目黒水海
つくったものとか。
このままじゃ透明になる、と思った。 その感覚は、数ヶ月経った今もうまく他の言葉で表現できなくて、 透明になる、という言葉以外、なんだかしっくりこない。 透明になる。 自分がすーっと、消えていくような。 形がわからなくなっていくような。 輪郭を誰からも、認識されなくなっていくような。あの感覚。 きっと、人間が透明になるのは難しくない。 難しいことじゃない。 たぶんうっかり...というか、こう、歯車が良くない方向にうまく合わさってしまって、透明になっちゃった人なんて、たぶ
人生で初めて、アパートの契約更新をする。 ということに気づいた。 えっ、もうじき30歳なのに...... と思うと、 2年前まで、どれだけ“生活”というものに興味なく、住まいを転々として生きてきたのかと思う。 一人暮らしをはじめた18の頃から、「生活ってなんでこんなに大変なんだろう」と思ってた。 何年経ってもポストに届くガスの支払い書を期限までにコンビニに持ってはいけないし 何年経っても洗濯物を夜通し干しっぱなしにしてしまうし 思い返すと、26までの私は、“生活”はむ
孤独との境界が、日に日に曖昧になっていく気がする。 ひとりでも大丈夫だな、楽しいな、と思うことに、ああどうしよう、困るんじゃないかな、と思うのは、 年々分かち合える人の「数」が狭くなっていくからだと思う。 2020年、コロナ禍に入ったのをいいことに、私は社交のようなものをここ数年でだいぶ、捨てた。 それまで引き起こしてきたちぐはぐなもの……他人から自分への過度な期待とのズレ、自己受容力のなさ、関われば関わるほど下がっていくだけの何かは、大体が他人に良い顔しようと無理をして
(2022年・散文) 「生活」をしてみたかった。 あの日、セレクトショップで諦めた、パソコンの入らないちいさくて、でも可愛らしい緑の鞄を、買える私生活がほしかった。 Uberの袋が、転がらない生活がほしかった。 好きな人に恋したときに、生活能力がないことに引け目を感じなくていい、生活経験がほしかった。 ただ作り続けていくために、エンジンに燃料を積んでいくための生活じゃない、もっとささやかだけど、実直な、「生活」がほしかった。 5月。 半年ほどめまぐるしく動いていた
Twitterを、書いては消すことが増えた。 「さえずり」とは程遠い、とても重たくて繊細なものになってしまった気がする。少なくとも、私にとっては。 28歳になった。 1年前では想像もできなかった変化をしている と思う日もあるし、部屋から出られなくなったあの日から、1ミリも変わってないんじゃないかと思う日もある。 まだまだ大人気なくいたいとも思うし、 そろそろしっかりしないとさあ、と思う日もある。 「28歳ってもっと大人だと思ってたな、」を毎年更新しているし、 その
2021年8月6日、木曜日。 引っ越した翌日。洗濯機がおかしい。 洗濯機を、回せども回せども、水浸しのままなのだ。 どうやら排水ができていないらしい。調べてみると、どうやらホースの位置が違うようだとわかる。 洗濯機をなんとか持ち上げる。位置を直す。それでも排水ができていないらしい。調べる。どうやらホースが長すぎるらしい。ホースを取り出す。切る。戻す。 そうしてなんとか洗濯機が正常に動き始めた瞬間に感じたのは、 あぁ直せてしまった、というちいさな絶望だった。 余分だ
2021年、10月20日。 ノーミーツは、「会わない劇団」として生まれた「劇団ノーミーツ」から、ストーリーレーベル「ノーミーツ」へとリブランディングをしました。 ロゴのリニューアルを起点としたリブランディングプロジェクトの期間は約8ヶ月。 短いスパンで制作・公演を繰り返してきたノーミーツにとって、今までで1番と言っていいほど長いプロジェクトになりました。 このnoteでは、 劇団ノーミーツの最初のロゴを作ったデザイナーの私として、 そして新しいノーミーツのビジュアルをディ
行きつけのコーヒーショップが、1周年を迎えた。 カフェラテが美味しい店。 1年前、引っ越して降り立った街で、唐突に始まった「自粛生活」。 自粛ってなんやねん、そもそも言い方がむかつくんだよな、と内心思いつつ、 自炊力・家事力、その他もろもろのおうち生活力が皆無のふたりが、 唐突に24時間自宅生活を強いられることになった、4月7日。 あんなに家から出なかったのは、小学生のお正月以来かもしれない。 雪が降り積もるなか、特に何もしなくていいしあわせをこたつのなかで噛み締めて