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劇場屋根裏の鳩

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映画・演劇・歌舞伎など、見てきたものの感想など
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#中村勘九郎

そこらへんの鳩がうっかり歌舞伎見物にはまった話

もっちりデミタスさんのアドベントカレンダー(2023)寄稿です。 はじめに歌舞伎、見たことありますか。見かけたことがある方は、まあ日本人なら誰しもでしょう。白塗りの顔と赤い隈取り、あとなんか髪の毛ぶんぶん振るやつ。他には、男性が女性を演じる、というところくらいがおもな印象ですかね。不肖鳩はだいたいそんな感じのイメージでした。 もとより、いろんな事物について、ほんものを見たいと思っている鳩ではございまして、こと演劇や舞台芸術につきましては興味のあるものですから、歌舞伎もだいぶ

【歌舞伎鳩:番外編】三人吉三(五月シネマ歌舞伎)【感想】

先にパロディのような演劇を見ていましたが、あれが結構忠実に話を進めていたことをようやく知った。確かにこの演目を見ると、どうにかこうにかハッピーエンドにしたいかもしれない。 以下引用はあらすじ。 三人の吉三にまつわるあらゆる巡り合わせを絡めて構成されている話で、もうこれがうまく作られているのがただただすごいなあと、そこばかりに目がいきますね。途中で和尚に全ての情報が集約されてしまうところ、ここで観客にも全ての因果を理解させるように作られているのが構成の妙。 三人の吉三が同等に

【歌舞伎鳩】新版歌祭文 野崎村・籠釣瓶花街酔醒ほか(猿若祭二月大歌舞伎)

ともかく篠山紀信が撮影した写真とポスターを見てください。 ほんとうにこのビジュアルが美しく整っていて、どのお写真もポスターも素晴らしい。これが情報として出てから、輪を掛けて見物に行くのが楽しみになりました。 演目の中で先に知っていたのは「籠釣瓶花街酔醒」と「連獅子」。特に籠釣瓶の、八ツ橋の凜とした気品と、次郎左衛門の優しげな顔の中で八ツ橋の美しさに魂を奪われた表情が美事です。 初めてこういうもののクリアファイルを買いました(ポスターは全部揃えたくなっちゃう気がしたので我慢…

【歌舞伎鳩:番外編】歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉(二月シネマ歌舞伎)

松本幸四郎さんっていい役者なんだなあ……(しみじみ)。役名も役者さんのお名前も顔も覚えられぬ宿命を持つ鳩、歌舞伎役者さんはようやくなんとなく何人か分かるようになってきました。 たまたまヤマトタケルとはしごして見たんですが、もしかしてそういうスケジュールなんですかね?(時代感は違うはずだけれども、大和朝廷と蝦夷の話のつながりがある)鳩さっき新橋で帝見たよ。 こういう敵同士であろうとも、互いの信念を尊重するような人物たちの群像劇、良いですよね〜〜〜〜〜。熱い。出会うべくして出

【歌舞伎鳩:番外編】唐茄子屋 不思議国之若旦那(一月シネマ歌舞伎)

たった一日働くだけであらゆることが巻き起こる、勘当された愛すべきばかだ……若旦那の初仕事! 予告編を見ているだけだったので、アリスっぽい要素があるやつ、という雑認識で見に行きました。 上映案内の段階で、「若旦那応援上映」回がある映画館がある、というのを聞きつけていて(時間合わず見られませんでしたが)、どういうこと……? と思っていたのですが、本編見て分かった。愛すべきばか若旦那すぎて、確かに応援したくなるかもしれない笑 あらすじの通り、花魁に入れ込んで勘当された若旦那が唐

【歌舞伎鳩:番外編】野田版 桜の森の満開の下(九月シネマ歌舞伎)

野田版 桜の森の満開の下 あらすじ 耳男:中村 勘九郎 オオアマ:松本 幸四郎 夜長姫:中村 七之助 早寝姫:中村 梅枝 面白かった……物語に引き込まれました。 縦横無尽に走り回る耳男のパワフルさ、耳を切り落とされて痛がりながらもどこか何か抜けているような違和感、夜長姫に募らせる恨みと、それが反転する感情の表出、中村勘九郎さんに圧倒されました。こんなに面白い役者さんを見つけられて鳩は嬉しい。 中村七之助さんの夜長姫も凄まじかった。妖じみた女を、もうそれが本性かのように