『THE GOOD LIFE 幸せになるのに遅すぎることはない』 要約
ハーバード成人発達研究は、人々の健康と幸福を維持する要因を解き明かすため、84年の間調査を行った。
その結果、体・心の健康、長寿との関係性に際立って決定的な因子が発見された。
それは、良い人間関係だ。
つまり、84年間にわたる研究をもとに、幸せに生きるためのたった一つの原則を集約すると、
健康で幸せな生活を送るには、良い人間関係が必要だ。
以上である。
人間関係の重要性を表す実験がある。
ひとりで電車に乗っているとしよう。周りには見知らぬ人たちが座っている。
さて、近くにいる見知らぬ乗客に話しかけるか、黙ったまま過ごすか?
乗車前、被験者の大半は「見知らぬ人に話しかければ不快な体験になるだろう。黙って過ごす方が快適なはず」と予測した。
だが実際、隣の人に話しかけたグループは、普段の通勤時より気分のいい体験をしたと答えたのである。
他にも、人間関係が良好な人ほど、年齢に関係なく死亡リスクが低かったり、肉体的な傷の治癒も早まるという研究結果もある。
それほど人間関係は重要なのだ。
だが、何もしなければ人間関係は衰えていく。
だから、時間をかけた振り返りが必要になる。
では、何から始めるのがいいのだろうか?
まずは、自分の人生には誰がいるのか?を考えてみよう。
家族や友人、親類など、親しい人の名前を書きだしてみよう。
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…
重要な関係や、うまくいっている人間関係だけを考えてはいけない。
日々、良くも悪くも自分に影響を与えている人をリストアップする。
例えば、上司や同僚などだ。
リストをつくったら、これらの人間関係の特徴は何か?を考えてみよう。
1.その人間関係から何を感じているか
2.そうした感覚はどんな頻度で生じるか をとらえる必要がある。
この図の適当な位置に名前を書き込んでいく。
各関係をチェックすると、人生を豊かにしてくれる人に感謝したり、改善していきたい関係を見つけたりすることができる。
・この人にはもっと頻繁に会いたい
・あの人は今の付き合い方がちょうどいい
・こっちの関係は消耗するけれど重要だから特別に注意を払うべきだ
と気付くこともある。
ある関係について「こうあってほしい」という方向性がある場合、あるべきと思う位置に向けて矢印を書き入れよう。
まずは、順調な関係に注目しよう。
・元気をくれる関係に目を向け、関係の長所をさらに高め、確実にする方法を考えよう。
・相手に心からの感謝を伝え、その理由も伝えよう。
次に、「元気をもらえる」「消耗する」を分ける線上に位置する関係について
少し刺激を与えて、今以上に元気をもらえる関係にする方法はないだろうか?
消耗すると感じる関係については、もっとじっくり振り返る必要がある
寛大になって、自分がしてもらいたいことを相手にしたり、
好奇心を強く持って積極的にかかわることで、相手を理解できるかもしれない。
心がさまようと不幸になる
時間を後から取り戻すことはできない。だからこそ相手に時間を使うこと、つまり注意を向けることは自分の命を相手に与えているのと同じなのだ。
あるスマートフォンを活用した実験にでは、
人間関係を育むための効果的な方法はいつでも同じ。
それは、目の前のことに注意を払うことだ。
SNSをどう人間関係に活用するか
オンラインのコミュニケーションが人間関係にどんな影響を与えるかについては、はっきりとした結論は出ていない。
だが、コロナ禍においては、孤独感を埋めるために、ある程度役に立った。
SNSは、どう使うかが重要だ。
1つ目に、他者と積極的にかかわること。
ある有力な研究によれば、Facebookの使い方が受動的な人は能動的な人に比べてネガティブな気分を感じている。
2つ目は、SNS を使うときは自分の心の状態を確認すること。
SNSを使った時、元気になれたと感じるだろうか、消耗したと感じるだろうか。
3つ目はデジタルデトックスの期間を設けること。
あえてテクノロジーを使わない時間を作ると、普段受けている影響の大きさがわかる。
相手を正しく理解することと好奇心を寄せることはどちらか大切か?
筆者らは相手の感情を正しく理解することが関係への満足の高さと相関すると予想していた。
だが、もっと重要なのは共感しようとする努力だった。
・この人は今どんな気分だろう?
・何を考えているのだろう。私は何か見逃していないだろうか?
・自分が相手の立場だったらどう感じるだろうか?
十分な注意を向けているかどうかを確認する
大切な人に対して十分な注意を向けているかどうかを確認するには、自分自身をよく観察する必要がある。
1つ目は、人生を豊かにしてくれる人間関係を一つか二つ思い浮かべ、相手に今まで以上の注意を向けること。
大切な人に注意を向け、感謝を伝えるために今日できる行動はあるだろうかと考えてみてもいい。
2つ目は、1日の過ごし方を少し変えること。
特に大切な人と一緒にいる時には注意が途切れない時間を作ること。
夕食にはスマホを持ち込まない。あるいは決まった相手と定期的に会う時間を持つなど。
3 つ目は、誰かと過ごすときは好奇心を恐れないこと。
簡単なやり取りで会話を終わらせず、真摯な関心を寄せること。少し冗談ぽく、「今日一番面白かったことは何?」「何かびっくりすることはあった?」という聞き方もある。
注意を向け、気を配るとはその瞬間を生きている相手を尊重し、敬意を払うことだ。
パートナーとの関係を改善する方法
1つ目はパートナーが優しくしてくれていることに気づくこと。
パートナーに感謝の念を覚えた一番の最近の出来事は何だっただろうか?
研究によれば「感謝日記」をつけて感謝したことをしっかり記録と記憶に留めることは有益だ。このシンプルな方法を実践すれば、パートナーの優しさに気づきやすくなる。
感謝の気持ちを伝えると、効果はさらに高まる。
2 つ目はいつものルーティンとは違うことをすること。
ルーティンをやめると、新しいものに目が行き、相手を新たな視点で理解し、素晴らしさに気づく。また、相手が自分にとって大事な存在だと伝えるシグナルにもなる。
家族や親戚と強い絆を育むための 3 つのルール
1つ目はまず自分と向き合うこと。
家族に対して無意識に反応してはいないだろうか。
「相手が変わってくれたらいいのに」と思っていないだろうか。
批判をせず、この人の好きなようにしたらどんな変化が起こるだろうかと考えてみよう。ありのままの相手を受け入れ、相手の立場になって考えることは絆を深めるのに大いに役立つ。
2 つ目はルーティーンを大事にすること。
生活が変化し、複雑化していく中で、新たに定期的なイベントを作ることはとても大事だ。
ここで役に立つのが SNSだ。疎遠になりがちな家族でも、オンラインなら定期的に連絡を取れるかもしれない。
もちろん、リアルで会うことができるなら、定期的に合う習慣を作ろう。
最後に家族の一人一人が埋もれた宝物のような価値を持っていることを思い出そう。
家族が過去に大きな試練を乗り越えた経験、家族の歴史についての豊富な知識は今を眺めるとき、他では手に入れられない視点を与えてくれる。
仕事と私生活のバランスをどう取るか?
70 代や 80 代になって仕事に時間を費やしすぎたと後悔する人は多い。昔から「死の床でもっと働ければ良かったと思う人はいない」とも言われる。
仕事を減らすべき人もいる。だが、仕事余暇、人間関係、家庭生活、幸福は複雑に絡み合っている。
この相互作用の根底にあるのが職場と家庭の人間関係だ。
仕事と家庭のバランスが崩れる場合は、職場か家庭のどちらかの人間関係の対応が間違っている可能性がある。
職場での不愉快な気分を抱えたまま帰宅すると悪循環に陥りやすい。
イライラして帰宅すると、家族や子供への対応がぶっきらぼうになり、その態度に腹を立て、みんながピリピリしてトゲのある対応になり、家庭内の雰囲気は悪くなっていく。
まず、原因である感情に意識を向けること。不愉快な気分まま帰宅してしまったら、「ネガティブな感情は仕事中に職場で発生したのだ」という事実をしっかり認識する必要がある。
この点を認めたら、少し時間をかけて感情と向きあう。
ありのままの感情と向き合うと不愉快な気持ちが幾分和らいでくる。
逆に感情を無視したり、悟られないように抑え込むという戦略を取ると、感情はかえって強くなり、怒りの反応が現れてしまう。
パートナーが機嫌の悪い状態で帰宅し、八つ当たりされていると感じた場合も、同様のアプローチが有効だ。
即座に否定的な態度を取るのではなく、一歩引いてパートナーの身に起こっていることに関心を向けよう。
一呼吸おき、「今日はどんな日だった?」とさりげなく尋ねても。あるいはいつもと質問の仕方を変えて、「今日は大変な1日だったみたいだね。何かあったの?」と聞いてみるのもいい。
心通い合う関係は福利厚生になる
仕事において他者のつながりが感じられないと起きている時間の大半を寂しく過ごすことになる。これは健康の問題にもつながる。
(自宅で子育て中の親なら親子で外出しよう。近所の公園に行くと気分転換になるはずだ)
職場での孤独感は人との関わりが乏しい職種の問題だけではない。大勢の人と関わる多忙な職種でも、同僚との間に心の通うつながりがないと孤独感を抱くことがある。
研究によれば職場に親友がいる人ほど仕事に意欲的に取り組んでいる。
とりわけ女性はそうで、職場に親友はいるかという質問に「はい」と答えた女性たちは仕事に意欲的に取り組む人の割合が 2 倍になっていた。
そこで明日、職場に行ったら次の質問について考えてほしい。
友人の存在は人を健康にする
オーストラリアの大規模な縦断研究によれば友人との繋がりが最も強い70 歳以上の人は最も弱い人に比べて調査機関中の死亡率が 22% 低かった。
乳がんになった看護師の女性2835人を対象にした縦断研究では 10 人以上の友人がいる人は親しい友人がいない女性に比べて生存率が 4 倍高かった。
手短に言えば、友人の存在は人を健康にする。
そして、すでに手にしている友人関係を維持したり、親しい友人を作っていくには意思を伴う行動が必要だ。
まず、相手の友人の言葉に耳を傾ける態度を身につけること。
耳を傾けることには話を聞く側と聞いてもらう側の両方に同じくらいのメリットがある。相手の人生経験を真摯に受け止めることで、利き手と話し手がそれぞれの殻を破り、双方の人生が豊かになる。
相手が心に秘めた悩み(例えば病気や家族の問題のこと)に触れた時には「もっと詳しく聞かせてほしい」という姿勢を示す。すると、もっと深い友情への扉が開かれるかもしれない。
次に仲違いした友人との関係について考えてみること。
いつまでも仲違いし続ける必要はない。
「私が悪かった」と素直に謝ったり、仲直りのメールを送る。誕生日に電話をするだけで過去の傷を修復できることもある。
最後に友人付き合いのルーティーンを見直すこと。
最も頻繁に合う友人との付き合いはパターン化しやすく、いつも同じ話題ばかり話してしまう。
その友人からもっと聞き出したいことはないだろうか。
自分から話せることはもっと他にないだろうか。
大人になると「友人関係のあり方は変えられない、もう手遅れだ」と決めつけている人も多い。
だが、人生は千差万別だし、歳月とともに人も大きく変わっていく。
生活のルーティーンを変えることで人とつながることもできる。
結論:幸せになるのに遅すぎることはない。
多くの人が「私は重要な存在なのだろうか」という疑問を抱く。
未来の世代に何かを残せるか、自分を超えた意義ある意義あるか、何かに貢献できるか。
その問いの答えは個人としての成功だけでなく、他人に対して何ができるかによって決まる。
そして、そのためにできることを今始めても決して遅すぎることはない。
幸福研究の最大の課題は研究成果を現実の人生にいかに応用するかだ。
人生は千差万別だし、同じ社会集団の中でも生き方は一人一人違う。
久々に会う予定の友人とコーヒーを飲みながら深い話をすべきなのか、一緒にバスケットボールをすべきなのか、散歩すべきなのかも、科学では埒が明かない。答えを見つけるには自分を振り返り、自分に合った方法を考えるしかない。
しかし、科学が言えることもある。
良好な人間関係は私たちを幸せにし、健康にし長生きさせてくれるということだ。
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