多摩デザイン大学「ソーシャルデザイン」 田中 美帆さん
昨年通った多摩美術大学が、期間限定「多摩デザイン大学 / Tama Design University」を開校しているので、受講しています。
この問いを頭に置きつつ、学んでいこうと思います。
「我々は新しい世界をどうデザインできるのか?」
我々は今、環境をはじめとした様々な課題や、テクノロジーによる急減な変化と向き合っています。その状況の中でどうデザインするかの前に、何をデザインしていくべきなのかを問い直していくことが重要ではと考えました。
▼講義詳細
多摩美術大学が、誰もが参加できる“デザインの大学”を期間限定開校。50の新たなデザイン領域を知る、講義プログラム公開
東京ミッドタウン・デザインハブ第94回企画展「Tama Design University」12月1日(水)〜12月26日(日) 会期中は講義プログラムを毎日開催。聴講無料。
▼講義一覧HP
■テーマ
ソーシャルデザイン「共創で社会をつなぐ、ソーシャルデザインとは?」
ソーシャルデザインの3要素 公益性・協働性・持続性 および、思考フレームワークとマインドセットについてのご紹介がありました。
まず、デザインの対象領域から。20世紀はグラフィック、インダストリアル、インタラクションの領域が多かったけれども、21世紀は、システムデザインも含められるようになってきたとのことです。
デザイン政策ハンドブック2020 経済産業省より
グラフィックデザイン
I ♥ NYキャンペーンというNYの事例。
これは、1970年代にNYが不況・失業・治安悪化のときに、市長がデザイナーのMilton Glaserになんとかしてほしい、とお願いしてできたロゴだそうで、デザイナー側はすべての著作権を放棄しているそうです。このロゴを使って観光キャンペーンを行った結果、いまのような観光客であふれるNYになったのだとか。
さらに、9.11のときにはMore than Everを追記し、新聞のデイリーニュースで消防士の遺族への寄付金をよびかけたりと、半世紀も街を救い続けているとのことです。(すごいですね・・!)
彼は、デザイナーの役割とは「良い市民であること」と述べているとのこと。
プロダクトデザイン
レスキューポットを搭載したドローンで、海上から人を救うオーストラリアの事例。
▼1分ぐらいのVideoがあります。
ライフセーバーとドローン操縦士がペアになり、実際に人命救助実績もあるそうです。
プロダクトのソーシャルデザインは、形ができたら完成、ではなく、どう運用してサービスにするかまでがデザインだとおっしゃっていました。
インタラクション(アクション・サービス)デザイン
スローショッピングという、高齢者や買い物に助けが必要な方に、毎週火曜の2時間、安心して買い物ができる仕組みを作った、イギリスの事例。
Slow Shopping is run at the store every Tuesday from 1-3pm. During this time people who want to use the service are greeted at the entrance to the store, where a Sainsbury’s colleague is on hand to assist customers with their shopping. Chairs are put out at the end of aisles to enable people who struggle to stand all the way round the shop to have a rest. The store also mans two help desks where they offer samples of favorite products such as fruit, ginger biscuits and Victoria sponge.
Sainsbury'sニュースより
普段のスーパーと雰囲気を変えて、休憩用の椅子を置いたり、レジ音とBGMを全部止めたりしているそうです。音無しが一番効果があるそうで、シーンとした中でお買い物ができるだけでも、利用者に好評だそうです。
実際、スローショッピングを実施することで、来客数や売上向上はもちろんのこと、従業員の仕事に対するやりがいや誇りなど、エンゲージメント向上につながるので、実施するスーパーが多いそうです。
(日本のスーパーでも実施されるといいですね^^)
システムデザイン
美大生×官僚が一緒になって、国の政策にどうデザインを活用するか、という日本の事例。
▼Youtube
▼note
現在、「未来のデザイン経営」のために、九州の5社経営者と一緒にアイディア出しをしているそうで、来年3月に発表されるみたいです。
思考フレームワークとマインドセット
おすすめのフレームワークは下記。
1.弁証法 A×B=C
ex)パンにソーセージはさんだだけのホットドックが国民食になった
2.ダブル・ダイアモンド
デザイン政策ハンドブック2020 経済産業省より
マインドセットは下記と、クリティカルシンキングがおすすめだそう。
People-Centered Research 共感主導の人間中心リサーチ
1. 直感的なストーリー
2. 自由に考え議論する対話
3. リアルな生活
4. 直接的な観察
5. 背景の重視
6. 問題の観察
7. 自分自身を語る
8. 感情と願望の模索
9. 可能性を開く
10. 個人的な思考
11. 人そのものが調査研究の中心
12. イメージ・映像・音
©The Helen Hamlyn Centre for Design ©Design og arkitektur Norge
最後に、多様性ある人達が出会って、対話することによって、思考が混ざり、共創が生まれ、そこで共通の想いがあるからこそ、課題解決ができる。
そのプロセスができる、設計できる、デザインできるところがソーシャルデザインだとおもって実践を続けている、ということで締めくくり。
■所感
ソーシャルデザインってちょっと遠いと思っていましたが、様々な事例をご紹介いただくことによって、理解が深まりました。そして、この講義内容をまとめるなかで経産省のデザイン経営資料見つけましたが、かなり情報量多いですね・・(こんなにまとまっているなんて知らなかったです)
デザイン経営の歴史も含めて、時間あるときに読んでみようと思いますー!
何事も決めつけずに多様な人と対話し、より良い未来をつくっていくこと、必要ですね、と感じました。