
慢性の痛みと、大脳辺縁系の深い関係
慢性の痛みと大脳辺縁系、とくに扁桃体との関係は、
非常に密接であり、
痛みの経験と感情的な反応を理解する上で
重要な役割を果たしています。
「辺縁(limbic)」という言葉は、
ラテン語の「limbus」から来ており、
「縁」や「境界」を意味します。
大脳辺縁系は、脳の中央部分に位置し、
大脳皮質の内側を取り囲むように配置されています。
このため、脳の「縁」や「境界」にあるシステムという意味で
「辺縁系」と呼ばれるようになりました。
以下で、大脳辺縁系と、痛みの深い関係について説明します。
1. 大脳辺縁系と慢性痛
大脳新皮質が、脳の最も外側を構成し、
高次の精神作用に関与するのに対して、
大脳辺縁系は、その内側を構成し、
基本的な生命現象の維持・調節に、関与しています。
そして、大脳辺縁系は、感情や記憶、動機付けに関連する
脳の領域で構成されており、
慢性痛に対する感情的な反応を調整します。
慢性痛は、単なる身体的な感覚にとどまらず、
感情的・心理的な要因とも深く関わっています。
痛みの持続や慢性化は、しばしばストレス、不安、恐怖と
関連しており、これらの感情は大脳辺縁系、
とくに扁桃体によって処理されます。
2. 扁桃体と慢性痛
扁桃体は、大脳辺縁系の一部で、
とくに恐怖や不安といった感情の処理に関与しています。
慢性痛の患者は、痛みが持続することへの不安や将来への恐怖を
強く感じることが多く、これが扁桃体の活動を活性化させます。
この過剰な活動が、痛みの感受性を増加させたり、
痛みの強さを感じさせたりすることにつながるのです。
3. 扁桃体と痛みの悪循環
扁桃体が過剰に反応すると、
痛みに対する感情的な反応が強化され、
痛みそのものが増幅されることがあります。
例えば、痛みに対する恐怖が扁桃体を刺激し、
その結果、痛みがより強く感じられるようになります。
このような悪循環が続くと、痛みが慢性化し、
治りにくくなる可能性があります。
4. 自律神経と扁桃体
扁桃体はまた、自律神経系とも関連しており、
身体のストレス反応を調整します。
慢性痛が続くと、扁桃体を介して交感神経系が
過剰に活性化され、緊張やストレスが増大します。
これにより、痛みの感覚がさらに増幅されることがあります。
まとめ
慢性痛と大脳辺縁系、特に扁桃体の関係は、
痛みの感情的な側面に深く関わっています。
扁桃体が痛みと関連する恐怖や不安を処理することで、
痛みがより強く感じられたり、持続したりすることがあります。
このため、慢性痛の治療には、身体的なアプローチだけでなく、
感情や心理的な要因にもアプローチすることが重要です。