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【読書】少女愛、義理親娘、寝取られ、妊娠、復讐。ナボコフの「ロリータ」

シャーロックホームズと同じくらい、読んでない人でも知っている小説の登場人物。ロリータ・コンプレックスのもとになったウラジーミル・ナボコフの「ロリータ」を読む。
精霊ニンフのような魅力を放つ「ニンフェット」の少女と、愛する者、愛された側の関係の物語。完全にネタバレします。

冒頭で「ロリータ」の名前の呼び方、授業でやったような発声法から始まる。
舌が口蓋を2歩下がって3歩目に歯を軽く叩いてロリータの「タ」を発音すると書いてあると、多くの読者がつい同じように名前を呼んでしまう。ロリータの名前を何度も何度も呼ぶのだが、最初の一回目は読者といっしょに呼ばせてしまう。

物語は、なにかの罪を犯した男の告白形式で始まる。
年の離れた少女に特別な感情を抱く主人公は、美少女ロリータと出会い、彼女の体のパーツのどこがどう優れているのか、どこが愛しいかをしつこいほど繰り返し、法律と欲望のあいだで苦しんだすえに、ついに義理の父親になる。
かなり最低なやつで、娘をながめて、妻は本心では消えてくれないかなと思っている。少女が真の魅力を放つのはせいぜい3~4年だから今を愛しむ。
妻が突然の事故で死んだあとは、表面では悲しみながらも、よしこれで大義名分ができたとばかりに親娘でアメリカ中を旅して住処と学校を探すのだ。

自分の支配下におきたかったロリータも自立心が育ってきて、ふつうに男子とも遊びたいようだが、男子と遊ぶのをやめる約束をする代わりに銀貨を要求される。最近聞く言い回しだけど「ATMにされる。」銀貨対応ATM。ここで見せるロリータのしたたかさが読む側には救いになる。

主人公の男は、欲望と法律のあいだで苦悩して、これはこれで純愛と呼べなくもないけど、ロリータが連れてきた同級生の女子も品定めして
「この子もややニンフェットの素質あるな」
「この子は違う」
他の少女が視界に入るたび、勝手に審査をはじめる。変質者と憎めないパパのあいだを漂う人物像。

やがて姿を消したロリータ。
少女が少女でいられるのはせいぜい数年なのに、その貴重な期間がなくなる!と心配して? 探しに探した結果、彼女は他の男と生活して、若くしてお腹に命を宿した姿で出てきて、しかも新しい生活のために金を要求するのだ。

探し求めていたロリータを「こうなっていたら愛せない」女に変貌させた男を見て、逆ギレした元祖ロリコンと寝取りおじさんの決闘が始まるんだけど、暴力に慣れてないから、バタバタ変な感じの会話と取っ組み合いになる。
原文とは違うものになっているであろう注釈だらけのくせのある言い回しと読者も本と格闘しているし、なんだか全体的にバッタバタ!滑稽さと深刻さの両方をもつ物語が、最後のいちばん深刻なはずの場面で喜劇になる。

最後に安心感があるのは、主人公が
「成長して少女性を失ったロリータを殺す」んじゃないかと疑いながら読んでいたのが、そうじゃないことが確定するから。

愛する少女が成長して愛せなくなったら殺す、そういう展開がいちばんショッキングで、ふたりの終着点として「ありそう」だけど、それをやったら一分の感情移入もできなくなる。笑えない危険人物の主人公を、「こいつ真から悪いやつでもないぞ」と何度か思わせてくれる瞬間がある。それが読書の素晴らしいところで、同時に恐ろしいところ。
最期まで読んでもロリータがこのあと幸せに暮らせる予感がしない。何度か見せた「したたかさ」で生きていくのか。すっきり終わらせずに問題をぶちこんで終わったから論争を呼んで古典になったので、衝撃的な結末で終わらせてくれない。


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南ミツヒロ
読んでくれてありがとうございます。 これを書いている2020年6月13日の南光裕からお礼を言います。