あたし奇形児だ

あたしほんとうは奇形児だ。
じっさいに身体のどの部分が奇形かは
いまは言わない。


言わなければ誰にもバレない、
目立たない部分。


でも意識しないでいるのは不可能で
もしも知らないままでいたら
いつか病院送りになってしまうような
デリケートな部分。


バレたら 殺 さ れ る と
思っていたから
誰にも言ってない。
病院に行ったら
摘出手術されると思っていたから
病院にも一度も行ってない。





あたしはあたしの身体に激しく愛着しており。
その激しさといったら、
喉から手が出る、ならぬ、
喉から蛇が出てくるほど。



愛着しているときの自分自身の激しさは
まるで醜いバケモノのようで
黄泉の国に堕ちたイザナミとは
このような姿だったのかと思わされる。

 


あたしの
実の母親は
じつのところ、
あたしに何の関心も持っていなかった。
ありもしない親の愛を振りかざしてうざいだけ。




それに対して、
わたしの『身体に対する愛着』はまるで
自分が産んだ子に愛着する母親のよう。




奇形児のあたしを
あたしはとても愛しているのだと知った。



バレたら 殺 さ れ る と思っているのだから
バレないように徹底的に隠し抜く。
けれども、
奇形児であるこの子
(あたしの身体)を
嫌悪したり、
何とかして健常児へと
矯正しようとしたことは
一度もない。



あたしはあたしを愛している。
誰にも入り込めない母親の愛で。


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