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【読書メモ】蜜柑と檸檬、どっちかを食ってどっちかを読みました
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梶井基次郎の檸檬を読んで、蜜柑を食べました。
本好きを名乗っている割に教科書に乗るような古典を全く知らないんですが、ひとつひとつハードルを跳ぶように読む。
ふと手にしたレモンを爆弾に見立てた人らしい、という認識でしたが、本当にその通りでした。
ただし、その表題作が唯一の愉しい想像で、あとはずっと、30代前半で死んだ作者が、病をわずらって寝込んだまま冬の景色を静かに描写している。
その静かな迫力にうたれるというか。
若くして死を宣告された人が自暴自棄にならずに創作ができることに驚き、その冷たさまで伝わってきそうな冬の描写に驚く。
いや、むしろ死が迫っているからこそ完成度の高い作品を残して誰かの記憶の中で生きようとしたのか。
あと、京都なのがいい。
ほとんど外はでてこないけど、これが青森で、北国の圧倒的な雪に支配された家で肺病と向き合う小説だったら、もっと厳しい読後感だった。
京都だから、まわりの言葉がやわらかく、外はある程度にぎわっているのに、自分だけが世界から取り残されていく感じがする。
取り残された世界から、自分だけにひっそりと作品を残してくれた感じがする。
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