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先達はあらまほしきことなり~石清水八幡宮~
どうも「コンプリート癖」があるようで。
平安京の守護神は、北の玄武「上賀茂神社」、西の白虎「松尾大社」、東の青龍「八坂神社」、南の朱雀「城南宮」。鬼門の「日吉大社」はおなじみなので、これでコンプリートしたぞと達成感に満ちていたのですが、鬼門に行ったのなら、裏鬼門も押さえねばならないのでは?と、洛中の人ではないのに、妙な「コンプリート魂」が芽生えてしまい、ついに「岩清水八幡宮」まで足を延ばしました。
「石清水八幡宮」の創建は平安初期。木津川・宇治川・桂川の三川が合流し淀川となる八幡市にあり、古くからの交通の要衝です。「祇園四条」駅から京阪電車に揺られ、京都競馬場を横目に見ながら30分ほどで「石清水八幡宮」駅に到着。目の前に神々しくそびえたつ男山が見えてきました。
参道を歩いて登ることもできるのですが、「日吉大社」の御神山に無理して登った反省から、今回はケーブルカーでの「らくらく参詣」をチョイス。3分ほどであっけなく到着です。
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ケーブルカーを降りると空気はひんやり。こころなしか、吐く息が白い。ご神気と呼ぶにふさわしい清浄な気が満ち満ちて、鳥のさえずりがシャワーのように降り注ぎます。
お参りにペットボトルは欠かせません。御神水をありがたく頂いて帰るためです。ただ手水舎の水は水道水の場合もありますし、飲用の可否も心配なので、巫女さんに尋ねてみました。すると親指と人差し指で「少しだけ」というジェスチャーをしながら、うんうんとうなずいておられたので、「この水は飲めますよ。でも持ち帰るのは少量にしてくださいね。」という意味と勝手に解釈した次第。
「石清水」という名にし負わば、美味に違いなかろうよ。
石清水八幡宮は源氏一門の氏神様で、必勝・弓矢の神様でもありました。近くに京都競馬場を作ったのはそういうわけだったのか?と勘ぐってしまいますが、そんなわけではなさそうです。これはいいところへやって来ましたね。ついつい自分に負けてしまう弱い私に、喝を入れてもらいましょう。
源氏の氏神様というだけでなく、織田信長が「信長塀」や「黄金の雨樋」を寄進し、楠木正成が「楠」を奉納。豊臣秀吉が廻廊を、秀頼が社殿を再建し、徳川家光が社殿を造営するなど、錚々たる武将たちの崇敬を集めてきた石清水八幡宮。祈るだけでも強くなれそうな気がします。
お参りを終え参道を振り返った時、「あ、これは鶴岡八幡宮の若宮大路だ!」と直感しました。そういえばここは、八幡様の総本山のような場所。鶴岡八幡宮は石清水八幡宮から勧請されているため、社殿の作りや建物の配置などがとてもよく似ています。
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木津川・宇治川・桂川の三川が合流して淀川となる、広大な景色を展望台から満喫し、下山の人となりました。もしブレーキが効かなくなったら、ジェットコースターになりそうで、下りのケーブルカーってちょっと怖いよな、などと想像しながら吊り広告を見ていると、名物が「走井餅」であることを知りました。下山してお店を探していると、一の鳥居を発見。そうか、本来はここから山道を登ってお参りするものなんだ。
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日が射してきて絶景に
一の鳥居をくぐったところにある頓宮殿と高良神社については全く知らなかったのですが、せっかくの機会だからとお参りし、何気なく案内板を読んだところ、「『徒然草』のあの話の舞台はここなんだ!」とびっくり。
そう、「仁和寺の法師が石清水八幡宮にお参りしようと思い立って一人で行ったところ、麓の頓宮殿と高良神社だけにお参りし、これが石清水八幡宮だと思い帰ってしまった。戻ってから傍輩に『他の参拝者たちが山へ登って行ったが、山頂には何かあるのだろうか?』と話した。」というエピソードに続き、「すこしのことにも、先達はあらまほしきことなり」とまとめられた、あの有名な段です。
私はちゃんと石清水八幡宮にお参りしたものの、頓宮殿と高良神社はお参りせずに帰ってしまうところだったので、仁和寺の法師と逆のことをやっていた、ということになりますね。危ない、危ない。
このたびの「あらまほしき先達」は、走井餅と案内板となりました。深く感謝する次第です。
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ほんのり温かいよもぎ餅
平安京の守護神すべてにお参りし、鬼門と裏鬼門も押さえた2024年が、もうすぐ暮れようとしています。様々な神様にお守りいただいて、すこしは強くなれるでしょうか。
来年は何かが大きく変わる一年となりそうで、期待と不安がありますが、石清水八幡宮の神様に「あらまほしき先達」となっていただいて、夢に向かってしっかり戦ってゆきたいと思います。
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