見出し画像

【読書】フィトンチッド


必要なときに必要な本が
手元にやって来る。


今年は夏頃から
長編小説「ヘリオス」を書き始めて、
これが終わるまではまるで
何かに身体と心を
乗っ取られたかのように、
ヘリオスを書くことだけに
熱中していました。


授業はこなしたけれど
夏着物はあまり着なかったし、
それなりに料理は作っていても
毎週末の習慣にしていた
パンを焼くことも
禄にしませんでした。

何だか知らないうちに
時間だけが過ぎて、
気がつけば
明日から師走です。


この本を読みました。

「雪と珊瑚と」 梨木香歩


フィトンチッドがいっぱい
あふれてるみたい。

「雪と珊瑚と」 梨木 香歩 著より抜粋。
以下、抜粋は同様。


フィトンチッド、って何?
と調べました。

それは植物が出す物質で、
人が吸い込むと森林浴効果があるそうです。


まるでこの本自体から
フィトンチッドが出ているような
小説でした。


シングルマザーが
女手ひとつで子どもを育てつつ
カフェを開業するお話です。


あらすじを読むとハードです。
辛い描写もあります。

すごく、嫌な人も出て来ます。



ちょうど子どもが1歳の頃
仕事しながら夜泣きに対応し
毎晩眠れなくてフラフラの中、
喘息発作も酷く出て
それでも休めずにガラガラ声で働いた、
そんな辛かった思い出も
蘇りました。

子どもが成長するきっかけは、
愛に溢れた体験の中ばかりではなかった。

雪(1歳の子ども)が可哀そうで
いじらしかった。
けれどまだ憎らしく思う気持ちも、
すべては消えていないのだった。


アレルギーや食過敏を持つ
子どもの親についても、
残酷なまでに鋭く
描かれています。

きりきりとゆとりのない
母親に見えたでしょう?(中略)
けれど、ちょっと卵が入っているものを
食べただけで、死ぬほど肌をかきむしる
子どもの姿を見ていると、
どうしても神経質にならざるを得ないの。

あの子が生まれてから、いつもいつも、
なんだか神経がピリピリしていて、
休まることがなかった


それでも、どうしてだろう。
一貫して穏やかに
優しい気持ちで読了できる本でした。


フェンネル、アーティチョーク、ホコリタケ。


美味しそうな描写が
終始出て来るからでしょうか。



アッシジと聖フランシスコ。
洋風のレシピ。


無農薬野菜を使った
身体に優しい料理の描写は
「植物図鑑」という小説を思い出します。


「植物図鑑」も好きだったけど
それよりもっと
「料理としては」
とっかかりやすい印象です。

「植物図鑑」は日本的ですが
「雪と珊瑚と」は
軸にヨーロッパがあります。

ローズマリー、ミント、タイム、バジル。

和ハーブより西洋のハーブの方が
身近に感じるのも
おかしいですがね。


すべてのことに解決がつかないまま、
けれど生活はそんなことはお構いなしに
次から次へと続いていく。


そんな中で、
おいしくて身体の喜ぶものを
食べて生きていく。
その、一見当たり前のことができるって
どんなに幸せなんだろう。


今日は久しぶりに
パンを焼きました。
チビが今でも少し
添加物と小麦に過敏気味なので、
強力粉の量を減らして
きな粉を入れて。


いつもやっていたことを
再開しただけなのに、
何だか焼きたてのパンが
とても美味しく感じました。


これからまた
食に気をつけよう。

人間なんてみんな、
病理が物質化したみたいなもんだから、
いたわり合い、
助け合って生きていくしかないんだよ


美味しいものを
一緒に食べながら。


そんな当たり前のようなことは
実はとても贅沢なひととき、
なんでしょうね。


ゼロさんの企画、開催中です。


いいなと思ったら応援しよう!

みおいち@着物で日本語教師のワーママ
ありがとうございます!頂いたサポートは美しい日本語啓蒙活動の原動力(くまか薔薇か落雁)に使うかも?しれません。

この記事が参加している募集