映画『美しき緑の星』の登場が示す人々の潜在意識
オススメ映画のご紹介
是非観ていただきたい映画があります。
『美しき緑の星』という映画です。
なにやら高尚な雰囲気のタイトルですが、分類としてはコメディ映画です。
精神文明が地球よりも何千年も進化した星に住む主人公ミラ。争いの絶えない野蛮な星という理由で誰も行きたがらない地球へ、彼女は自ら派遣される任務に志願します。
そこで繰り広げられる数々の出来事が滑稽で大いに笑わせてくれます。と同時に、非常に深く考えさせられます。
近代化の波が押し寄せて以来、人間本来の営みに歪みが生じたせいで人々が何か大切なものを失っていることが、鮮やかに、そして、ユーモアたっぷりに描かれているのです。
脚本・監督・音楽を手がけたのはコリーヌ・セロー氏。なんと自らも主人公として出演しています。(北野武もびっくりです)
本作は1996年に本国フランスで劇場公開されたものの、途中で公開中止になったという逸話があります。それだけ的を射た内容となっており、問題作と認識されたのでしょう。告発的ドキュメンタリー映画でもない、フィクション映画にも関わらずです。
それにしても本作が凡そ30年前に制作されただなんて、コリーヌ・セロー監督の着眼点の鋭さに驚きを禁じ得ません。SF要素も含まれている中で、テーマはあくまで、自然エネルギーを需要しながらあらゆる生命体が調和しながら生きていくことの大切さを説いています。
あまりに神がかっているため直感的に本作を作り上げたのかと思いきや、監督による製作秘話を聞くと全くそうではなかったようです。
当時の社会情勢を分析し、目指すべき社会に関する様々な提案や主張、加えて、世界的な歴史的な観点で社会運動というものも研究したとのこと。さらには資本主義、社会主義、共産主義、それぞれの主張を学び、考察したとも言います。
また、これまでの社会的・歴史的背景から培われた家父長制によって女性と子供が男性の所有物となっていることや、女性が世界の人口の52%であるにも関わらずマイノリティという扱いで抑圧を受けていることを監督は指摘しています。
着目すべきは、かと言って男性を目の敵にして立ち向かうべきという主張ではない点です。この構造によって苦しんでいる男性もいることからも、個々人が持って生まれた役割を全うすることで人々の真の調和が生まれると語っています。
本作の完成から四半世紀以上の時を経て、今や70代半ばとなった監督が語る重みある言葉は情想をしっかりと両立させます。
一方不思議なことに、そのような多大な調査と分析を経た末に描かれたユートピアは、これまでの文明の発展を削ぎ落した姿のように思えてなりません。
実は本作が発禁となった背景には、観た人々の価値観が180度変わってしまう現象が多発したからということ、また、日本における近年の縄文ブームからも、人々の潜在意識は古代のような理想郷を求めているのか。 一時問題作とされた本作が令和の時代のタイミングで再び日の目を浴びていることは、非常に興味深いと感じました。
ここまでお読みいただいた結果、社会派の映画だと嫌悪を覚えた方もいらっしゃるかもしれませんが、冒頭ご紹介した通り、コメディ映画の分類です。
深く考えることなく、リラックスしてお楽しみいただけると思いますので、是非ご視聴いただければと思います。
きっと心の奥底に小さな蝋燭のような優しく美しい火が灯ると思いますよ。
一部ネタバレになりますが...
主人公が地球上の食べ物が不健康過ぎて食べられないという理由で、新生児から発するエネルギーを自己のエネルギー源として補給する設定があるんですね。
まるでプラーナ食を指し示しているかのようで、今後(一部の人々に)やって来る不食の時代を予知しているかのようで驚きました。
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