします。
優未が賢いのは「その家のルールで戦う」ってことですね。
相手の土俵で戦うことにすれば、相手も土俵に乗ってくれる。
星家は何かをおねだりする時には麻雀などゲームで勝つこと。
いよいよ、という所で倒れてしまった。
この家族問題を仕切るには荷が重いでしょう。
お父さん譲りのお腹ギュルギュルなのか、お母さん譲りの生理痛なのか。
それとも別の病気か。
明日はどう着地するのか楽しみにしています。
ところで。
ライアンがよねさんにつけたニックネームが「ヨネヨネ」だったとは。
あまりに捻りがないから嫌がったのでは?
それは冗談で、よねさんはフレンドリーとは対極にいる人だからね。
タロットはディスクのプリンセス。
妊娠した女性を描いています。
タロットを生命の木というものに当てはめて考えた時。
ラストを飾るカードです。
考え方としては人生色々試行錯誤し、成長をし、自分を変えて。
最後に「新しい自分を産み落とす」という〆の一枚。
魔術の最終目標は「産み出す」です。
なのでクリエーターさんを指すこともあります。
古代、ギリシャ神話が出来るもっともっと前。
「産み出す」という力は何よりも崇拝されました。
だから女神信仰が強く、遺跡なども沢山の乳房がついた土像などがあります。
小橋が感じるように、今は競争社会。上下社会。出世社会。
そして損得社会。
子供を産んで育てるなんてコスパで考えれば損しかないのかも。
ドラマの中で「損もあるけど幸せも多いよ」という人の声も聞きたいな。
はるさんも花江ちゃんは幸せそうに見えました。