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幼児期のワクワクをくすぐるお話『なつのしっぽ』児童書紹介⑧

今回は、一人読みができるようになったばかりのお子さんにぜひおすすめしたい一冊を紹介します。

椎名誠さんによる幼児向けの物語、『なつのしっぽ』です。

恥ずかしながら、私は椎名誠さんといえば、『岳物語』や旅行記という印象が強く、小説を書かれているのは知っていましたが、児童書も手掛けられているとは存じ上げませんでした。

たまたま『岳物語』を調べていた時に、児童書も出されていることも知り、いくつか読んで、最も感動したのがこの本です。


書籍紹介📝

書名:『なつのしっぽ』
著者:椎名誠 絵:沢野ひとし 
出版社:講談社
対象:読み聞かせ→年少さん / 一人読み→小学校1年生
ページ数:88ページ
読了時間:大人で10分ほど

あらすじ

北の国の山奥で、動物たちの会議がありました。
議題は、このところ、どの家の赤ん坊も夜泣きがひどいこと、猿の娘たちは木の実を拾うのがまだへたくそで、たぬきの長男は下痢ばかりしていること、そしてヤマネコの子供らはそろいもそろって忘れん坊だということ。

そのすべての原因は、「今年は春が来るのが遅く、夏もあんまり暑くなかったからだ」と言うのです。空気が冷たいから赤ん坊が泣いてしまって、夏にひまわりが育たなかったから、物忘れに効くひまわりの種が固いままなのだと。

そうして会議で様々な動物たちが解決策を話し合い、「夏を捕まえておいたらいい」と話がまとまるのです。

でも、どうやって夏を捕まえるのでしょう。
動物たちは知恵を絞り、それぞれの方法で夏を探します。

はたして夏は見つかるのでしょうか……
続きは是非、お子さんと本をご覧ください。

おすすめポイント

それぞれの動物たちが、自分の得意な方法で夏を捕まえようとしているのが、ほっこりとかわいらしいのです。
落とし穴を彫ったり、手紙を書いたり、弓で撃ち落とそうと弓をつくり撃つれ集をしたり……。

そして、題名の『なつのしっぽ』というように、秋が来ないように夏を引っ張って留めようと必死に頑張る姿がかわいらしい。
夏にしっぽなんてあるのか? と思っても、動物たちはあると信じ切って探している。そして遂に捕まえることに成功する……⁈

擬音語がかわいらしいのも、読んでいて楽しいポイント。
文章にリズム感があるので、声に出して読んでも楽しいかもしれません。

「かいぎの ぎちょうは、むしばが いたい いのししでした。
 かおを しかめて、『はきん、はきん』と、
 おかしな せきばらいを しました」

「ひゅるんと ひとつ、つめたい かぜが ふきぬけました」

こんな形で、素敵な言葉がたくさん鏤められています。『なつのしっぽ』より


こんな人におすすめ

小学校1年生から読めるように、1年生で習う漢字しか使われていませんし、すべての漢字にふりがながふってあります。

言葉遊びも楽しいので、3歳頃から読み聞かせてあげるのもいいかもしれません。
子供と一緒に「夏のしっぽってなんだ? どこにあるの?」と話してみるのも楽しそうですね。

そういえば、作者の椎名誠さんから、読者の子供たちへのメッセージが書かれています

《作者からみなさんへ》
なつにしっぽなんてあったかなあーと
ふしぎにおもうかもしれないけれど、
どうぶつたちは、みんなしっぽをもっているので、
そうおもったのかもしれないね。

これを読むと再び心がほっこり。
「夏にしっぽがあるのでは?」という椎名さんの素敵な発想にも心が温かくなりました。

その他のおすすめ本

椎名さんは児童書をたくさん手掛けられています。低学年向けの本もあれば、高学年が読んで楽しい冒険物語などもあります。
ぜひ成長と共にいろいろな本を読んでみてください。


冒険物語で、小学校高学年にオススメの2冊👇

絶版になっている本もありますが、地域の図書館にはあると思うので、ぜひ借りてみてください。

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