ジョーンズ博士の思い出
ジョーンズ博士と出会ったのは、私が19歳の頃だった。
大学の図書館で、トロイの遺跡の書物を読みふけっていた時に声をかけられた。
「シュリーマンを研究しているのかい?」
「ある意味研究しています。」
「どういう意味だね?」
「今後の発掘作業では、遺物の取り扱いに注意して、発掘者が私物化するのを防ぐ研究です。」
「君とは気が合いそうだ。」
こんな会話を交わし、私はジョーンズ博士の助手になった。
大学での博士は学生に大人気で、研究室にはいつも人が溢れていた。
学生の宿題を受け取り、整理して読むのが私の日課だった。
博士からは、「読んでGoodpointと思ったところに線を引いておいてくれ。」と言われてた。
子供の頃から、ありとあらゆる考古学の本を読み漁っていたので、そんじょそこらの学生よりは知識があった。
それゆえ、線を引く箇所は少ない。
そのことをジョーンズ博士はよく分かっていた。
「発掘調査を頼まれたのだが、一緒に来るかい?」
博士に誘われて即OKした。
実地で考古学の現場に触れる体験はそうそうできない。
どんなに過酷な土地でも、ついていくことにした。
ジョーンズ博士とは、大学院時代をあわせて6年間一緒に研究をつづけた。
そのうち、3回現場に連れて行ってもらった。
考古学というのは、冒険ではない。
地道な発掘作業と、ひたすら地味な書物の研究を続けることなのだ。
私には、どちらの才能もあった。
だが、博士との発掘調査は、一筋縄ではいかない。
なぜか、巨大な岩に追いかけられたり、ヘビだらけの地下を歩いたり、とんだ冒険の世界に迷い込むことになる。
それも得意だった。
剣道と合気道の達人なので、たとえ敵に捕まり、
「この娘を殺されたくなかったら、銃を捨てろ!」
などと博士のことを脅したとしても無駄なのだ。
敵の手首を掴み、くるっと回し、突きつけられた銃を奪うことなど、私には朝飯まえだから。
ジョーンズ博士はいつも準備をしている。
ピンチの時用の二人だけの暗号もいくつか用意していた。
学生時代は奨学金をもらっていたのだが、それだけでは留学生の暮らしは厳しい。
図書館でアルバイトをしながら、深夜まで研究した。
それでも大学院まで通えたのは、ジョーンズ博士が裏で支援してくれていたためだと思っている。
博士は、私のことをスージーと呼んでいた。
ちなみに私の名前はTomokaで、スージーではない。
最初に呼ばれた時に、「なんでスージーと呼ぶの?」
と聞いたが、「もしよかったら、スージーと呼ばせてくれないか?あだ名みたいな感じで。」と言われたので、別にいいかと思い、そのままにしていた。
「アジア人の名前は覚えづらいのかな?」くらいに思って、まったく気にしていなかった。
のちにマーカス・ブロディ学長に聞いた話だと、スージーというのは、幼い頃に亡くなった博士の妹さんの名前なのだそうだ。
博士はブロディ学長に「Tomokaはスージーを思い出させる。本が好きで、気が強くて生意気で、人間嫌いだけど動物を愛するとても優しい子だったんだ。」と話したそうだ。
それを聞いて、嬉しかった。
実の妹のような存在だと思っていてくれたのだなと。
年は親子ほど離れているが。
博士は、他の大学に引き抜かれることになった。
「一緒に来るかい?」
と誘ってもらったが、その頃には母校で教授を目指そうと決心していたので、魅惑的な誘いを断り、大学に残ることにした。
ジョーンズ博士の好みは、ブロンド美女だと知っていたから。
いつまでも妹以上の存在には、なれないことを分かっていたから。
博士が旅立つ日、新しい帽子をもらった。
博士のトレードマークと同じ中折れ帽。
「似合うな。」
「ありがとう。」
そう言って博士とは握手して別れた。
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という妄想を、高校生の頃、ほぼ毎晩していました。
懐かしい思い出です。
来週、インディの最後の冒険『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』が公開されるので、どうしようもなく湧き上がるインディ愛をどうにかしたくて、妄想を文章化してみました。
#私の推しキャラ
※この記事のアイキャッチ画像は、CanvaAIで作成しました。
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