#ニューヨーク
ジロラーモ・ダイナーのナオミ#02
ところが。ある日、猛烈に怒っているナオミに出食わした。アビゲイルが妊娠したのだ。
「あんなにいつも言ってたのに! アタシがロクでもない男のせいで、どんなに苦労したか話してたのに! まったく同じアナに堕ちるなんて信じられないよ。"愛してるから"なんぞと言うんだ。まったく薄ら馬鹿なTVや映画のせいさ。そんな話を信じさせて、あとは野となれ山となれだかンね。
アタシはいつも言ってたんだ。男が愛してる"から
ジロラーモ・ダイナーのナオミ#01
80年代の初め。92st.のアパートメントホテルが立ち退きになって、僕は行き場所を失った。ウエストサイドは開発の手が入り始めて、少しずつ住みやすい場所ではなくなっていた。紹介してくれる人があってアルファベットst.トンプキンスパークのアパートを見に行ったが「この近くをね、銃を持たないで歩くのはやめたほうが良い」と言われて、さすがに諦めた。家賃はべらぼうに安かったけど。そのままマンハッタンブリッジの
もっとみるジブリールダイナーのナオミ#03
「すごく馴れ馴れしく話しかけてる人が出て来たんです。他のウエイトレスがあの人ナオミのことが好きなのよ、と言って笑ったけど、そんな風には思わなかったんです。だから普通に接客していたんですけど、そのうち好きだとかデートしようと言うようになって、仲間のウエイトレスに断るならきちんと断らないとコジれるわよって言われたんだけど、そのままにしちゃいました。そしたらついには仕事が終わるのを店の前で待ち伏せされた
もっとみるジブリールダイナーのナオミ#02
14st.は地下鉄Lが横に走っている。ブルックリンとマンハッタンを繋ぐ通勤路線である。あまり豊かな人々は乗って来ない路線だ。マンハッタン区内で働くブルックリンで暮らす人々が利用する路線である。あるとき、14st.駅構内でナオミを見かけた。僕は思わず声をかけた。「これから仕事?早いね」日本語だった。ナオミは微笑みながら返してくれた。
「母に頼まれものがあって、ウチの近くじゃ買えないから」そこはかとな
ジブリールダイナーのナオミ#01
グリニッジヴィレッジが好きだ。僕がアパートを8ave.と14st.の交差点のすぐ裏に選んだのは、通りにでればそのままグリニッジストリートが斜めに走るショートカットとして6ave,E6st.に繋がっているからだ。まだ家内と出会う前だ。僕が恋したのNYCは、92st.の西の外れにあったボロアパートメントホテルとロアーマンハッタン/ナッソーのボロアパート、そしてこのグリニッジヴィレッジの西の外れの・・こ
もっとみる「あめりか物語」を携えてNYCを歩く
鴎外を別格とすると、やっぱり鏡花・荷風・万太郎が好きだ。
特に荷風が良い。
「好きな作家はね、丹念に書き写すといいです。」高校時代、植草先生に言われたことが有る。それで丹念に何作も書き写した。
その話をしたら、先生が言われた。
「どうして書き写すといいか、判りますか?大好きな作家のコピーにならないようにするためなんですよ。」これって凄いショックだった。
コピーになりたいと思ってたからだ。
実は、
マンハッタン/クロイスターズ美術館
ザ・クロイスターズは、マンハッタンの最北部フォート・トライオン・ヒルズの丘の上に建つメトロポリタン美術館の分館である。その日のうちだと、METでもらったバッヂでそのまま入館できるから、時間が取れれば行くべきだと思う。
クロイスターというのは修道院のこと。実際にフランスやスペインに有った中世の修道院を幾つかを買い取り、分解してアメリカに運び、それらを組み合わせて造られたのがこの美術館だ。中庭・展示室
マンハッタン/メトロポリタン美術館
アメリカ人はエジプトもんが好きだ。
ブルックリン美術館もメトロポリタン美術館も、エジプトもんのコレクションはすごい。おそらく本家カイロ美術館より興味深く散策できるのが、この二つの美術館のエジプト・コレクションである。
もしこの広大で無尽蔵の美術館を1~2時間くらいの予定で観られるのなら、僕はいつもエジプト・コレクションにピントを合わせなさい、と言っている。
なかでもメトロポリタン美術館のメクトラの
スタッテン島/アリス・オースティン美術館
NYCは5区に分かれている。
マンハッタン区・クイーンズ区・ブロンクス区・ブルックリン区・スタッテン区である。
いま再開発の最前線はブルックリンだ。そしてそれを.クイーンズが追う。
ブロンクスとスタッテンには、まだその波は及んでいない。とくにスタッテン島は静かなものだ。
NYCに暮らしていてもスタッテン島に行く機会は中々ないというのが現状だろう。
「行く理由がないよ」と言われれば、それまでなんだが
マンハッタン/ストランド・ブックセンター
NYCに居るときは、週に一回はストランド・ブックセンターへ顔を出す。此処は蔵書を並べると60マイルというのが自慢の古本屋だ。新刊書も取り扱っている。だからバーン&ノーブルあたりで見かけた書籍も、必ずその場で買わずに、此処をチェックすることにしている。新刊書だって20%30%オフしているからね。その差はでかい。
http://www.strandbooks.com/
ここへ最初に行ったのは、75年の
マンハッタン/ブルックリン橋
ブルックリン橋が一番美しく見えるポイントは、何と言ってもブルックリン・ハイツのプロムナードだろう。イーストリバーを挟んだ向こう側、ブルックリンク区である。
ブルックリン橋建設のドラマは、わりとそこいら中で書いたから、あえてここでは書かないけれど、ローブリング親子を中核とするその人間模様は、半端な小説よりも感動的なお話だ。目の前にその巨大な雄姿を見ていると、その建設のドラマが一世紀以上の時の壁を超え
マンハッタン/雨降りのNYCが好きだ。
雨降りのNYCが好きだ。
僕は傘が嫌いで、少しくらいの雨のときは大抵そのまま雨の中を突っ切ってしまうことにしている。ビルからビルの間。地下鉄の駅からアーケードまで。東京で暮らしていると意外に直接雨にあたる区間は短くて済んでしまうもんだから、いつの間にかそんな習慣がついてしまったのかもしれない。
NYCでも、こいつは変わらない。傘無しでウロウロと歩いている。
もちろんNYCに梅雨なんてぇものはない。
a Day in the Manhattan22/1996NYCのトッグラン01
犬を飼うニューヨーカーは多い。41丁目のチューダーシティのアパートに住んでた頃、よくエレベータの中で犬を連れた住人たちに出会った。それが巨大なセントバーナードだったり、アフガン・ハウンドだったり、クラシックなブルドックだったりする。
エレベータで出会う彼ら彼女は、実に躾けが良く行き届いていて見事なものだ。静かに主人の横へ座り、乗り合わせた他の人によけいな関心を示さない。まだ小さかったウチの娘どもが
a Day in the Manhattan23/1996NYCのトッグラン02
こうして彼の手元には、ゴールデン・レトリバーと傷心だけが残った。そしていつの間にかそのゴールデン・レトリバーについて語るのは、仲間うちでタブーになってしまった。
半年ほど経ったある日。僕の仕事を手伝ってくれている最中に、ケヴィンが唐突に言いだした。
「ねえ、ドックランって知ってるかい?」
「ああ。あのワシントン公園にあるアレだろ。」
「うん。行ったことあるかい?」
「残念ながら、うちのペット2匹は