萩暮らし1日目【地方移住】山口・萩で4週間のお試し、いよいよスタート(4月19日)
4週間の「お試し移住」の始まりは?
早起きして東京・羽田空港から何とか飛行機に乗り込み、山口宇部空港に到着したのは昼過ぎでした。ここから4週間の「お試し移住」が始まります。
目指すは山口県の萩市。その萩市が移住支援策として用意した施設を利用させていただき、約1ヵ月のワーケーションを通じて「今話題の『地方移住』を試してみる」を記録していきたいと思います。
昼過ぎに着いた空港でレンタカーを借りると、お腹を空かせた私たちは空港の近くにあるイタリアンレストラン「アンコーラ」に立ち寄りました。Googleマップで探して「良さそう」として当たりをつけた店です。空港のある宇部市のほか、山口市にも店舗があるようです。
「けっこういい値段するなぁ」――当社代表・Mは、メニューを見て唸ります。ランチセット(パスタかピザ+サラダ+食後のコーヒー/紅茶で2,120円〜)という設定。確かに、東京でもこれだけの金額を出せば、かなり豪華なランチではないでしょうか。
平日のランチタイムだったせいか店内には空席も少しありましたが、なかなかの繁盛店です。窓際に主婦と思しき4人組の女性グループがいました。
「あのグループの女性たち、こんな金額でも気軽に出しちゃうんですねぇ。もしかして旦那さんが近隣の大きな会社のお偉いさんなのかなー」などと、ついどうでもいい想像をしてしまいましたが、その人達がケーキも食べていたことは見逃しませんでした。
「私もケーキ食べたい!」
――とアピると、意外にも「俺も食べられるよ」とMはすんなり言います。
実は、Mも私もけっこうスイーツ好きです。出張に行った時はお互い、ご当地スイーツをお土産にするのが暗黙の了解だったりします。
アンコーラのケーキは生クリームの風味が豊かで、大きくカットしたフルーツがゴロゴロ入っており、なかなかのボリューム。味も質も、かなりのハイレベルです。
「あんなにおいしいケーキがあの値段なら、むしろ安いかも…」
「滞在中にもう一度食べられるかな?」
「また帰りに寄ってもいいかも」
――などと言いつつ、レンタカーで萩市西部にあるJR三見駅に向かいます。
(ちなみに、パスタもサラダもフォカッチャもおいしかったです)
築100年の駅舎がリノベで移住支援施設に
滞在するのは、JR三見駅の駅舎だった建物を萩市が買い取ってリノベーションした『さんちゃんち』。山陰線のJR三見駅の旧駅舎で、なんと、ほぼ築100年(1925年の開設なので、2025年で100周年!)の歴史があるそうです。
老朽化してしまったためJR西日本が駅舎の取り壊しを計画したところ、駅舎の所在自治体である萩市が交渉し、無償で譲渡を受けて「お試し暮らし住宅」として改装。2023年3月26日にオープンした同市の施設です。
萩市の担当者(萩市の移住定住支援施設「はぎポルト」の支援員)との待ち合わせ時間は15時だったのですが、のんびりケーキなんか食べていたら、もう13時半!
「大丈夫、Google先生によると1時間くらいで着くって話でしたから」
「え、ナビでは1時間45分かかるって出てるが?」
「ええ? 到着時間15時15分じゃあ完全に遅刻じゃないですか」
「いやまぁ、なんとか途中で巻き返せるでしょ。……たぶん」
――と車をぶっ飛ばし、どうにか約束の5分前に到着しました。
萩市の職員の方から簡単な説明を受けて、中を案内していただきました。
「駅舎に住んでみる」が体験できる
2023年に駅舎を住宅へとリノベーションしたばかりとのこと。改装してまだ1年余り、ということで中は新しくてキレイです。そして話には聞いていましたが、本当に萩焼の食器がたくさん置いてある!
そして、何よりも楽しみにしていたのがホームの見える窓に面しているカウンターです。来る前から「ここで電車を見ながら仕事をしたい〜♪」と、コーヒーカップを片手にPCに向かう自分をずっと夢想していました。
しかし、今思えば、ここからがけっこう大変でした。。。
到着したのは金曜日で、私は仕事がかなり詰まっていたこともあり、代表・Mに買い出しをお願いして仕事をしていたのですが、1時間くらいでMから連絡が来ました。
「……仕事まだ終わらない?」
「は? あと2時間は必要って言ったはずですよ?」
後で知ったのですが、Mはひとりで調味料などを選ぶのが大変で、私に決めさせたかったようです。結局、私は仕事を中断してMを待ち(市中心部から三見までは約15分)、萩市内で最も大きそうなスーパー「アトラス」で買い物をしてから、夕飯を済ませて帰ろう、ということになりました。
夕飯食べられる店「やってない…」
ダイソーやスーパーなどであれこれ買い、そろそろ夕飯にするか……と、Googleマップであたりをつけた店に向かいました。
ところが残念ながら店休日のようです。仕方なく近くにあるはずの別の店に行くと、そこも休み。
「金曜日の18時半なのに、なんで閉めてるんだろうね?」と、M。
確かに、普通なら週末を迎えて浮かれる客で、店は大いに繁盛しそうなものです。
ところが、その次に行った店も、その次に行った店も、全て休み。
結局、行きたいと思う店が特に見つからず、私たちはスーパーでお惣菜を買って帰ることにしました。
食事中もずっと「金曜日の18時台に飲食店が開いてないってどういうこと?」と言い続ける私たち。海沿いにあり、数多くの魚が水揚げされる萩市に来たのですから、「おいしい魚が食べられる店がたくさんあるに違いない」と思い込んでいたのですが……そもそも店がやってない。食いしん坊の2人としては、ちょっと肩透かしをくらった感じです。
とはいえ、スーパーにも地元の特産品が色々と並んでいたりと、おいしい野菜や魚が手に入るのは間違いありません。
この先の4週間がどんな生活になるのかと期待と不安が入り混じった気持ちで、体力のない2人は泥のように寝落ちしました……。
【コメント by M 《2024/4/19》】
スーパーでの買い物に悩んだのは、例えば醤油でも味噌でも「地元のものを買うべきか」「いや、値段が安いナショナルブランドを買うべきか」――との疑問ゆえだった。ワンマン社員・Yは“こだわり”が強いタイプなので、ヘンな物を買うと「……」と自己主張が明らかに顔に出るのだ(ゆえに“ワンマン社員”と呼ばれている笑)。
山口県には、いや萩市には、多くの地元ブランドの良品が存在する。スーパーには地元産の野菜や地元で獲れた魚が数多く並び、選択肢が多すぎるという「うれしい悲鳴」的な悩みが買い手にはあるのだ。後々書いていくが、萩市は殊に「名産」の数が多い土地のようで、空港などでも「萩産」「萩みやげ」は一大勢力となっている。
そして萩といえば、日本の近代を造った明治維新の志士を多数輩出した土地でもある。吉田松陰、高杉晋作、久坂玄瑞、桂太郎や、伊藤博文、井上馨、井上勝、山尾庸三、遠藤謹助ら「長州ファイブ」と呼ばれた面々――。明治維新に命を燃やした長州藩の「勤皇の志士」を経て、後に「明治の元勲」となった多くの人材を輩出した。
歴史的にも貴重な街並みを遺し、茶の湯で尊ばれる萩焼や、ローカルの食や産品が豊かな土地と文化をもつ街というのは、消費者かつ旅行者にとってとてもありがたい。モノ書きとしても勉強にもなり、取材意欲をかき立てられる土地だなと改めて思いながら、4週間の滞在をスタートした。