哀しい氷がとけてゆくように。
凍った星をグラスに浮かべた。
すっごく不安定な形の細すぎる脚を
持った建築物が入り江に建っている。
砂浜には、扉を閉める時に確かなかちっと
振動が指先にまで伝わってくるような重厚な
造りにみえる赤いポストがあって。
その砂浜につづく桟橋を通ると、玄関へと
辿りつく。
すべてがあやふやな空気に包まれている
そんな建物の家に住むようになったのは
最近のことだった。
海の上に紙でできた建造物が建っている
ようなアンバランスなこの家は、栞が住む
前にむかし女の人が暮らしてい