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【無料】基礎から分かる水産用語<236> 浮沈式いけすとは

みなと新聞で毎週火曜日に連載している「基礎から分かる水産用語」を公開します。

みなと新聞の専門記者が、漁業、流通・加工、小売など水産で使われる一般用語から専門用語まで、分かりやすく説明する連載です。


浮沈式いけすとは

 海中で浮き沈みをさせて運用するいけすのこと。浮力となるパイプ内に空気を入れると浮上。パイプに付属するバルブを開放すると空気が抜けて注水が始まり沈下する。主にブリ類やサケ類の沖合養殖場で導入されているが、一定の水深(数十メートル)があれば沿岸でも運用できる。

 浮沈式いけすでは、いけすを沈下させて波浪の影響を緩和して養殖魚を育てる。夏場の海水温上昇によるストレスを軽減する他、直射日光が当たることによる日焼けも防げる。災害に強く、台風襲来時には高波から、赤潮発生時には上層の有害プランクトンから魚を守るのに役立つ。

 浮沈式いけすは、その周囲を複数のロープやフロートで固定して運用するため、広い海域が必要となる。狭い海域で複数のいけすを密集させて運用するのは困難。導入費用は通常の網いけすに比べると高価だが、陸上養殖場を建設するよりは費用をはるかに抑えられる。

 近年では、浮沈式いけすに水中観測装置や自動給餌機を取り付けてスマート化を目指す動きもある。沖合養殖業者が海にほとんど出なくても陸上基地から管理できるようにしようと多方面で研究が進む。養殖に適した静穏な沿岸海域の多くがすでに利用されている日本。養殖業者や国は今、陸上、そして沖合への養殖場の拡大を図っている。

みなと新聞本紙2024年12月24日付の記事を掲載