30年経っても色褪せない「母の想い出」を着続ける
ネイビーブルーの生地に、黄色い百合の紋章と国旗、そして白い水玉模様が散りばめられたトップス。
この服は、母が30年以上前から着用していたものである。
母は、このトップスが大のお気に入りだった。授業参観や行事のたびに、母はこの服を着ていた気がする。
私の実家にあるアルバムを捲れば、ネイビーブルーのトップスを誇らしげに着る母の姿がそこにある。紺色の服に、赤いルージュをキュッと引く母はとても綺麗で、一際目を引く美しさだった。
ブラウスの両肩には、分厚めの肩パッドがついていた。あの服で武装した母は、いつもより少し強そうにも見えたので、声をかける時は緊張したものだ。
今では肩パット部分を外して、私がこのブラウスを着るようになった。
ところどころに黄ばんだ染みはあるものの、しっかりした素材が使用されているので、まだまだ現役。
古いブラウスでもくったり感がないので、シルエットも綺麗だ。
ブラウスは裏側がボタン仕様になっているので、サイズが大きくなったら上のボタンを外して着用することもしばしば。
この仕様のお陰で、年々太っても長く着続けることが出来た。まさに、ボタン様々である。
この服以外にも、母はたくさんのお古を私にくれた。
「質のいい服は、高い。値段を見て躊躇するけど、その分長く着ることができるの」
お古の服を私へ渡すたびに、母は頬を緩ませる。
母は不器用な人で、具体的な言葉で何かを教える人ではなかった。こうしなさい、ああしなさいという人ではなかったけれども。
母からは、モノを大切にすることを「行動」を通じて教わったように思う。
良質な生地・素材を使用し、丁寧に作られたアイテムは、長く活用できる。そして、娘へと受け継ぐことでアイテムへの「想い」も重なっていく。
私には今、4歳になる娘がいる。私も、娘にモノを大切にする喜びを伝えることができるだろうか。
まずは手始めとして、娘の授業参観へ出向くことがあれば、このブラウスを着用してみたいものだ。
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