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わたしの詩集 11 再会

わたしの詩集 11 再会

悲しい音が鳴ったから
手を止めた
そうするのが自然だった

波がうがつ船底
こぼれゆくままの光る砂

なにもしなくていい
いまはただ眠ってて
せめてものねがい
聞きいれて

きみはよくやってる
言葉に託してる
だれもが

熱い瓦礫の上を
歩けという
この国にはとうに
神さまはいないから

なにもしなくていい
いまはただ眠ってて
せめてものねがい
この先に

ひかりを
すべてを許せる
一筋のひかりを

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わたしの詩集 10 約束はできない

わたしの詩集 10 約束はできない

木でできた椅子と暮らす
浮遊する日曜日
光にすけたコップ
いつかの水面のようだね

せっかく晴れたから
ひさしぶりに布団ほそっか
今日の夜はほんのすこし
やさしくなれそうな
必死なのこう見えて
ひどい言葉ぶつけぬよう

首が折れた扇風機
捨てられないな
ずっとこうだよ
だからまあ
しばらく帰らないよ
そのうち帰るよ
約束はできないけど

わたしの詩集 9 祝福

わたしの詩集 9 祝福

あこがれてた ワンピース
本当は かわいいものがすき
どんなきみにも 降りそそぐ 
祝福は
だから そのまま

暑い夏は ひざしにらんで 
泣くときは 子どもみたく 
大きな声で 泣いてね
きみの言葉は 正しい重さ
正しい重さで あってね

触り始めてみた ギター
途中で 飽きてもいいからね
どんなきみにも 降りそそぐ 
祝福は
だから そのまま

暑い夏は ひざしにらんで 
泣くときは 子どもみ

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わたしの詩集 8 フロントライト

わたしの詩集 8 フロントライト

別になくても よかったものたち
どこへでもゆけよ いまはもう

うんと甘く煮立たせた 果実
いつも不安げだったね ぼくら

怖いことが たくさんある気がしていた
気がしてた だけだった

次に目覚めたら 目を合わそう
正しい重さで ふたり話そう
やりすごしてきた日々は 燃やそう
いちばん透明な水を あげよう

怖いことは これからも起きてしまうのだろう
しまうだろう それは

次に目覚めたら ぼく

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わたしの詩集 7 なにもないテーブル

わたしの詩集 7 なにもないテーブル

なにもないテーブルを前に
不安を抱くのがあなただとしたら
それすらも大事に思う

じっと空白を見つめる
まぶたは赤く膿む
実は落ちていく

あなたは引き受けようとしてる
待ち望まない
だから苦しい
そんなあなたを誇らしく思う

わたしの詩集 6 これからのぼくたちは

わたしの詩集 6 これからのぼくたちは

これからのぼくたちは
きっと晴れやかな日々を過ごす
なんて君は納得しない
強情だから

ぼくはいつか疲れ果てて
手を離す
君はわかってたよと笑う
優しいから

これからのぼくたちは
いつもの道を通って
駅へ向かう
反対側のホームで小さく手を振りあった

わたしの詩集 5  無題

わたしの詩集 5 無題

雨の音が弱くなった
わたしはまだ眠れない
夢をみる
最近ずっと夢をみる

遠くで救急車の音が鳴ってる
たぶんこれは現実
夢はもっと幻みたいで
掴みどころがない

誰かが言ってた
春は悪夢の居場所なんだって
わたしはなるだけ
悲しい夢をみないように
あったこともない神様に祈る

雨の音がやんだ
たぶんこれは現実
夢はもっと幻みたいで
掴みどころがない
あなたの声も

わたしの詩集 4   新しい朝

わたしの詩集 4 新しい朝

朝が来ることが怖かったんだね、ずっと

明日も生きなきゃいけないんだって思うと、ぞっとしてたんだね

嘘をつくたび、心のなかでゲロを吐いて

なにかが終わるたび、自ら呼吸を止めて

あなたは透明になって

終わりの音だけを聞いていた

そういう生き方しかできなかったんだよね

よくやってきたよ 本当に

いまはもう

花束に似た愛があなたのまぶたにふり注ぐから

あなたがここにいてくれてうれしい

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わたしの詩集 3  発光するぼくら

わたしの詩集 3 発光するぼくら

朝起きると、すべての景色がちがってみえた。

上着をはおって外に出る。

街が呼吸している。

電車に飛び乗った。

家々が過ぎていく。

車窓から、裸ん坊の樹がみえた。

光を受けて、なめらかに輝く。

ぼくは今日、生きる喜びを知った。

わたしの詩集 1

わたしの詩集 1

朝の5時 非常階段で煙草を吸いながら
ぽろぽろと言葉が交わされて
肩がふれあって
手と手が繋がれて
ひとつの生き物になったよう

あのとき わたしたちの呼吸はひとつだった
ひとつになりたかった あのまま

たぶん魔法はとけるけど
その幸福な時間は
わたしのなかに 残りつづける
顔も名前もわすれても 残りつづける 
#詩 #創作

わたしの詩集 2

わたしの詩集 2

わたしは時々床で眠る。
その固さと冷たさに安堵する。

あなたにもそうしてほしいくらい。
手に持ってるものすべて捨てて、ただそこに立っていて。

非常階段の踊り場に、
いつもの改札の前に、
静かな湖の上に。

そのときあなたがどんな形になっていても、
かならず見つけられる。