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能を見る。
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2024年11月27日(水)
日中はひたすら解析をしていた。
パソコンの画面ばかり見ている。
まぁ好きなんだなぁと思う。
日が暮れて自転車で渋谷へ。
セルリアンタワーの中にある能楽堂へと向かう。
こんな所に能楽堂があったのかと知る。
高級ホテルの雰囲気を全身に浴びて、金持ちになりたいという欲求が全身から湧いてくる。
能楽堂のある階に降りたらめっちゃ豪華な受け付けとかあって、ナニコレヤバいなぁと思ってたら、隣の会場でやるベストドレッサー賞の授賞式の受け付けだった。
見たことないようなスタイルの人たちが歩いていた。
会場の扉は閉まっていたけど、扉越しに富と名声と地位の悪臭がして嫌だった。
でもこんな否定的なこと言っといて、その内あっち側と絡むこともあるのかもしれない。
人生は分からないよ〜。
で、目的は渡辺志桜里さん企画の新作能「射留魔川」。
志桜里さんが能に絡んでいるのは最近の作品から知っていたけど、新作の舞台まで見れるなんて驚きと嬉しさと。
写真家の久家さんたちと一緒に見た。
客席にはそこら辺で見かける人たちがチラホラいたけど、思ったより少なかった。
みんな何者なんだろう。
普通の能好きもおんのかな(新作能ってそんなに見る機会無いやんね?)?
能を生で見るのは多分人生3回目。
初めて見たのが、大学1年か2年かの時の、東大の駒場キャンパスで行われた薪能で(あの頃は東大に能の研究で有名な先生がいて、東大と能の絡みが結構あった)、それに感動して国立能楽堂に見に行ったのが2回目だった。
もう10年以上見ていない。
だから、というのもあったけど、それを差し引いても志桜里さんの作品は刺激的だった。
現代に生きる自分たちにとっては当たり前のような存在になっている天皇と、天皇を通して見えてくる現代の矛盾・問題を、能という表現を使ってあぶり出していた。
日本人としてもそうだし、自分の家族が第二次世界大戦で大きな影響を受けた身としても、心に突き刺さることが随所にあった。
見ながら何度も、シベリアで亡くなった曽祖父や、焼夷弾のケガが生涯体に残っていた祖父のことを思い出した。
大事な時間だった。
終演後の志桜里さんと、安田登さん、ドミニク・チェンさん、加藤眞悟さんとのトークも面白く、メモを取ったりしてしまった(普段はほぼしない)。
ドミニクさんの能はいつだろうか?
俄然、楽しみになる。
伝統芸能や天皇・国家神道って(一緒にしてしまうのはアレだが、便宜上)アンタッチャブルな雰囲気があるけど、実は、だからこそ、(現代アートの文脈において)ポテンシャルがあるのかもしれない。
特に、伝統芸能に関して言うと、長い間続いているものはどうしても硬直化し保守的になる傾向があると思う。
卑近な例で言うと、伝統校の部活でイジメや喫煙が蔓延してて腐敗しているみたいな感じ。
終演後のトークでも、室町時代には出雲阿国みたいに活躍していた女性がいたのに、江戸時代を経たことで失われてしまったもの(例えば能のような芸能の世界での女性の存在)があって、外国人含め多様な人がいる今は室町時代への揺り戻しかも、という話が出ていた。
当たり前だと思って触れずにいたことに切り込んでいくことで、新しい展開が開け、実は双方にとって良いこともあるのかもしれないと思った。
能に加え、他の狂言や文楽のような舞台芸術もそうだし、謡や地唄のような邦楽にももっと可能性があるんだろう。
まぁ言うは易しで、問題は誰が誰と組んでどこから支援を受けてやるのか、ということはだとは思うが(そういう意味で、スピーディーに一つの形にまとめてしまった志桜里さんはスゴいなと思った)。
なので、だいぶと時代を先取っている感じがした。
もしかしたら、10年後、20年後、あるいはもっと先に振り返って、あれがキッカケだったねと語られる時だったのかもと思った。
この企画の本当の意味・価値が立ち現れるには、もしかしたらまだ時間がかかるかもしれない。
その時はきっと来る。
楽しみにしていたい。
あと、能を見ながら、沖縄の組踊をまた見たいなと考えていた(どこまでも沖縄かぶれである)。
組踊は沖縄らしく、中国の芸能と能含め日本各地の芸能を取り入れて沖縄独自の芸能に完成させたもので、一度東京で見たことがある。
三線を中心にした琉球音楽に乗って狂言より分かりやすくて笑える芝居が繰り広げられる。
めっちゃおもろい。
沖縄に行けば国立劇場おきなわで(https://www.nt-okinawa.or.jp/ )普段から見れるんだけども、東京では年数回見れるかどうかだ。
良い時間だった。
これで終わってしまうのはもったいないなぁ。
これからの展開を楽しみにしている。
たまにはこういう日を過ごせることが大事だ。
今日も良い一日だった。