『ムーンライト』姿や形が変わっても、瞳の奥はそのままで【映画コラム】
「ムーンライト」と聞くと「セーラームーン」を思い出してしまう世代、ミドリです。
source / https://medium.com/@ceesmcd/the-brilliance-of-moonlight-b6aaed40dd81
友情を超えて、想い続けたあの人。薄暗い海辺、美しい月の光。海に反射する絶妙な深いブルー。心のうちを吐き出す。時を止める沈黙が、ふたりを引き寄せる。溢れる気持ち、強く握りしめる白い砂。みじかく儚いひとときは、永遠に続く物語。
今回は、この制作会社が好きな人は大体センスが良い。勢いの止まらない #A24 からの感動作『ムーンライト』(2016)について。
まだこの作品を見ていないという人は、冒頭の文章を読んで、どう感じただろうか?(セーラームーンのくだりじゃないですよ。笑)女性が思い続けた男ともだちとのシチュエーションを思い浮かべる人、はたまた男性が思い続けた女ともだちとの恋物語。この映画の揺るぎない美しさというのは、まさしくこの「情景」と言っても過言ではないんじゃないか。と私は力を込めて伝えたい。
source /https://miami.curbed.com/maps/moonlight-miami-filming-locations-map
というわけで、この作品、男と男の純愛を繊細に描きだした物語なのである。しかし、これが女と女、男と女になっても、ストーリーの美しさは一ミリも変わる事はないと断言できる。それほどに、人間の複雑な心の内側を表現できているから。
source /https://medium.com/brian-the-man-behind-the-pen/moonlight-is-the-movie-black-lgbtq-kids-needed-da893b44d632
リトル、シャロン、ブラックと1人の男の成長を3部作に分けて進む物語。弱虫だったリトルが、生きる術を学んでいく。その姿とおなじくして、静かに育まれる「純愛」には、誰もが心を揺さぶられるだろう。
世界のさまざまなコミュニティで存在するLGBT、人が人に惹かれるという気持ちはごくごく自然な事にもかかわらず、その事実を受け入れられない価値観を持つ文化や人というのは未だいなくなる事はない。そして、ブラックカルチャーが背景にあるこの作品で、毅然と表現される、痺れるほどの「男らしさ」が壊れそうな繊細な心情を完璧に引き出している。
ちなみに筆者が大好きな「大人になり見事に変貌を遂げたブラックのパート」だが、ブラックを演じたのは #トレヴァンテローズ という元陸上競技選手で、当初は親友役でキャスティングされていたそう。しかし彼の男らしい風貌の中から感じる弱さが、役にハマっていたことで、抜擢されたそうだ。その裏話を聞いて、深く納得した。それもそのはず、そのいわゆる「男」という彼が見せる繊細な愛らしさが、わたしの感情を揺さぶったからだ。美しいストーリーは、もちろんのこと、ぜひ彼の演技にも注目して作品を見ていただきたい。
また、こちらの作品は #ブラッドピット の制作会社 #プランBエンターテイメント が手がけている。
(文:菜梨 みどり)