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おすすめ記事・レビュー

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ここを読んでいっこも興味がわかなければ、残念ながらぼくはあなたにとって価値がない。
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#読書

【読書】内田裕也✕モブ・ノリオ JOHNNY TOO BAD

硬派でいく。ウジャジャけた人間は登場しない。 変なかたちの本を読んだ。 内田裕也の対談集「ロックントーク」と、モブ・ノリオの小説「ゲットー・ミュージック」 二冊をくっつけてグラフィティや顔写真で飾って、上からでかいカバーでくっつけた「JOHNNY TOO BAD」。 内田裕也がそもそもよく分からない。政見放送がネタにされていたのと晩年の樹木希林さんとの謎の夫婦関係でしか知らない。 その人を語るのに、モブ・ノリオというまたよくわからない人を介する。 わからん×わからん

2024年の振り返り

今年の記事を読み返したら、俺の書いたもの、タイトルで内容の意味が予想できないしタイトルと関係ない作品のレビューだったりして、読む気がしない。 2月ごろに「デッドアイランド2」という、Xboxゲームパスで海外の人がダウンロードできる暴力ゲームにはまった。 4月にはホロライブの大空スバルがアニメ同時視聴したとき「優しいよね?」って口癖があって好きだと書いている。 タイトルにない兎田ぺこらのドラゴンボールについて書いてる。なんで過去の自分はタイトルと内容が一致してないの?わき道

【読書記録】ヴァージニア・ウルフ「灯台へ」

文学を学んでいないから、ちゃんとした文章の書き方も、おさえておくべき古典も知らない。 ブックオフでそれっぽいオーラを出してたら「さては古典やな」というのが僕の文学に対する姿勢です。 だから英文学で重要な、ヴァージニア・ウルフという方も全く存じ上げず…。 すごく良かった。 今思えば、ドストエフスキーを読んでたときは無理してた。通好みとされてる音楽や味付けを、わかったフリじゃなくて、 「あ!これ好き」と思ったし、小説を読んでる充実感があった。 ふつうの小説だと主人公の行動と心

西村亨「自分以外全員他人」で人生からドロップアウトしたくなった思春期に戻る

たぶんですけど、みんな意味もなく人生からドロップアウトしたいと思った日々があったはず。あっても口にしないだけ。何度も人生が無意味だと思った日があるはず。 年齢を重ねて「しんどいこともあるけど、見たいところも好きな人もいるしボチボチ生きていこう」とか思いながら生きているうちに、若いころの憂鬱なんてなくなって長生きを望むようになるもんだと思う。 「自分以外全員他人」は、若いころからうっすら死にたい気持ちのまま40代になった主人公が、いまでも「消えたい気持ち」をかかえたまま、保険

SF小説の未来予知が間違っているとkawaii【読書記録】

アーサー.C.クラーク「火星の砂」を読みました。 1950年ごろ書かれたもので、SF大家の長編2作目になります。開拓中の火星を訪れた作家の物語。 初めての宇宙旅行で離陸に緊張する主人公、「水鉄砲式」で水分を補給していたが重力が戻ってくると嬉しくなってコーヒーを器に入れて飲みたくなる船員。つい持っていたものを落としてしまい、いけねえ重力あるんだった重力重力、ってなる感じ。 火星探索の前に「無重力あるある」がたくさん出てくる。 70年以上も前に書かれた小説で、火星に生き物がい

【読書】すっぽん鍋に語彙を失い、追撃の焼きすっぽんで頭のネジが飛ぶ。獣系ワイルド飯テロ【肉とすっぽん】

平松洋子「肉とすっぽん」を読みました。 牛、鴨、鹿、羊、鳩、くじら。動物たちを解体して料理している人たちに取材したルポ。 こういう内容って、どうしても「生き物を殺して食っていいのか」要素が多くなるけど、それがそんなにない。動物たちはみんな与えられた生を全力で動き回り、人間たちは人生をかけて磨いた技術で、臭みをのこさず最高の肉にするため真剣に挑み、それを取材する平松洋子の言葉の選び方は肉の旨さと食肉の歴史と料理人の歩みを最大限に上手く記す。 それぞれの全力がバチバチにぶつかっ

西部の「空気読み」。アカデミー監督賞「パワー・オブ・ザ・ドッグ」原作冒頭は今年ベスト級!

村上春樹原作の「ドライブマイカー」がアカデミー賞の話題を独占したように日本では報道されたけど、監督賞を受賞し台風の目となったのが「パワー・オブ・ザ・ドッグ」だ。 この原作が「事件」だ。 ゲイの作家が牧場ですごした実体験がもとになっていて、映画化されるまで埋もれていた小説で、発刊年1967年から50年たって、初めて日本語訳された。 舞台は今から100年ほど前のモンタナ州。西部劇の世界。ほこりまみれの世界で、ひげをたくわえて馬を操り、獲物を解体して肉と毛皮にする「男らしさ」が

【読書】江戸川乱歩「孤島の鬼」

若くして頭髪がすべて白髪になった男が、その原因となった恐怖体験を明かす。 タイプライターを打っている同僚へほのかな恋心を抱いたら、最終的には人体改造マニアの狂気の一族が待つ孤島へ宝探しをしに行くという、ファミコン「たけしの挑戦状」のあらすじみたいな飛躍のしかたで、次から次へと興味をそそる事柄が出てくる。 退屈な場面は「ここを長々と語っても読者には退屈であろう」でカット。 ラブロマンス、密室殺人、BL、怪奇趣味、名探偵、暗号解読、宝探し。「どうだ、これなら退屈しないだろ、これ

ディーパ・アーナパーラ「ブート・バザールの少年探偵」

インドのスラムで起きた、子供の失踪事件。 スラムが題材の作品は「スラムドッグミリオネア」、小説だと「三つ編み」を読んだけど、それらが航空写真としたらこっちはハンディカメラで潜入したよう。 子供の視点まで姿勢をさげて、風景を細かく切り取る。 インド出身で貧困層の取材をしていたジャーナリストでもある作者が描く、スラムの少女が見つめる手のひらの描写はこんなだ。 「指のまわりにぐるっとできたマメやタコを見た。水くみで運んだバケツの数、切ったナスの数、洗ったシャツの数のぜんぶの記

【読書記録】春日太一「時代劇入門」 時代劇は過激なジャンル。水戸黄門のような作品が異端だった

農民が「直訴」って書いた紙を竹の割れ目にはさんで、お上に出すかんじで、 「やることないし映画とか飽きた」と言ってる人には、この本を竹竿の割れ目に挟んで出そう。 黒澤明って?清水次郎長って?西南戦争って?勝新太郎って?忠臣蔵って?というレベルの僕でも読める、知識ほぼゼロからの時代劇カタログ。 名前だけでも覚えとけば損のない、役者名と作品と監督名を地引網でかっさらうようにガーッと並べて、最低限の関連事項をバーッと教えてくれる。 歴史の勉強ではない。 ひとりのアイドルやスポー

読書記録「フランケンシュタイン」

自分の作品が急に醜く見えることを「フランケンシュタイン現象」と呼びたい。 夢が詰まった自作マンガや小説を、発表したとたん直視できなくなったことはありますか?動画や写真を回収したくなったことは? 私はあるぞ。 フランケンシュタインの作者メアリー・シェリーは、父が無神論者、母はフェミニズム運動の創始者とも呼ばれる女性。 無神論者の娘が10代で書き始めた、人間をつくる小説。 書かれた200年前は、たいへん不吉な書だったろう。魔術で死者を蘇らせるとかはあっても、「電気ショック」で

ポメラニアンすごい不倫の話聞く

長嶋有「俳句は入門できる」 すーーーっごく!良かった。興味がないと決めつけていた分野が、想像を越えた軽やかさで迫って来て。 ストⅡのボーナスステ-ジを描いた句も、ブーメランを投げた後で一句読むブーメラン句会も、あやうく水難事故になりそうな状況の句も、全部。静かでスリリング。こんな趣味が、いつでも始められるのに、やってなかったなんて。 スナップ撮影のように17文字で切り取り、意表をついた単語チョイスや、一文字の微調整でカメラワークを操作して、背景のボケ味を決める。 ボクシン

内澤旬子「着せる女」の装丁がすごい!

知り合いの男性作家、写真家、編集者を一流の店舗につれて行き、カリスマフィッターとともにスーツを着せるエッセイ。 バラエティ番組でもこういうのある。「CMのあと、ダサかったお父さんが大変身!」みたいなやつ。 見る目のある女性は、服に無頓着な男に普段からイライラを溜めているのでしょうか。自分の良さを殺している、もさっとした姿で見られることに何の抵抗もない人たちに。 男性から見た、言葉遣いが汚い女を見たときのガッカリ感に近いでしょうか? 登場する男性作家たちは、「クレイジージャー

「幼年期の終り」と「アンティルドーン」に共通して出てくるコックリさんみたいなやつ

昨年末からSF小説を読み始めて、新年は「幼年期の終り」を読み終えましておめでとうございます。2020年! 人類の頭上に巨大UFOが登場!何もきかされないまま圧倒的な化学力をちらつかされて支配!軍隊廃棄!戦争も回避!人類は自滅の危機を回避して豊かになりましたが、支配者の正体はずっとわからないまま・・・という小説です。 そこで、ゆるやかに管理された人類がパーティーしている場面で、数年前にプレイステーション4で発売されたホラーゲーム「アンティルドーン」にも出てくる、あるアイテム