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身体の声を聴く

現代の日本人は日々に忙殺されている―

そう強く感じています。

超満員の電車にゆられて出勤し、残業をして帰宅する。
毎日家と職場の往復するだけの生活で、
楽しみと言えば華金に居酒屋で過ごす時間ー
と言った人も少なくないのではないでしょうか。

コロナ禍でリモートワークが積極的に取り入れられるようになり、
コロナ以前より減ってはいると思いますが、
そのような生活を送っている人は
まだまだ多いのが現状だと思います。

私は以前、看護職として病院で勤務をしていました。
勤務はシフト制で月に5回以上夜勤をこなし、
昼も夜もない生活で、暇さえあればベッドに横になり、体力を温存する。
たまにある連休は家の掃除や片付けに追われ、
プライベートな時間を楽しむ余裕は正直言ってありませんでした。

コロナ禍も相まって転職を決意し、生活環境がガラッと変わりました。
勤務は日勤のみ。
ただ「普通の生活に戻った」、それだけですが、
生活リズムが整うことで、それまで全く顧みることのできていなかった
自分の身体の声に気付くことができるようになったのです。


コロナ禍で生活様式が変わり、
通勤時間が削られたことや不必要な残業がなくなったことで
プライベートな時間を多く持つことができるようになり、
ワークライフバランスのとれた生活の心地よさに気付いた人は
私以外にも多くいたのではないでしょうか。

地方に移住し、古民家の改修や農作業に目覚めたり、
長年夢に思っていた飲食店やカフェ、雑貨屋を始めたりと、
コロナ禍において「生き方」を見直す人が増え、
コロナ以前のような価値観が変化しているように感じます。

人間には欲求があります。
心理学者マズローの唱えた欲求階層説が有名ですが、
下位にある欲求が満たされないことには、
欲求は上位に進んでいかないというのが基本的な考え方です。

マズローの欲求階層  NRI 野村総合研究所より


私自身、日々に忙殺される中では、
空腹を満たすことや睡眠(休息)をとるといった
生理的欲求(しかもその基本的な部分)を満たすのに精一杯で、
それ以上の欲求を持つことが難しい状況にありました。

しかし、心身共に余裕ができたことで、
欲求の最下位である生理的欲求の中にも層があることに気付いたのです。

例えば、遅くまで残業して疲れ切った身体では
「ただただ空腹を満たしたい」と、
外食やテイクアウトで食事を済ませ、
栄養バランスの偏った食生活に陥りがちです。
しかし、心身ともに余裕がある状態で
「食事を摂りたい」場合、
野菜や旬の食材を多く取り入れたり、彩を考えた献立を考えたり、
栄養バランスの整った、そして
心も満たされる食事を準備する余裕が生まれたのです。

そうすることで、
 何を食べたいか―
だけではなく、
 何をしたいかー
 どこに行きたいかー
 誰と一緒にいたいかー
といった欲求に対しても、
自分の身体が語り掛けてくることに気付いたのです。
その声に従って生活することは本当に心地よく、
自分の人生を主体的に生きている感覚さえ持つようになりました。

エッセンシャルワークやサービス業など、
リモートワークでは仕事にならない職種も多々あります。
日々、身を粉にして働いている方々には本当に頭が下がります。

一方で、そのような方々にも、
自分の身体の声を聴いて生活することの心地よさを
一度味わってみてほしいと心の底から思います。

そして何よりも、そのような方々であっても
ワークライフバランスがとれ、
自分の身体の声を聴いて生活ができる余裕のある世の中に
変化していってほしいというのが私の強い想いです。

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