脈があれば大丈夫と言われて撃沈……!医療格差は辛いよ
娘が、風邪を引いた。
風邪症状が続き、病院で診察を受けてもなかなか治らない。
病院へ行けば、風邪はすぐき治ると思った。しかし、病院へ何度行っても、一向に改善しないのである。
病院で対応していた検査は、コロナとインフルの検査のみ。検査が終わると、大丈夫ですと言われて帰される。この数週間、ずっとその繰り返しだ。
何週も病院に通っている理由は、風邪が一時的に治っても、またぶり返すからである。
病院で質問しても、思うような返事はもらえない。
「他の検査はできないのでしょうか?」
「うーん。脈はあるけど、ギリギリのところで保っているよね。うん、大丈夫だ!よし!」
何が一体大丈夫なのか。
むしろ脈がなかったら、死ぬよね?ギリギリで保ってるって、もうすぐ死ぬの?ギリギリでいつも生きていたいのは、KAT-TUNの歌だけにしてくれ。
そもそも大丈夫じゃないから、こっちは病院に来ているんだけど。娘は咳も止まらないし、わんわん泣いてる。どう見ても、絶対に大丈夫ではない。
せめて、他の病院紹介するとか。他の対策を投じてくれればいいのに。そんなふわっとした答えはいらない。具体的な検査と、アドバイスをくれ。
「他のウイルス検査とかできないんですかね?」
「うーん……」
医師の目が泳いでいる。おそらく、他の検査に対応していないのだろう。
できないなら、できないと素直に言え。
適当に濁すな。せめて、患者の目を見てモノを言え。お前、何モニター画面ばっかり見てるんだぁぁ!
そんな時は、顔を真っ赤にした娘に「大丈夫かい?」くらいの言葉をかけろぉぉぉぉ!!!!
「もしかすると、何かのウイルスにかかったのかもしれないね……」
それを知りたいから、私は娘を連れて病院に来てるんだよ。そのウイルスとやらを、教えてくださいよ。医者への反抗心をぐっと押さえ、「ありがとうございます」と言い、そそくさと病院を後にする。
他の病院は探さないのかって?
もちろん、市内の病院は、ほぼひととおり連絡したと思う。
全滅だよ。
我が家は名古屋のベットタウンと言えども、田んぼだらけの地方都市。いや都市ではない。田んぼに囲まれてるだけに、田舎か。
複数の小さな病院を周り、埒が開かないと感じた私は、地元で1番大きな総合病院に連絡した。すると、うちの病院では3才の子に細かい検査はできませんとのこと。
病院によると、3才の子に細かい検査をするのは危険だそうな。
「もしかしたら、小児科より呼吸器内科の方がいいかもしれませんね」
その言葉を信じて、地元の呼吸器内科にも足を運んだ。結局、脈を測り、喉元をさらっと見て「肺炎ではないと思います」で終了。えっ、それだけ?
そんなことは、私でもわかるわぁぁっ!!!!と突っ込みそうになったが、グッと堪える。
私は44歳だ。大人にならなければ。自分の中の大人気200%の力を振り絞り、「ありがとうございます」と伝え、病院を後にする。立つ鳥は後を濁してはならない。
数日経てば熱も下がり、元の生活に戻った。油断した矢先、熱をぶり返す。38度でも怖いけど、39度超える時は心臓がキュッとなる。大丈夫だろうか。
夜になると、娘が咳き込んで泣き止まない。咳が辛くて、眠れないのだ。鼻水が詰まるので、口呼吸でヒューヒューと音が鳴る。隣で寝る私も、もちろん眠れない。心配だし、咳は止まらないし。
娘は、保育園に今年の4月から行き始めた。保育園も通い始めてから、結局風邪と高熱に悩まされ、半分しか行けてない。
保育園に行けば、楽になる。仕事も集中できる。あれは全部、嘘だ。嘘っぱちだ。
あれは、数年前だっただろうか。保育園落ちた死ねというワードが、SNSで流行した。ぶっちゃけ、通い始めても死ぬ時は死ぬ。むしろ、今や看病に時間が取られて気絶しそうだ。
もちろん、保育園では先生や子どもたちのお世話になっており、とても感謝している。
保育園に入園できて、よかったとも思う。ただ、こんなに風邪ひくとは思わなかった。どんだけ世の中に、ウイルス蔓延してるのよ。いっそ、冬眠すればいいのに。いや、今夏か。誰だこんな迷惑なモノを世に送り出したのは。
娘にご飯をあげても、数分後に全部戻してしまう。食欲がない時は、比較的食べやすいアイスクリームを食べさせる。それも、吐く時は吐く。さあ困った。
どうか森永製菓さん、子供向けのウィダーインゼリーを開発していただけませんか。飲むゼリーなら、吐かずに飲める気がする。
この数日は、娘の片目に目やにが出ることが増えた。今までの熱症状で、目やにに悩まされたことは一度もない。原因もわからない。風邪と関係あるのだろうか。
眼科に行きたいけど、発熱していると眼科にも行けず。まさに、八方塞がりだ。
目やに症状が出たのは、娘だけではない。親の私もだ。半目のみ目やにが出て、止まらない。現在、半目が爛れた状態になっており、お岩さんのようだ。
もしかしたら、数日前に四谷階段のお岩さんをパロディにした小説を書こうとしたからか。呪いだろうか。だとしたら、ごめんなさい。もうしません。四谷怪談を舐めてはいけないと思った。
目やにの他にも、しばらく喉が痛い。娘の風邪がうつったかもしれない。
こんな状況が、ここ数ヶ月続いている。いつか終わりが来るのだろうか。
人間、終わりがあるものには、希望をもって挑める。終わりが見えないものには、絶望を感じる。こんな日々が、一体いつまで続くのだろう。
重いため息をつくと、夫が「いい病院を見つけた」と声をかけてきた。どうやら、口コミも評判が良いらしい。
夫は医療職の人間なので、病院のチェックの仕方も独特だ。夫は病院を調べる時、まず医師の年齢をチェックするらしい。
狙い目は30代半ば〜40代の医師が開業している病院で、経験豊富で技術も確か、なおかつ最新の知識を把握しているそうだ。
そこから、口コミを見てふるいにかけていくのだとか。その発想はなかった。目から鱗である。まさか隣人に、病院選びの尊師がいたとは。
早速、病院の診察時間が開始するとともに、予約の電話をする。
「予約は電話で受け付けていません。15:30から、webにてお申し込みください」
電話をかけたのは、朝9:30。結局、15:30まで待つことになる。予約時間を迎えるまで、無事予約できるのか。終始そわそわしっぱなしだ。
いざ予約開始時間が始まる。ドキドキしながら、予約フォームに名前、生年月日を入力して送信。
すると「名前は漢字ではなく、ひらがなで入力してください」とのこと。申し込みフォームに、そんな注意事項はなかったはず。そんなことは、先に書いておけぇぇぇ!
まるで、注文の多い料理店みたいだ。口コミ上位の病院は、条件を細かく指定しても患者の足が途絶えないのだろう。強気だ。お前はエルメスか。
病院へは夫が揃わないと行けないため(発熱外来は、車で行く必要がある。私は車を所持していない)、備考欄に18時以降でお願いしますと記載した。
はたしてその願いがちゃんと通っているかどうかも、よくわからない。
予約完了画面を見ると、今の待ち時間は、16時より21人待ちですという画面が表示されただけだ。多分、備考の願いは通ってないとみた。
まじまじと画面を見ると、「順番に遅れてご来院された場合、12番目以降の順番になりますので、ご了承ください」とのことだ。
じゃー、予約の意味ないじゃーん。
予約開始ジャストの時間まで、ドキドキして待っていたのに。鳩が豆鉄砲を食ったような顔になる。
病院は隣市なので、車を運転できない私は夫の帰りを待つしかない。結局、予約が取れた時間には迎えず、だいぶ過ぎてから病院に到着。
病院は小児科のため、院内には小さな子たちがキャッキャと声をあげて遊んでいた。
人懐っこい娘は、子どもたちが遊んでいると輪に入ろうとする。しかし、この日はボーっと佇んだまま。無理もない。その日の熱は40.6度なのだから。
診察で名前を呼ばれると、今の症状についていつくかの質問を受けた。呼吸が乱れていないか、聴診器で確認も行う。
その後、耳の中にイヤースコープを入れ懸命に覗き込む。どうやら、中耳炎になっていないか確認しているらしい。
娘は「ぎぃやああオェエエ!」と、声にならない雄叫びをあげた。耳の検査は、今回初である。
その後、複数の綿棒を娘の鼻、口へと順番に突っ込む。娘はその度に「うぉぉえええええ」と泣き出したが、看護婦、夫と私など、その場にいた人全員で押さえ込む。
無事、検査は完了。
「頑張ったね」
娘に声をかけると、抜け殻のように放心していた。初めての検査続きで、驚いたのだろう。
検査結果は、RSウイルスと溶連菌が陽性。今まで、どこの病院へ行ってもインフルエンザ、コロナしか検査ができなかった。
隣の市まで足を運べば、細かくウイルス検査をしてもらえたのか。
病院によると、今まで処方されてた薬は、溶連菌には効かないらしい。薬も、その日から飲み直しとなった。病院ひとつで、ここまで結果が違うのも驚きだ。
これが、都会と地方の医療格差なのか。
私は呆然とする。今まで市内で、必死にあちこちの病院へ連絡し、娘を連れて走り回ったのは一体何だったのかと。どうか、今後は地方の医療技術やサポートも進みますように。
世のお母さんたちに告ぐ。もし、お子さんの風邪症状において、病院で診てもらっても改善が見られないなら、病院を変えてほしい。
市内の病院で駄目なら、市を出てほしい。もしかすると、その市の医療技術やサポート内容が遅れている可能性があるからだ。
娘の風邪症状の原因がわかり、ほっと胸を撫で下ろす。ああ、原因がわかってよかった。原因がわからない時は、ずっと暗い迷路を潜り続けているような気持ちだったから。やっと、迷路を抜け出せた。そんな気がする。
娘は検査で疲れ果てたのか、家につくなりご飯を食べ、薬を飲んだらぱたりと眠りについた。
明日になったら、元気な娘の姿が見れるだろうか。
咳き込んで、眠りから目が覚めませんように。すやすやと気持ちよさそうに眠る娘をみて、そう願うばかりだ。
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