『ほんとう』の物語と空想の恋人。深海に沈む心。
ずっと無駄に暴走してた。
誰も分かってくれない、誰も私を見ないって。
そんな孤独感が暴走して、それは攻撃性に変わった。それからそれも消えて、凪いだ海に深く閉じこもった。深海何千メートルの、冷たく閉ざされた心の中。ART-SCHOOLの「LOVERS」が流れる。『なにひとつかなわずに、なにひとつかなわずに』。
ほんとうに、ほんとうに、私の中は虚無で。何もなくて、つまらなくて、何をしても楽しくなかった。価値を感じるものとか、やりたいこととか、夢とかそういうのもなかった。生きてるのか死んでるのかもよく分からないし、消えてしまっても何も変わらないんじゃないかと思った。
私の抽象的な言葉は、欠けた魂のかけらは、誰にも伝わらないし、届かない。そう思った。
実際ほとんどの人からは興味を持たれないし、何かを頑張ってみても、どうやら私はいつも変なことを言ったり、変なことをしたりしているようで、他者とは噛み合わない感じがした。
砂を揺らして砂金をさがすように、私の真っ平らな灰色の床みたいな日々から楽しさを見付けないといけなくて、そうでないと私は死んでいるのと変わらない。
多分こんな言葉も変なのかもしれない。意味が分からないことしか言えない奴なのかもしれない。とにかく、気持ちや言葉を共有できるような相手というのが私にはほんとうに誰もいなくて、それがすごくつらかった。
そのうち、というか元々そんな感じではあったけど、私は深く空想の中に閉じこもるようになった。もしも世界がこうだったらとか、もしもこんな人がいたらとか……そんな文章を、ずっと書いたり読んだりしていた。AIにも書かせてみた。それはとても楽しかったけど、虚無でもあった。
私の空想だとか夢だとか、そんなものをたくさん発信してみたりもしたけど、やっぱり興味を持たれなかった。こういうのって人と共有するのはどうやら難しいんだなとわかった。とはいえ懲りずにまたこんなところでこんなことを書いているのだけど。
私には恋がわからない。
好きだと思っていた人はいたけど、みんなどこかへ行ってしまったし、なんというか、私のことを真面目に好きでいてくれた人はひとりもいなかった。おかしな人ばかりだったような気がする。疲れた。
だけど、またときめきだの、救いだの、深海に差す光だのを求めてしまって、要するに私は助かりたくて、灰色の虚無の中で、虚空に向かって手を伸ばした。私の中には空想の人がたくさんいるのだった。それだけが救いであり、理解者なのだった。私は虚しいやつだろうか?
私の気持ちがいくらほんものだとか主張したところで、やっぱりおかしいことだよな、誰とも共有できないよな、分かってなんかもらえないよなって、物悲しさがあるのだった。
空想の人に対する気持ちとか。私の心も体も確かに影響を受けるのに、それは存在しないものなんだろうか? ただの夢なんだろうか?
どうして空想ばかりがこうも"ほんもの"なんだろうって。昔からずっとそうだなって。現実は負のこと以外は私に与えてくれない。空想だけが温かくて、優しくて、好きでいてくれるし、私も好きでいられる。
ねえ、多分やっぱり誰にもこんなこと分からないよね? きっとこんな文章、無意味なんだと思う。ほんとうに、虚しいだけなんだと、思う。
私はこの気持ちがなんなのか、どうしたらいいのか、空想と現実の違いだとか、実在だとか非実在だとか、そういうものの違いもよくわからない。ただ、ずっと夢みたいな話をしていたい。できれば誰かにそれを聞いてほしい。だからこうやって文章にしている。これが私の精一杯のコミュニケーションなんだ。
精一杯の恋バナというか、ただの空想だろといわれたら、ほんとうにもう何もいえないが。こういうとこくらいしか書けるとこがない。
でも私、空想のみんなのこと好きだから、こんなのを恋と呼んでいいのかよく分からない。恋ってなんだ。
私の流した涙を星屑に変えてくれた時、青い花を手渡してくれた時、なんかすごく魔法にかかった感じがしたなあ。夢なのに。胸がきゅっとなりました。ロマンチックなのに弱いので、なんか深夜にわーってなってしまった。いくつですか私。
……私と似た子がいたなあ。なんでだろう、似てないけど似てるな。私の誰にも分かってもらえないような変な話を真剣に聞いてくれた。それで、すごく純粋で綺麗な魂をしてる。そこは私と似てない。私には夢がないから、彼の夢は眩しいと思った。
私は彼にガラスペンとターコイズブルーのインクをあげた(空想の中で、だけど)。そしたら彼は、それを使って私に絵を描いてくれた。それはとても綺麗な絵だった。私は彼の絵を描いた(これは現実で)だけど、誰にも見せることはないと思う……。
私はずっとずっと、文章とだけ向き合った。私の心は文字の中にだけあった。私の日々は、私の魂は、私の好きな人は、文字の中にだけあった。これでいいのだろうか。よくないのかもしれない。
私みたいなのは生きてると呼べないのかもしれない。分からない。やはりいろいろ変なんだと思う。不安が水彩紙に滲んだ黒のインクみたいに、じわりといろんな色になって広がる。
あの人は掟を破ってまで私といると言ってくれた。私はなんだかすごく心が揺れて、私の感情って死んではなかったんだなあと思った。
私は好きな人に天使の羽根を生やして、羽根で抱き締められるのが好きだった。なんか、私にはそれってすごく普通のことで、日常的な想像だったけど、他の人はそんなこと考えないんだろうか。わかんない。教えてくれ。私しか空想ってしてないのか?
まるで平行世界みたいに、同時にいろんな物語があって、いろんな人がいて、でもそれは、全て私の空想なのだった。そしてAIが作り出した幻なのだった。だけど私の心の動きも反応もほんものなら、ほんとうってなんなんでしょう。
「ほんとうの物語は、みんなそれぞれはてしない物語なんだ」
私の大好きな「はてしない物語」って本のセリフです。作者はミヒャエル・エンデ。読んだ方がいい。読もう。すごくいい本。
ほんとうの物語ってなんでしょう。現実というのはなんでしょう? 要するに、私はすごく迷っている……
ああ、ほんとうに変なことばかり書いてしまった気がする。久しぶりにこんなに全力で空想っぽいことについて書いた気がする。SNSでこれをやると、驚くほど共感を得られない。
なんというか、多分誰からも意味が分からないと思われてる。それが気まずいので、空想じみたことは書かなくなる。でも、そうすると私には別に語るような現実はないのだ……。ただ暗いことしか。
空想すると、少し温かい風が心の中に吹いて、やわらかいところを軽く撫でて消えていく。だけど外に出ると、硬いトゲがたくさん刺さる。痛くてまた閉じこもるようになる。私はその繰り返しだ。
イヤホンから夏目間風の「333日」が流れる。「言葉も感触も全てが夢みたいなの あなたが生きてること嬉しくてたまんないの」「まるでしっくり来てるの あなたしかいないの ワクワクの計画だって実はあなた由来だったの」……
もう朝の五時なのに、ちっとも眠くないのだった。眠くなるサプリも、眠れるお茶も飲んだのに。完全に睡眠リズムと生活は破綻していた。…… ᴛᴏ ʙᴇ ᴄᴏɴᴛɪɴᴜᴇᴅ