村にはさ、昔
村にはさ、昔ねぇ。
近所のお婆さんが思い出したように語りだした。
もう今はいないけど、グンナンは鋳金やさんで、今の織物部屋の向かいの小屋が工房だったの。 それに 今あなたが住んでる家、小さな別小屋があるでしょ。あそこは額縁工房だったのよ。そうそう 今は別の人が住宅として使ってる建物、あれは駅舎。もう通ってないけどね。
そんなに昔の話ではない。
つい 20年ほど前は 小さなコミュニティの中で必要な物は揃ったし、それに秀でた人も各地域にいた。 いつの間にか 彼らは歳を取り、村から離れ街中のケアセンターやもう亡くなってしまった人もいる。
大きなショッピングセンターやチェーン店が増えたのも、小さな小売店がへった理由の1つでもあるだろう。
パンデミーンで家から離れなくなって気がついた。車を出さなくてもいい距離にはもう何もない。
そんな話をしながらも、私は手仕事と個性はこれから需要が増えていくだろう。という不思議な自信がある。
誰かの手仕事はそれを見ているだけで、その人との関係が見えてくるからだ。
現にお婆さんは 壁に掛かる鋳金の蝋燭掛を眺めながらその話をしている。
そんな お婆さんとの休日のひとときの話
便利になって 私達は何を得たのか 失ったのか。
考えてしまう。