見出し画像

あるマネージャーのジレンマ~マネジメント手法のアップデート~

現在、ジーズアカデミー(プログラミングスクール)のメンバーで組織デザインコミュニティを立ち上げ、MBAのハーバードケーススタディ並みのディスカッションを行い、先日も経営・組織・人事についての学びを深めるという会を設けた。その第一弾で扱った『あるマネージャーのジレンマ』というタイトルで、恐らく日本の社会課題とも言える昭和マネージメントのアップデートについての自身の実体験(華麗なる失敗体験をもとにした暗黙知)をもとに組織人事コンサルとしての概念(形式知)をnoteへ落とし込んでみた。学びのゴールは、反応⇒知識定着⇒行動変容⇒ROI(カークパトリックの4段階評価法)と言われている。コミュニティのセッション後の反応からの知識定着によりつながればとの狙いもあるが、先日あるクライアントになかなかアクションに踏み込めない従業員がおり、彼との1on1で私自身アクション(アウトプット)を行うためにnoteを2本書くと約束してしまったので、約束を果たすべくという目的もある(笑)

ブラックベンチャーでのギャル服時代
就職氷河期時代、学業よりもアルバイトに没頭しラフォーレ原宿(小倉)でギャルショップの店員として働いていた。今でこそユニクロに代表されるSPAのアパレル業態はメジャーだが、今から20年以上前(しかも北九州・小倉)ではとても斬新なビジネスモデルであり、私が働いていた企業はその業態をいち早く取り入れたイケイケなアパレルベンチャーだった。大学卒業後、就活もせず楽な道を選択しそのままその会社の社員となった。10人未満の組織だったため、社長は毎日のように顔を合わせる近さであり、『脇腹にナイフが突きつけられている感覚を常に持つのが経営者』『将来の保証を約束できないのではないかと、我が子の顔を見るのが怖い』『もっと孤独になれ、自立しろ』これが社長の口癖だった。新卒で入る企業は大事だなぁとつくづく思う。ライフ=ワークとも言える自身の今にもつながる仕事をする上でのベンチャー気質なストイックさはこの頃に形成されたと思っている。

2年後には店長職も任され、毎日店舗マネジメントとはなんぞやを社長やマネージャーに教わりながら充実した毎日を過ごしていた。しかし、ある系列店舗の不祥事をきっかけに財政難、人員カットのために翌日会社へ来なくていいという宣告を受けることになった。今では考えられないが、20年前はまだまだ今ほど、コンプラなど訴えられる環境にはなく、若干20代前半何が起こったからよくわからずに、次の仕事を探すことに必死だったのもある。そして会社は倒産へと至ってしまった。

昭和マネジメントのブライダル企業、営業への転身
次こそは仕事を失うことがないように、できるだけ母体のデカい会社、スキルが身に付き一生続けられる販売・営業と考え有形商材から無形商材へ、そんな打算的な考えでブライダルの営業職を志望し(花嫁の夢?なんて全く興味もなかったが)、西日本では最大手の冠婚葬祭の企業に入った。(産業が縮小するリスクを考えていなかったのは当時の誤算だった)

現在、事業会社としてさらにコンサルとして、グローバル企業、大手、中小、ベンチャー含め、200社以上は見てきたことで、今だから分かることがある。非上場の中途半端にでかい同族企業はヤバい(笑)

『気合と根性、義理人情』『数字は人格』『行動量は成果に比例する』『成約率●%は人間じゃない』『お前らは会社の寄生虫』こんな表現を毎日のように10年間聞き続け、社外の交流も途絶えると麻痺を通り越し洗脳されるのも普通だろう。たちが悪いのが冠婚葬祭互助会の積立金と保証金で成り立っている企業、ビジネスが安泰であればなおさら、高度成長期のモーレツに働けますか社会の継続で、マネジメントのアップデートなどの変革を起こす必要性もなく、まさにガラパゴスな環境であった。(と外の世界を知ることでやっと理解ができた)当該企業の後にコンサル企業を渡り歩き、事業会社としてはある大手コーヒーチェーン(内資)に入社した際、管理職含む従業員の『おりこうさん』なホワイトな働き方に衝撃を受けたのを覚えている。

パワハラまがいの教育で育ててくれた尊敬する上司との出会い
今でも尊敬している関西人のかたぎではない風貌と迫力の上司には様々なことを教わった。というか背中を見て育った。商談を外す度、夜な夜な日付が変わるまで説教された。日中架電をしていない、またアポイント数が伸びないことに激怒し、事務所で机を蹴り倒し、背筋が凍る思いがするのは日常(月末恒例)だった。ただ、営業スランプの際、その他業務やプライベートの相談は人が変わったような優しさで常に自身を正しい方向へ導いてくれ、上司の異動(正しくは業績が芳しくないがための左遷)時には、守ってくれる者を失い心にぽっかり穴が開いたかのような空虚感で数日過ごしたのを今でも覚えている。その際に上司がかけてくれた言葉は今でも自身の人材育成の軸になっているのかもしれない。『今まで俺が育ててやった。これからはお前が部下にそれを返す番や』ぽっかり穴の開いたバーンアウトのような状態で、次の仕事のやりがいを見出すには、その言葉を愚直に守り、仕事に目的や目標を何とか保ち続ける他なかった。

今だからこそ、仕事でパフォーマンスを発揮させるために、MVVの重要性や、従業員へ目的意識を持たせる重要性が説かれている。しかし、会社やその業績、また上司に依存させるピープルマネジメントのスタイルは、従業員からするとバーンアウトの危険性も秘めており、会社側からしても外部環境や組織風土や仕組みの変化によりモチベーションやパフォーマンスのブレが生じる従業員を抱えてしまうリスクになるのではないかと考える。時代の変化もあり、現在の正しいピープルマネジメントの手法は、従業員の帰属欲求を促すのではなく、自己実現欲求を促すことなのであろうと思う。他方、現代のZ世代や●●ハラを恐れる管理職の誤った心理的安全性のマネジメント(部下の反応が怖くて部下との距離を置くような)が普及するのではなく、上司が当時ほど熱量を持って部下の自己実現欲求を促すマネジメントができたなら、日本の生産性は向上するだろうと思っている。

マズローの5段階欲求

話を戻すと、それからの私は上司が憑依したかのように、上司のパワハラ気質を受け継いだ。それが私の部下への愛情の形であり、会社への貢献であった。営業商談を外した部下への罵声、さらにたちが悪いのは自身のロジカルな特性により部下へのマイクロマネジメントとすべての逃げ道を閉ざすような理詰めで部下をマネジメントした。ただし部下はみるみる一流の営業マンへと育っていった。自身も数字を獲り続け、ブレーンのような獲得マシーンを育てる社員を会社は重宝した。地方、北九州・福岡、さらにはこのあと10年くらいまでは・・・

パワハラで訴えられた関東での挫折
会社の社運のかかった関東初進出となるみなとみらいの新店舗の式場でも同じマネジメントをスタイルを続行し、ある日社内でパワハラで訴えられた。それからの本社・人事の手のひら返しは早かった。正確に言うと、社内政治でそう仕向けられたのもあるが、時代錯誤の昭和マネジメントを行っていたのは紛れもない事実だった。自分を慕ってくれる過去育てた部下たちは今でも私へ感謝の念を示してくれる。しかし、エリアの特性、さらには時代の変化についていけず、昭和のマネジメントをアップデートできていなかったのは確かだった。それ以前に、10年くらいBtoCの営業を通して、顧客の変化も感じていた。ハード売りではなかなか刺さらなくプロダクトアウトのプレゼン型の営業スタイルで一度スランプが訪れたことがある。それ以降は自身の営業スタイルをヒアリング重視のマーケットイン型への営業スタイルへと変化させるのにしばらく時間がかかった。コトラーのマーケティング理論をまさに体感したと感じていたが、今思うと人材育成でも同じことが起こっていたのだと今だからわかることもある。時代の変化を読み取れず、あるべき論を押し付け、結果的には部下のパフォーマンス発揮を通した会社業績貢献どころか、離職につながるマネージメントを行ってしまっていたことに、当時は気付いていなかった。

マーケットインとプロダクトアウト

組織人事コンサルとして得た人材育成についての形式知
コンサルになって以降は、マネジメントに対してのマネジメント研修(主には人材育成含む人材マネジメントの手法)なども実施し、自身の事業会社時代のマネジメント手法に大きな改善の余地があることを自らも学んだ。また、コンサルを経験したのち、ある事業会社で人事の統括マネージャーとしてPMI(合併のための組織風土・制度作り)にも従事した。クライアントへソリューションを提供するにはあるべき論(理論・評論)を語るだけでは説得力がなく(それでは実績とも言えない)、組織作りとしての成功体験を持っておく必要があると思う。そんな自身の理想の組織が当該企業であった。経営陣が元マクドナルドの経営層で、マクドナルドといえば、社内大学(ハンバーガー大学)に代表されるようにピープルマネジメントが仕組化されていることで有名である。マクドナルドは、MVVを軸に時代を超え、国を超え、ここまで成功した企業の代表格であろうと思う。そして当該企業の経営陣が最も注力していたのは、すべての人事施策を整合した人事戦略の立案とそれを動かすマネジメントの育成であった。戦略の失敗の7割は人に起因すると言われている。私は部下へ対し、モチベーション2.0(数字の獲得や金銭の報酬)による手法で動機付けを行っていたが、戦略を動かす、そして成功させるためには管理職陣のモチベーション3.0を刺激し、内発的動機付けによるやる気を促る必要性があることをそこで学んだ。

自己実現とモチベーション3.0の関係性

エンゲージメントと業績の関係性
タワーズワトソンは、従業員エンゲージメントを『従業員一人ひとりが企業の掲げる戦略・目的を適切に理解し、自発的に自分の力を発揮する貢献意欲』と定義している。またエンゲージメントと業績の関係性については、エンゲージメントスコア上位25%と下位25%の企業における各指標の中央値の差は、生産性+17%、売上高+20%、利益率+21%(ギャラップ社)だと言われている。要するに、昭和マネジメントスタイル特有の金銭のインセンティブで動機付けをするスタイルでは人は動機付けられず(そうだとしても一過性のもの)企業の成長も果たせない、他方、内発的動機を促し仕事へのやりがい、その組織のMVVを通し社会への貢献の自負を沸かせ、自身の自己実現欲求を促すことが、個人の成長さらには組織の成長につながるということだ。では、どうすれば、従業員個々人の内発的動機付けを促すか、これは次回の『マネジメントのジレンマ(後編)』で議論したいと思う。ワンチームでその組織で貢献意欲を発揮させたいと思わせるための、会社・上司の役割について深堀りたい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?