【読書記録】MIYAMU『ホワイトカメリア』
失恋バーのオーナーMIYAMUさんとイラストレーターyasunaさんがおくる、
大人の恋愛小説。
大人になったら、もっと余裕をもって、
スマートに恋愛できるようになれると思っていた。だけど、違った。
大人になっても、恋の前では皆囚われの身だ。
好きな人を誘うのはグッとハードルが上がるし、
進むべからずと思っていても、気づいたらあの人を気にかけてしまう。
焦ったい距離、素直に言葉で伝えられたら良いのに飲み込んだ言葉…。
そんなやりとりが切なくて、愛おしい。
この作品は、ある恵比寿のバーを軸とした、男女6人の物語。
誰かにとっては、誰かの恋敵。
誰かにとっては正義でも、裏を返せば誰かにとってその行動は悪になる。
そんな風に酸いも甘いも絡み合う6人の恋模様を、それぞれの視点で描いている。
だけど、不思議と誰に対しても嫌悪感を抱かず、
それぞれの人物が少しだけ愛おしく思えるのがこの作品の魅力だと思う。
この作品は一貫して、「恋の始まりとその恋が終わるまで」を描いているように思う。
「終わる」と一口に言っても、それはただ「別れる」ことではない。
正確に言えば「誰かとの恋を、終わることができるようになるまで」を描いている
と言った方が良いのかもしれない。
結婚する人、別れを選ぶ人、好きになってはいけない人…。
恋にも色々な形があって、その形になってしまったのには理由がある。
先日MIYAMUさんのインスタライブを見ていたところ、あるユーザーが
こんな質問を投げかけていた。
過去の思い出を抱えながら生きるのは不毛でしょうか?
まさにこの質問に対する答えを、この本では描いているように思う。
恋は傷つくものだ。傷つく反面、その時にしか感じられない幸せを噛み締めている。
全てをひっくるめて、思い出を抱えて大事にして、前に進めるのなら
不毛ではない。とこの本を読んで思う。
臨と佳奈、紫葵と成瀬、成瀬と藍、椿と千里、
紫葵と臨…。それぞれの行く末を見守りながら読んでほしい作品だ。
切ないけれど、読後はレモネードのように爽やかで前を向こうと思える本。
ぜひ、読んでみてください。