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【小説】人の振り見て我が振りなおせ 全12話

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モンスター社員、茉莉花の行動記録
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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第1話「チョロいわ!おじさんたち!」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第1話「チョロいわ!おじさんたち!」

 飯田茉莉花はある市町村役場の施設の管理をしている会社の契約社員をしている。この会社に採用になったのは、19歳の終わりだった。

 何となく行った専門学校を一ヶ月で中退、その後アルバイトをしてたが面倒になって休んで辞めるを繰り返し、男性しかいないが女性でも出来る、という求人募集を見て(女がいない職場が楽だわ)と思いこの仕事を選んだ。

 外見はそこそこ良いために、面接したおじさん達には印象が良かっ

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第2話「股を開いて貧乏ゆすり?」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第2話「股を開いて貧乏ゆすり?」

 由希子が入社してすぐ、更衣室に設置してある長椅子のひじ掛けの部分に、いつも何かしらの物が置いてあることに気がついた。

 ある時はイヤホンの片方、ある時はリップ、またある時はピアスの片方。

 由希子は基本的に朝は早く職場に到着して、仕事前はゆっくりしたい方なので、余裕をもって出勤している。だから、あさイチで更衣室を使うことがほとんどだった。

(ん…なんでこんな物がいつも置いてあるのだろう?誰

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第3話「ベチャベチャ服と汚ロッカーでもキレイ好きですか?」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第3話「ベチャベチャ服と汚ロッカーでもキレイ好きですか?」

 茉莉花は出勤が勤務開始の1分前、退勤は勤務終了後1分もしないうちにタイムカードを打刻して帰る。とにかく職場には勤務時間以外は職場にいたくなのだろう。

 仕事さえキチンとしてくれれば、決して悪いことではないが、帰りは良くても、出勤はせめて5分前くらいには自分のデスクに座って準備をしておくべきではないかと、昭和の人間の由希子は思ってしまう。これが今どきのZ世代なのかと考えさせられることのひとつでも

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第4話「週休3日以上のモ○スター社員」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第4話「週休3日以上のモ○スター社員」

 由希子がこの会社入社して1か月ほど過ぎた頃の出来事である。

 入社後すぐの由希子は、まずはひと通り施設内の設備や点検方法など、覚えなくてはならないことがたくさんあった。

 女性には急な階段の昇り降りや、広大な敷地内に施設が点在しているため、移動距離もあり、体力的にキツイ仕事なのだが、もともと学生の頃から運動部だった由希子にとっては、それほど苦には思わなかった。ただ、年齢的な衰えやまだ慣れてい

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第5話「その怪しい行動、バレてますよ?」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第5話「その怪しい行動、バレてますよ?」

 由希子が入社して半年が過ぎたにも関わらず、未だ欠員状態が続いていた。年度末の3月で石野(第4話)が退職して3ヶ月、さらに一人ひとりの仕事量が増えていた。

 由希子は欠員状態でなければ、おそらくする事もなかった仕事もせざるを得なくなっていた。

 それは、契約社員の先輩である太田が担当している仕事で、この施設の郊外にある小規模な施設の点検を正社員と二人で巡回していた。おそらく太田は、仕事ができる

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第6話「そのマウンティングとアピール、惨めになりませんか?」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第6話「そのマウンティングとアピール、惨めになりませんか?」

 茉莉花はとにかく、何をするにもアピールの激しい人物だった。

 由希子も入社初日は疑問を持ちながらも、〝私、仕事出来ますアピール〟が凄かったので、所長が若い世代の、怖いもの知らずの女の子が苦手なだけ(第1話)で、仕事はそれなりにやる人なのかな?と様子を見ていた。

 でも、1週間もたたないうちに、あの汚いロッカー(第3話)と人によって態度をかえる性格に気づき、距離をおいていた。

 その後、所長

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第7話「人に向かって、スプレーシャワーは失礼ではありませんか?」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第7話「人に向かって、スプレーシャワーは失礼ではありませんか?」

 茉莉花という人は〝自分の臭い〟(制服から臭う〝お洗濯のか○り〟と〝何かの異臭〟を足したもの(第3話))を棚に上げて、〝他人のニオイ〟には敏感に反応する人物だった。

 自分の〝キレイ好きアピール〟の一貫なのか、社員が終了ミーティングのために、汚れ仕事を終えて着替えて事務所に帰って来ると、事務所に入った途端、〝空間用消臭剤〟を事務所中や〝あなたは臭い〟と言わんばかりに、ほぼ本人に向けてスプレーしだ

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第8話「外見が良くても、その低次元な行動と態度では、全てが台無しですよ?」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第8話「外見が良くても、その低次元な行動と態度では、全てが台無しですよ?」

 茉莉花という女性は、一般的にはそこそこ〝可愛い部類〟に入る外見で、都市部のキャバクラでは通用しないが、田舎のキャバ嬢でこういう子いるよね、くらいの外見である。(〇〇坂の選抜メンバーには入れない程度、と表現したほうがわかるでしょうか…。)
 しかし、雰囲気は完全に〝夜のニオイ〟のする女性だった。(制服から臭うのは香水の匂いではなく〝お洗濯のか○り〟と〝何かの異臭〟ですけどね。(第3話))

 バブ

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第9話「仕事を嫌がらせの手段にして、都合が悪いと、私ぃ〜病んでるんですぅ〜とはどういうことですか?」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第9話「仕事を嫌がらせの手段にして、都合が悪いと、私ぃ〜病んでるんですぅ〜とはどういうことですか?」

 茉莉花という人は、人の好き嫌いが激しく、特に自分が気に入らない人には、仕事がらみの嫌がらせをする人物だった。

 本来、茉莉花の担当は施設全体をパソコン上で管理し、異常があれば警報がなってそれをパソコン上でできるものは対処し、出来ないものは現場の社員に電話連絡することになっている。

 一定時間に、施設の管理数値を記録簿に記載してしまえば、異常がなければほぼ事務所の電話番みたいなものである。

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第10話「私ぃ〜メンタル弱いけど〇〇嫌いなんですぅ〜」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第10話「私ぃ〜メンタル弱いけど〇〇嫌いなんですぅ〜」

 茉莉花という人は事あるごとに、自分で〝メンタルが弱い〟と自慢気に主張する人物だった。

 由希子はその〝メンタルが弱い〟という茉莉花の言動に違和感しかなかった。

 なぜなら、茉莉花がその台詞を言う時は、大抵、メンタルが弱いと出来ないことを、〝メンタルが弱いことを理由にして〟主張してくるからである。

 もともと都合が悪くなると〝自分は病んでいるからやる気はあっても出来ない〟(第9話)という人物

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  第11話「あなたの目は節穴ですね、〇〇が良いという言葉の意味わかってますか?」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  第11話「あなたの目は節穴ですね、〇〇が良いという言葉の意味わかってますか?」

 所長は茉莉花のことを〝デキてる〟からか(第5話)〝地頭が良い〟と言う。
 
 しかし由希子は、茉莉花が地頭が良いとはどう言うことを指すのか、疑問に思うのだ。

 なぜなら、茉莉花に〝物事を理解し吸収する、柔軟な思考力がある〟とは全く思えないからである。

 そもそも、地頭が良い子なら、難しい資格試験だって容易に投げ出さず(第6話)に、取得できるくらいの学力もそれなりにありそうなものだが。

 所

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【小説】人の振り見て我が振り直せ  最終話「自分勝手な〇〇〇〇が寄生し、優秀な人ほど辞めていく会社」

【小説】人の振り見て我が振り直せ  最終話「自分勝手な〇〇〇〇が寄生し、優秀な人ほど辞めていく会社」

 茉莉花という人は、恐ろしいほど自分勝手な人物であった。

 この会社は、市町村役場の施設の管理を下請けしているため、役場の社員からの研修という名の勉強会や、火災や停電などで設備が停止した場合などの訓練などが、定期的に行われていた。

 勉強会や訓練は、基本的に非常時を想定した複雑な作業が求められる。

 茉莉花の担当するデスクの仕事は、全体を把握することが求められるため、通常時は数値を管理する程

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