書評|本当に「人脈は広い方がいい」のか?
『これからの時代は「学生時代のリアルな友達」より「SNSの広く浅い繋がり」が必要になる』
こんな言葉をどこかで聞いたことがある。
知らない人とも「とりあえず」繋がることができる時代、人脈は多いに越したことはない。自分にとって有益な情報を提供する人をフォローして、繋がりたい人にはDMを送る。
今や情報を得るにはSNSが必要不可欠だし、時にはその人脈が自分を救うこともあるだろう。
本書はそんな人脈神話を覆す内容となっている。
今回紹介するのは、永松茂久さん著作『君は誰と生きるか』(フォレスト出版)だ。
著者の永松さんといえば、ベストセラーとなった『人は話し方が9割』(すばる舎)をはじめ多くの書籍を輩出しており、本書が30冊目となる。
本書の舞台は17年前、30歳だった永松さんが1人の「師匠」に会いに行ったときのこと。
当時の永松さんも、人脈神話を信じていた1人だった。時間もお金も惜しまず、「すごい人がいる」との評判を聞いてはどこにでも出会いに行っていた。
そんな永松さんに、師匠はこう言い放つのである。
「お金と時間がもったいないな」
これまでの価値観をひっくり返す回答をされた永松さんは、初めから狼狽えながらも、ここから師匠の人間関係の講義が始まった。
あなたも当時の永松さんと同じように、人脈は多いほどいい、と思っているのではないだろうか。
しかし、本書を読めば人脈は狭いほどいいという考えに覆るはずだ。
人脈を作ることの本質って何だったっけ。
出会いに行くとき、相手から何かを得ようとばかり考えていて、自分が相手に何を与えられるかなんて考えていなかった。
遠くに出会いを求めすぎていて、近くの人との関係や今やるべきことが疎かになっていた。
そんな、今までの人脈作りを見直すきっかけになることは間違いない。
あなたも著者と一緒に、師匠の人間関係の講義を通して「これからの人生、誰と生きるか」考えてみよう。
それは単なる「出会い好き」かも
そもそも、人はなぜ出会いや人脈を増やすことに必死なのだろうか。
出会いを求めることは、「相手から何かを得よう」という思いからくる行動だ。将来のために何かチャンスを得たり、成功者の教えにあやかろうとしたり、理由はさまざまであっても、少なからず相手からメリットを得ることを期待している。
これは人として当然のことで、逆にいうとその相手もまた、少なからず自分から何かを得ようとしているはずだ。
師匠はここで「はたして君は、相手にどんなメリットを与えることができるんだい?」と問いかける。
例えば、自分のところに会いに来てくれた人が「この人からチャンスをもらうんだ」と下心満載だったらどうだろう。
決していい思いはしないはずだ。
チャンスはそのように、闇雲に成功者に会ってあやかるものではない。そして成功者は自分に会いに来た人を、ただの出会い好きか仕事に打ち込んでいる人か見破ってしまう。
師匠の言葉にぐうの音も出ない。
本当に成功している人は、闇雲に人脈を広げようとしないのだ。
チャンスは本当に外にある?
人脈を広げる前に考えてほしいことがある。
それは、今現在の人との繋がりだ。
家族、友人、恋人、会社の同僚…あなたはすでに、素晴らしい人脈を持っているのではないか?
それなのに多くの人は身近の大切な人に気付けず、外ばかりに出会いを求めてしまう。
そして、外へ外へ出会いを求めていくうちに、時間もお金も浪費してしまうのだ。
「チャンスを得るために」外で会った人の中で、その後深いつながりになった人はどれくらいいるだろうか。
その人たちはもし自分がピンチに陥ったときに、手を差し伸べてくれるだろうか。
身近な人のことを幸せにできないで、外に出会いを求めてもいい影響を与えられるわけがない。
自分が今仕事をできていること。
平穏な日常生活を送ることができていること。
日々の自分の当たり前を支えている身近な人こそ、自分が本当に大切にする人脈なのである。
引き寄せの法則の本当の意味
どういう場所に人は集まるのだろうか?
あるいは、自分はどういう場所に行きたいと思うだろうか?
一言で表すと楽しい場所という答えがある。
そして、楽しい場所にいる人たちはみんな楽しそうだ。
つまり、自分が目の前のことを楽しそうに打ち込んでいたら、自然と周りの人が「楽しそうだから」と集まってくる。そしてそこが楽しい場所になる、ということだ。
楽しそうにしている人は、同じく楽しそうな人を「引き寄せる」のである。
内から外へ、ここでも身近な人こそ大切にしよう、という根拠がある。
遠回りかもしれない。それでも身近な人を大切にしたい
私は、「フリーランスライターになる」と決めてからSNSを始めたが、知らない人たちとも「何か役に立ちそうだから」と片っ端から繋がろうとする人たちに疑問があった。
そして、繋がることに消極的な自分を「悪い」と判断して悩んだ。
でも今は胸を張って言える。人脈は狭いほどいい。
身近な人の繋がりこそ大切にするこのやり方は、地道で遠回りだと思う人もいるかもしれない。
外へ出会いを求める方が「手っ取り早く簡単で、成長した気になる」からだ。
しかし、「上部だけの50人」より「自分がピンチに陥ったとき助けてくれる3人」の方が、これからの自分の人生を豊かにしてくれると思わないか?
私はそんな人を大切にしたい。
そんな人と巡り会うために、今できることに精一杯打ち込みたい。
最後に、本書の師匠の言葉を借りてこの書評を締めくくる。
ここからの人生、君は誰と生きる?
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